カウンターパーティリスクは、金融や投資の世界では極めて重要な概念となっています。金融取引に関わる一方の当事者が債務不履行に陥り契約上の義務を果たせず、他方の当事者に経済的損失を与えるリスクを指します。簡単に言えば、取引相手が取引内容を守れない、あるいは守ろうとしないリスクです。
カウンターパーティリスクは、個人向けの銀行取引や暗号資産など、さまざまな場面に存在します。カウンターパーティリスクは、公共部門と民間部門を問わず発生する可能性があり、個人、企業、政府を相手に影響を及ぼします。投資家、金融機関、規制当局にとってカウンターパーティリスクへの理解と運用管理は、金融システムの安定性と信頼性の確保には不可欠となります。
カウンターパーティリスクの主な要因となるのは、債務不履行または破産の可能性です。カウンターパーティが破産した場合、債務を履行できなくなり、相手方に経済的損失をもたらす可能性があります。不適切な財務管理、景気低迷、業務上の失敗、法的紛争、詐欺などさまざまな出来事が破産の原因となります。
暗号資産取引におけるカウンターパーティリスクの例を取り上げてみましょう。アリスは、DeFiプラットフォームを通じてボブにイーサリアム(ETH)を貸出すことにしました。取引条件はスマートコントラクト上に「ボブはアリスから700ドルのETHを借り、その担保として、1,000ドル相当のトークンAを提供する。」と記録されます。
その後、市場が大きく変動し、トークンAの価格が500ドルまで急落したとします。ボブが負債を返済ができない場合、担保価値は500ドルに落ち込んでいるため、アリスは700ドル全額を取り戻せないリスクが発生します。
実際には、このような貸出契約には清算(強制決済)比率が設定されています。例えば、トークンAの価値が850ドルに下がったとき、スマートコントラクトはアリスの損失を避けるため、ボブのトークンAを強制清算するように設定できます。しかし、強制清算が迅速に行なわれず、アリスに損失が発生する可能性があります。
この例は、借り手が義務を果たせず、貸し手が損失を負担せざるを得なくなる、DeFi環境におけるカウンターパーティリスクと言えます。
カウンターパーティリスクを効果的に運用管理するには、いくつかの要素の考慮が必要です。まず、重要な要素として挙げられるのは、信用力です。信用力とは、カウンターパーティの金融債務履行能力を指します。通常、信用格付け、財務諸表、負債比率、キャッシュフロー状況、業界の見通しなどの要素を分析して、評価します。信用力が高いとカウンターパーティリスクが低いことを意味し、信用力が低いとリスクが高いことを示します。
次に考慮すべき点として、エクスポージャーの集中が挙げられます。エクスポージャーの集中とは、単一または少数のカウンターパーティに集中して依存する度合いを指します。カウンターパーティを分散させれば、集中リスクが軽減され、全体的なカウンターパーティリスクも軽減できます。一般的には、リスクの過度な集中を防ぐために、単一のカウンターパーティへのエクスポージャーは10%を上限とすることが通例として推奨されます。ただし、この基準値は実際には上下します。
さらに、契約条件も重要になります。契約上は、担保要件、マージンコール、解約条項など、カウンターパーティリスクを低減する条項を含める必要があります。これらの条項は、契約における関係者の利益を保護し、契約不履行が発生した場合に潜在的な損失を軽減できます。
カウンターパーティリスク管理上、リスクを軽減させる有効な手段が担保設定です。潜在的な損失に対する措置として、通常は現金や有価証券などの資産の形でカウンターパーティに担保の提供を要求するものです。債務不履行が発生した場合には、担保を強制清算し、損失を補填します。
カウンターパーティリスクの管理には、綿密なモニタリングと積極的なリスク管理が不可欠です。カウンターパーティの財務状況と信用力を定期的にモニタリングすることで、警告の兆候や潜在的な債務不履行リスクを発見できます。赤信号が出た場合、エクスポージャーの削減、条件の再交渉、または代替のカウンターパーティ探しなど、事前対策が必要になる場合があります。
「I owe you」の略語で、ある当事者が別の当事者に対して債務を負っていることを認める非公式文書を指します。
複利とは、元本にそれまでに発生した利息を加えたものに対し、重ねて発生する利息を指します。このため、当初の元本が増える速度が最大化します。