要点
DeFiアグリゲーターは、複数のDeFiプラットフォームから情報およびサービスを収集し、これらを単一の使いやすいインターフェースに統合します。
各プラットフォーム間におけるトランザクションを最適化することで、トークンのスワップ、貸付、借入、イールドファーミングに最適なレートの発見につながります。
DeFiアグリゲーターは、スマートコントラクトとスマートルーティング手法を活用してトランザクションを分割または管理することで、最良の条件を確保するとともにコストを最小化できます。
これは、DeFiの使いやすさと収益性を高めるものである一方、ユーザーはスマートコントラクトのバグや急速な市場変動などのリスクにも注意する必要があります。
はじめに
分散型金融(DeFi)は、個人が銀行などの仲介機関に依存せずに貸付、取引、収益獲得を行えるようにすることにより、金融サービスの利用方法に変化をもたらしました。時間の経過とともに数多くのDeFiプラットフォームが登場し、各々がトークンの貸付、ステーキング、トークンのスワップを目的とした独自のサービスを提供しています。DeFiプラットフォームは無数に存在するととともに、特徴もそれぞれ異なっているため、最良のレートの発見は難しくなります。各プラットフォームをそれぞれ確認していくには時間を要し、特に初心者にとっては負担となるケースが多くなっています。
そこで登場するのが、DeFiアグリゲーターです。DeFiアグリゲーターは、数多くのDeFiプラットフォームからデータを収集し、アルゴリズムとプログラムを使用することにより、各ユーザーに最適な選択肢を提供します。
DeFiアグリゲーターの概要
DeFiアグリゲーターとは、分散型取引所(DEX)、貸付プロトコル、流動性プールなどの複数のDeFiソースから情報を収集するウェブサイトまたはアプリケーションを指します。アグリゲーターを使用すると、各プラットフォームに個別にアクセスする代わりに、利用可能なすべてのレートと選択肢を一度に確認できます。
活用例には、トークンをスワップする際、最安の手数料と最小限のスリッページで最良価格を取得することが挙げられます。DeFiアグリゲーターは、数多くの分散型取引所および流動性プールを横断的に参照し、最もコスト効率の高い経路で取引を特定および実行します。同様に、貸付またはイールドファーミングにおいても、各プロトコルの金利または利回りを比較します。
DeFiアグリゲーターの仕組み
データ収集
DeFiアグリゲーターでは、数多くのDeFiプラットフォームの価格、利用可能な流動性、貸付レート、利回りを継続的に追跡しています。また、API、直接的なブロックチェーンクエリ、オラクル、スマートコントラクトを用いて情報を取得しています。DeFi市場は急速に変動するため、高度なアグリゲーターでは1秒ごとに複数回のデータ更新を行い、正確性の高い情報を維持しています。
スマートルーティング
データの収集後、DeFiアグリゲーターは高度なアルゴリズムを使用し、トランザクションを完了するための最適な方法を発見します。トークンのスワップの場合、DeFiアグリゲーターでは取引を分割し、これらを複数の取引所またはプールに送信することで、コスト削減と価格への影響の抑制を行います。貸付またはファーミングの場合、手数料とリスクを踏まえ、最も高い収益を提供するプロトコルを探します。
この手順は、DeFiの流動性を複数のプラットフォームに分散するため、重要な手順になります。1種類のプラットフォームに依存せずに複数のプラットフォームに取引を分散させることで、取引結果が総合的に向上することになります。
スマートコントラクト実行
最適なルートが選択されると、スマートコントラクトを用いてトランザクションを自動的に実行します。これらのプログラムはブロックチェーン上で直接実行され、仲介者を立てる必要がないため、エラーと遅延の回避につながります。スマートコントラクトの特性であるアトミシティ(atomicity、処理の不可分性)により、トランザクションは全体が完全に成功するか完全に失敗するかのどちらかになります。
ユーザーエクスペリエンス
DeFiアグリゲーターでは、シンプルなダッシュボードにより、トークンのスワップ、暗号資産の貸し付け、ステーキングによる報酬獲得などを操作できます。また、価格や収益などの基準によりランク付けした推奨案も提示しています。一部のプラットフォームでは、許容できるスリッページ幅やガス代(トランザクションコスト)の削減を目的とした最適化設定もできます。
メリットとデメリット
潜在的なメリット
時間と労力の節約:DeFiアグリゲーターにより、手動での調査や複数のDeFiプラットフォームの比較を実施する手間を省けます。このため、多忙なユーザーや技術的知識に乏しいユーザーに特に有用となっています。
より優れたレート:アルゴリズムやルーティングメカニズムの活用により、有利なレートまたは利回りが得られるケースが多くなっています。
簡単なアクセス:DeFiアグリゲーターにより、複雑性の高いプロセスが分かりやすいワークフローに集約されることで、新規ユーザーにとってのDeFiへの参入障壁が低くなります。
市場効率の向上:DeFiアグリゲーターでは、断片化された市場をつなぎ合わせプロトコル間における競争を促進させることにより、より深い流動性と価格発見につながります。
潜在的なリスク
スマートコントラクトの脆弱性:DeFiアグリゲーターはスマートコントラクト上に構築されているため、DeFiプロトコルと同様、スマートコントラクト関連のバグまたはセキュリティ上の欠陥が生じる可能性があります。セキュリティ侵害が生じた場合、こうした脆弱性がハッキングや金銭的損失を招くおそれがあります。
急速な市場変動:DeFiにおける価格およびレートは、急速に変動する可能性があります。DeFiアグリゲーターにより特定された「最適な」ルートまたはレートは、トランザクションの確定プロセス中に無効となる可能性があります。
中央集権化のリスク:DeFiアグリゲーターの中には中央集権型インフラまたはゲートキーパーに依存しているものもあり、これによりカウンターパーティリスクが生じます。
複雑性と手数料:アグリゲーターによりサービス手数料やガス代なとの追加コストが発生し、本来得られるはずの節約効果が相殺されてしまう場合があります。また、複数手順から成るルーティングプロセスにより複雑性が増し、ガス代の高額化やスリッページの拡大といったリスクが生じる可能性もあります。
DeFiアグリゲーターの例
1inch:分散型取引所(DEX)の集約化に注力したプロトコル。複数のDEXをスキャンし、最も効率的なトークンのスワップルートを発見します。
Yearn.finance:イールドファーミングによる集約化に特化したプラットフォーム。同プラットフォームでは、ヴォールトへの資産入庫プロセスを自動化することにより、ユーザーが定期的な管理を必要とせずに収益を最大化できます。
Zapper:同プラットフォームでは、各DeFiポジションを1か所のダッシュボードに統合することにより、ポートフォリオの管理と利回り生成機会に簡単にアクセスできるようにします。
まとめ
DeFiアグリゲーターは、DeFiのより簡単かつ効率的な操作に役立つ便利なツールです。データをまとめ上げ、トランザクションパスを最適化し、実行を自動化することでDeFiへの参入障壁を下げるほか、高収益の獲得につながる可能性があります。一方、DeFi分野にはさまざまなリスクが伴うため、資産の運用前に必ずプロダクトについて理解し、損失の許容範囲内でのみ投資するようにしてください。
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