DeFiと暗号資産における現実資産(RWA)とは
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DeFiと暗号資産における現実資産(RWA)とは

DeFiと暗号資産における現実資産(RWA)とは

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公開済 Nov 9, 2023更新済 Jan 30, 2024
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概要

  • 現実資産(RWA)は、物理的資産をブロックチェーンに結びつけることで、有形の実物資産をトークン化するものです。

  • RWAは、DeFi分野で多くの有用性を持つようになりました。

  • RWAは、TradFiとDeFiのギャップを埋めるものとして評価されています。

  • 大手金融機関がRWA分野に参入し、その勢いは拡大傾向にあります。

資産やユーティリティのデジタルトークンへの変換を意味するトークン化は、ブロックチェーンエコシステムで魅力的な特徴を持つに至りました。現実資産(RWA)とは、ゴールド、不動産、カーボンクレジットなど、金銭的価値をもつ有形資産を指し、これらを取引可能なデジタル形式にトークンに変換します。

分散型金融(DeFi)でRWAが生まれたことは、伝統的な金融資産がDeFiと融合のもっともすぐれた例の一つとして高い評価を受けることが多くなっています。

RWAの仕組み

DeFiにおけるRWAの有用性について取り上げる前に、RWAがどのように機能するのかを見てみましょう。具体的に、RWAが現実世界の資産を表す正当なトークンであることをどのように保証するのでしょうか。このプロセス全体は、オフチェーンでの定形化、情報のブリッジング、RWAプロトコルの需要と供給の3つの段階に分けられます。

オフチェーンでの定形化

現実資産をデジタル台帳に統合する前に、その価値、所有権、法的地位が物理的な(現実の)世界で明確に確立されていなければなりません。

RWAの価値を推定する場合、市場価格、過去のパフォーマンス、資産の物理的状態などが考慮されます。資産はまた、証書や請求書によって文書化された明確な法的所有権を有していなければなりません。

情報のブリッジング

この段階では、資産の情報をデジタルトークンに変換するトークン化プロセスになります。資産の価値と正当な所有権に関するデータは、トークンのメタデータに埋め込まれます。ブロックチェーンの透明性により、誰でもメタデータに基づいてトークンの真正性を検証できます。

規制対象になる証券に分類される資産を扱う場合、規制監督要件への適合が中核的な重要性をもつことになります。規制監督要件への適合とは、認可を受けたセキュリティトークン発行機関によるトークン化、暗号資産特有の顧客情報確認(Know Your Customer)や顧客企業情報確認(Know Your Business)などの規制の遵守、および認可済みのセキュリティトークン取引所の関与などが含まれます。

RWAプロトコルでの需要と供給

需要と供給に関する最後の段階では、RWAに焦点を当てたDeFiプロトコルが登場します。DeFiプロトコルには、2つの機能があります。まず、新しいRWAを生み出し、より多くのデジタル資産を利用可能にすることが1つ、そして投資家にこれらの資産の購入や取引に興味を持つよう働きかけることがもう1つとなります。

この3段階のアプローチにより、RWAは単なる抽象的な概念ではなく、現実世界の資産価値と法的枠組みの重みそして信頼を分散型デジタル金融の世界に移転でき、DeFi環境で実用的かつ機能的、そして決定的な重要性を持つものとなり得ます。

RWAがDeFiに大きな変革をもたらす理由

DeFiで最も重要な指標の1つに、「Total Value Locked」(「総預かり資産」、略してTVL)があります。TVL指標は、様々なDeFiプロトコルにロックされた投資資金数量を測定するものです。TVLが高いほど、実用性が高いとみなされます。2021年11月、いわゆる「DeFiサマー」の強気の波に乗り、TVL総額はは約1,800億ドルのピークに達しました。

しかし、市場の下落に伴い、DeFi TVLは2022年6月までに498.7億ドルまで落ち込みました。これは、7ヶ月間で評価額が72.3%も低下したことになります。一部のDeFiプロトコルでは、あからさまな実用性の欠如とトークノミクスの貧弱さが原因となり、資金が市場から流出しました。

