要点
ガス代とは、イーサリアムなどのブロックチェーンネットワーク上でトランザクションやスマートコントラクトの実行に必要な手数料である。
これらの手数料は、トランザクションの検証やスマートコントラクトの実行に伴う計算処理を行うバリデーターへの報酬になる。
ガス代は多くの場合、ブロックチェーンのネイティブトークンで決済される。イーサリアムでは、ガス代はイーサ（ETH）の下位単位であるgweiで表されることが多い。
トランザクションの総コストは、使用されるガスの量とユーザーが設定するガス価格に依存する。そのため、ガス代はネットワークの混雑状況や需要に応じて大きく変動することがある。
はじめに
いままでにイーサリアムやBNB Chainなどのネットワークで暗号資産を送信したり、分散型アプリケーション（dApp）を利用したことがあれば、ガス代を目にしたことがあるはずです。ブロックチェーンネットワークの運用には、これらの手数料が欠かせません。ガス代は、ネットワークを円滑に稼働させるための「燃料」のような存在です。
ガス代の価格設定メカニズムはイーサリアムによって初めて導入され、「ガス」という用語は一般的にイーサリアムのトランザクションやスマートコントラクトに関連して使われています。
この記事では、イーサリアムのガスシステムに焦点を当てて解説する一方、他のブロックチェーンでもトランザクションコストをガス代と呼ぶことがあります。
ガス代とは
ガス代とは、ブロックチェーン上で操作を実行するために必要な費用のことです。ETHやBNBなどの暗号資産を送受信するたびに、そのトランザクションは検証され、ブロックチェーンの台帳に追加されます。これらの処理は、計算リソースを必要とします。
つまり、ガスとは、ETHの単純な転送からより複雑なスマートコントラクトの実行に至るまで、操作を実行するのに必要な計算作業量を測定する価格設定メカニズムを指します。ガスは、すべてのトランザクションを動かす「エネルギー」と見なすことができます。
ガス代の仕組み
トランザクションやスマートコントラクトの実行には複数の計算処理が必要となり、各処理段階でガスが消費されます。処理が複雑になるほど計算量が増え、それに伴い消費されるガスも多くなります。
ガス代は、イーサ（ETH）の下位単位であるgweiで決済されます。1 ETHは10億gweiに相当します。トランザクションを次のブロックに追加するインセンティブとして、ガス代がバリデーターへ支払われます。
ガス代の計算について
簡単に説明すると、トランザクションを送信する前に、以下の2つを指定する必要があると考えてください。
ガスリミット：支払ってもよいガスの最大量
ガス価格：1単位のガスに対して支払うETHの額（単位はgwei）
実際に支払う手数料は、使用したガスの総量（ガスリミット以下）とガス価格の掛け算で決まります。
合計ガス代 = 使用ガス量 × ガス価格
ガスリミットは、トランザクションで使うガスの最大量を決めて、支払い過ぎを防ぐものです。トランザクションがガスリミット以内で完了すれば、余ったガスは返金されます。しかし、処理中にガスが不足するとトランザクションは失敗し、バリデーターはその時点までの作業に対して手数料を受け取ります。
しかし、2021年のイーサリアム・ロンドンアップグレード以降、ガス価格の仕組みはやや複雑になりました。ガス価格の計算式は現在、次のようになっています。
ガス代総額 = 使用ガス量 × （基本手数料 + 優先手数料）
EIP-1559
ロンドンハードフォークではEIP-1559が採用され、ガス代の計算式が以下のように一新されました。
基本手数料（ベースフィー）：トランザクションごとに必要な最低限のガス価格。この手数料はバーン（焼却）されるため、イーサの供給量が減少し、インフレ率が抑制される。
チップ（優先手数料）：トランザクションの優先処理をバリデーター（検証者）に依頼する際に、直接支払われる任意の追加手数料。
このアップグレード以前は、ガス代はすべてバリデーターに直接支払われ、ユーザーは支払額を手動で推測する必要がありました。そのため、支払い過ぎやトランザクションの遅延が発生することがありました。EIP-1559では、基本手数料はネットワークの混雑状況に応じて自動的に調整され、手数料の予測がしやすくなり、コストの安定化に寄与しています。
