要点
暗号資産の恐怖と貪欲指数では、暗号資産市場のセンチメントを0〜100の尺度で表しています。同指数は、株式市場分析用の「CNNMoneyの恐怖と貪欲指数」に基づいています。
恐怖指数(0~49点)は、市場による資産の過小評価と過剰供給を示しています。貪欲指数(50~100点)は、市場による資産の過大評価、さらにはバブル相場の可能性を示しています。
恐怖と貪欲指数上の変化への着目は、特に暗号資産市場への参入・撤退の意思決定時における取引戦略の立案に役立ちます。
はじめに
優秀なトレーダーや投資家は常に、裏付けとなるデータに基づいて暗号資産市場での購入・売却に関する意思決定を行います。裏付けとなるデータとしては、チャートの確認のほか、ファンダメンタルズ分析や市場のセンチメント分析などが挙げられます。一方、あらゆる指標・指数をつぶさに確認することは、効率的な時間の使い方であるとは言えません。
貪欲指数と恐怖指数では、センチメントとファンダメンタルの指標を組み合わせることで、市場の恐怖と欲を垣間見ることができます。この指標だけに頼るべきではないものの、暗号資産市場の全体的な感覚を把握するのに役立ちます。
指数とは
指数とは、複数のデータポイントを単一の統計的尺度に集約したものを指します。例えば、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(DJIA)は、米国の主要企業30銘柄の価格を加重平均することにより、株式市場を追跡しています。投資家は、DJIA関連の金融商品の購入により、これらの銘柄に対するエクスポージャー(利益を目指しリスクにさらされること、ポジションを持つこと)を得ることができます。
暗号資産の恐怖と貪欲指数も市場データを加重平均した市場指標ではあるものの、DJIAとの共通点はこれのみとなっています。暗号資産の恐怖と貪欲指数に由来する購入可能な金融商品(デリバティブ)は存在していません。同指数は、あくまでも市場分析を補完するための市場指標となっています。
市場指標とは
市場指標により、トレーダー・投資家におけるデータ分析の効率性が高まります。市場指標の形式は、大きく分けて3種類あります。
テクニカル分析(TA):同分析では、移動平均線や一目均衡表などのテクニカル分析指標を用いて、値動き、取引量、統計的動向を確認します。
ファンダメンタル分析(FA):同分析では、ユーザーの採用や時価総額などの要因の調査により、資産の本質的な価格を評価します。
センチメント分析:同分析では、ソーシャルメディア、コミュニティの議論、世論の調査により、投資家センチメントを測定します。
恐怖と貪欲指数は、数ある市場指標における1つの指標に過ぎません。その他の例としては、Augmentoがまとめるブルベア指数や、暗号資産市場におけるクジラ(大口投資家)からの大規模な送金を追跡するためのWhaleAlertなどが挙げられます。暗号資産関連の調査は、ソーシャルメディア、コミュニティ、世論の分析に大幅に依存しています。このため、センチメント分析は、暗号資産取引に役立つものであると言えます。
恐怖と貪欲指数とは
恐怖と貪欲指数の起源は、CNNMoneyが株式市場のセンチメント分析を目的に同指数を開発したことに遡ります。その後、Alternative.me(ウェブサイト)により、同指数が暗号資産市場に適用されました。
貪欲指数と恐怖指数は、さまざまなトレンドや市場指標を分析し、市場参加者の感情が貪欲なのか、恐怖なのかを分析します。スコア 0 は極度の恐怖を示し、100は極度の欲を示します。50点の場合は、市場がやや中立であることを示しています。
恐怖に満ちた市場は、暗号資産が過小評価されていることを示している可能性があります。市場が恐怖に寄りすぎていると、売られすぎや過剰なパニックが生じ得ると言えます。ただし、「恐怖」は、必ずしも市場が長期的な弱気トレンドに入ったことを意味するわけではありません。これは、市場全体のセンチメントに対する短中期的な参考資料程度であると認識することが望ましいと言えます。
貪欲に偏った市場は、恐怖の場合とは真逆の状況となります。投資家やトレーダーの感情が貪欲に極端に偏ると、暗号資産の過大評価やバブル相場につながる可能性があります。現在、投資家が市場を煽るFOMO(取り残される恐怖)の状況であると仮定します。貪欲さの増大により需要が増加し、暗号資産価格が不自然につり上がります。
恐怖と貪欲指数の仕組み
同指数では毎日、0〜100までの新しい値が算出されます。2025年3月時点において、暗号資産の恐怖と貪欲指数では、ビットコインをはじめとする主要な暗号資産に関連するデータを使用しています。この理由として、暗号資産の価格とセンチメントに関し、ビットコインが暗号資産市場全体と有意な相関関係にあることが挙げられます。
インデックスのスケールは、以下のように分けられます。
0〜24:極度の恐怖(オレンジ色)
25〜49:恐怖(琥珀色 / 黄色)
50〜74:貪欲(薄緑色)
75〜100:極度の貪欲(緑色)
この指標は、5種類の加重された市場要因を組み合わせて値を算出しています。
1. ボラティリティ(指数スコアの25%):ボラティリティを使用し、ビットコインの現在価値を過去30日および90日の平均値に基づき算出します。同指数では、市場の不透明性を表す尺度としてボラティリティを採用しています。
2. 市場のモメンタム / 取引量(指数スコアの25%):現在の取引量と市場のモメンタムを、過去30日および90日の平均値と比較し、組み合わせて算出します。大量買いの継続は、市場のセンチメントがポジティブまたは貪欲であることを示しています。
3. ソーシャルメディア(指数スコアの15%):Xにおけるビットコイン関連のハッシュタグ数とインタラクション率から算出されます。インタラクション率が継続して高い場合、または異常に高い場合、市場における恐怖ではなく貪欲と関連しています。
4. ビットコインのドミナンス(指数スコアの10%):市場におけるビットコインのドミナンスから算出されます。市場におけるドミナンスの増加は、新規投資とアルトコインからの資金の再分配の可能性を示しています。
5. Googleトレンド(指数スコアの10%)同指数では、ビットコイン関連の検索クエリのGoogleトレンドデータを採用し、市場のセンチメントを把握しています。例えば、「ビットコイン詐欺」や「ビットコインの価格操作」などの検索数の増加から、市場に恐怖が蔓延していると判断できます。
6. アンケートの結果(指数スコアの15%):この要因は、現在使用されていません(長期間未使用)。
恐怖と貪欲指数を長期的な分析に使用できるか否か
同指数は、暗号資産の市場サイクルに関する長期的な分析には適していません。各ブル(強気相場)またはベア(弱気相場)の機関においても、複数の恐怖と貪欲サイクルが存在します。こうした相場移行に関する情報は、スイングトレーダーには有用となります。一方、ホドル(HODL)を実践する投資家にとっては、同指数のみでブル相場からベア相場への移行を判断することは難しいと言えます。長期的な視点を得るためには、市場に関するその他の要因を分析する必要があります。
度々お伝えしている内容となりますが、1つの指標や分析方法のみには依存しないことをお勧めします。また、投資前には自己責任による慎重な調査(DYOR)を実施し、余裕資金のみで投資を行うようにしてください。
まとめ
暗号資産の貪欲指数と恐怖指数は、ファンダメンタルズや市場センチメントの指標を一通り集めてまとめるシンプルな方法です。自分でやらなくても、ソーシャルメディアやGoogle Trendsなどの統計情報を追跡した指標を参考にできます。ご自身の分析にこの指標を含める場合は、よりバランスのとれた見方をするために、他の指標で補完するようにしてください。
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