その結果、典型的なDeFi投資家の考え方は大きく変化しました。このような投資家の多くは、短期的な利益を追い求めるのではなく、安定しかつ長期的な投資機会を重視する人が増えています。この傾向は2021年以降の情勢において特に顕著で、RWAなどより安定した資産クラスを追求する動きが顕著になっています。

RWA市場への関心が高まっていることを示す、RWA市場に関するいくつかの統計データを紹介します。

  • RWAのオンチェーン価値(ステーブルコインを含まない)は、2023年に$10.5億ドル増加しています。

  • このうち、$8億5570万(82%)は、国債、不動産、プライベートクレジットなどの利回り資産によるものです。

2023年1月1日から9月30日の間にアナリストが実施した調査結果は、次の通りです。

  • オンチェーンのプライベートクレジットのアクティブ・ローンで2億1,050万ドルの増加

  • 米国債とおよびその他の債券で5億570万ドルの増加

RWA発行機関とは

RWAは、次の3つの主要な活動を通してブロックチェーン上に誕生します。

  • 物理的世界での有形資産を特定。

  • トークン化によってこれらの資産を変換。

  • トークンをブロックチェーンネットワーク内のユーザーに配布。

RWA発行分野における有力プロジェクトの例を以下に挙げます。

  • Centrifuge:オンチェーン・プライベート・クレジットローンの最大発行業者の1社。

  • Franklin Templeton:運用資産(AUM)1.5兆ドル以上を管理する1947年設立のTradFi大手企業。最近、トークン化された米国債トークンの発行を開始しました。

  • WisdomTree:約9,600億ドルの運用資産を持つ上場投資商品のマーケットリーダー。

DeFiでのRWA利用のメリット

現実資産(RWA)のトークン化は、従来にないメリットを備えており、投資戦略と暗号資産金融の在り方を再編成する可能性があります。

  • 流動性の向上:不動産などの資産をトークン化することで、従来流動性が低く動きの遅かった資産をトークンに変えられます。トークン化により、より多くの投資家が原資産にアクセスできるようになります。

  • フラクショナル・オーナーシップ(小口分割所有権):RWAの持つ最も魅力的なユースケースの一つが、この分割した所有権になります。不動産のような資産をトークンに分割することで、一般投資家の参入障壁が低くなります。このように、多くの投資家の資金を合算し、トークンで表される不動産を共同で所有できます。

  • 透明性:透明性の高いブロックチェーン台帳により、RWAのすべてのトランザクションと所有権の詳細が記録され、公に検証できます。

  • 包括的な機会を提供:DeFiチャンネルを通じたトークン化資産の潮流は、新たな市場や金融商品への道を開きます。これは既存の投資家に新たな機会をもたらすだけでなく、新たな参加者を惹きつけ、金融エコシステム全体の安定性と成長性を高めることになります。

DeFiにおけるRWA利用の限界

RWAは、現物資産とデジタルファイナンスを統合する画期的なアプローチです。しかし、これには限界と課題があります。

  • 規制の複雑さ:RWAとDeFiには、複雑な規制要件が適用されます。これらの要件は、資産、地域、法域、さらにはトークン化に使用される特定のブロックチェーンプラットフォームによって変動します。

  • セキュリティの懸念:RWAでは、現物資産とデジタルトークンの間の連携を維持することが何よりも重要となり、詐欺や法的紛争に対して強力に対応できる体制が必要になります。

  • スケーラビリティ:RWAのトークン化を支えるプラットフォームは、トランザクションやデータの高いスループットに対応できる必要があります。

まとめ

RWAはDeFiにとって注目すべき展開であり、その機能と利用者は拡大していくものと見られます。RWAの登場により、従来型金融と分散型金融が融合し、より相互接続された金融分野が実現する可能性があります。しかし、この段階に到達するには、厳格な規制遵守や市場の健全性の確保など、大きなハードルを乗り越える必要があります。

参考文献


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