ガス代が変動する理由
ガス代の総額は、主に2つの要因、すなわちネットワークの混雑状況とトランザクションの複雑さによって変動します。
イーサリアムは分散型ネットワークで、世界中の何百万ものユーザーによって共有されています。すべてのトランザクションはバリデーターによって処理・検証される必要があります。その際、バリデーターはより多くの報酬を得られる高いガス代のトランザクションを優先して処理します。
そのため、ガス代はトランザクションの複雑さや需要と供給の状況によって変動します。
需要が高い時期：多くのユーザーが同時にトランザクションを送信したり、人気のある分散型アプリケーション（dApp）を利用すると、ネットワークが混雑する。混雑した状況では、優先的にトランザクションを処理してもらうために、ユーザー間で高い手数料を提示し合う結果、ガス代が上昇する。
需要が低い時期：ネットワークの利用が少ないときは、ガス代が下がり、トランザクションが安くなって利用しやすくなる。
このような価格変動の仕組みは、限られたネットワークリソースを効率的に配分するのに役立ちますが、利用が集中する時間帯にはトランザクションコストが高くなることもあります。
それでも、ネットワークが混雑していない場合でも、複数の処理やスマートコントラクトのやり取りを伴う複雑なトランザクションでは、当然、ガス代が高くなります。
ガス代が重要な理由
ガス代は単なる負担や費用といったものではなく、イーサリアムや同様のブロックチェーンのエコシステムにおいて、なくてはならない存在です。
ネットワークセキュリティ：手数料は、あらゆる操作にコストを課すことで、スパムや悪用を防止し、ネットワークを過負荷から守る。
経済的インセンティブ：トランザクション処理およびブロックチェーンの維持のインセンティブとして、バリデーターはガス代を報酬として受け取る。
公平なリソース管理：計算リソースに料金を課すことで、ブロックチェーンは開発者に効率的なスマートコントラクトの作成を促し、リソースの無駄遣いを防ぐ。
トランザクションの優先順位付け：市場原理に基づく優先順位付けの仕組みにより、ユーザーは混雑時により早くトランザクションを処理させるために高い手数料を支払うことができる。
ガス代を抑えるヒント
ガス代の仕組みをよく理解すれば、費用を節約でき、トランザクションを円滑に処理できます。手数料を抑えるための実用的な提案をご紹介します。
ガス代をリアルタイムで推定できるウォレットやアプリを使うと、トランザクションを送信する前にコストを予想できる。EtherscanやBscScanなどのブロックチェーンエクスプローラーを利用すれば、ガス価格をリアルタイムで確認できる。
急がない場合は、ガス代を低く設定してコストを節約できるが、その場合、トランザクション承認までに時間を要することになる。
スマートコントラクトとのやり取りなど、より複雑なトランザクションは通常より多くのガスを必要とし、高めの手数料を見込んだ計画を立てる必要がある。
ガス代が低くなるオフピーク時間帯にトランザクションを行うようにする。
手数料の削減やトランザクション速度の向上を目的としたネットワークのアップグレードやレイヤー2ソリューションの動向にも注意を払うべきである。
まとめ
ガス代は、イーサリアムやその他の同様のブロックチェーンが機能するための基本的な要素です。ガス代は、ネットワークの分散化、セキュリティ、効率性を維持するために、トランザクションの処理と検証に計算リソースを提供するノードへ支払われます。
ガス代はネットワークの需要に応じて変動する一方、最近採用されたEIP-1559などの改善により、手数料はより予測可能で安定したものになっています。イーサリアムのユーザーや分散型金融（DeFi）、NFT、dAppを利用する際、ガス代について正しい理解を身につけることで、コストを節約し、効率的なトランザクションを行えます。
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