イーサリアムPectra(ペクトラ)アップグレードとは
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イーサリアムPectra(ペクトラ)アップグレードとは

イーサリアムPectra(ペクトラ)アップグレードとは

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更新済 Oct 18, 2024
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要点

  • 2025年に開始されるイーサリアムPectra(ペクトラ)アップグレードは、イーサリアムネットワークのさらなる高速化、スケーラビリティの向上、そして操作性の改善を目的としています。

  • 主な変更点として、ETH以外の異なるトークンによるガス代の決済、スマートコントラクトの高速化、バリデーターへのステーキング報酬の改善などが含まれます。

  • 長期的なメリットとして、スケーラビリティの向上とコストの削減が挙げられます。VerkleツリーやPeerDASなどの機能により、操作性が向上し、イーサリアムの普及を推進することになります。

イーサリアムPectra(ペクトラ)アップグレードとは

イーサリアムPectraは、一般ユーザーとブロックチェーン開発者向けに、イーサリアムネットワークのさらなる高速化、スケーラビリティの向上、そして操作性の改善を目的としたアップグレード(ハードフォーク)です。イーサリアムPectraは2025年から2段階にかけて導入される予定で、近年におけるEthereumネットワークの最も重要な機能拡張の1つとみなされています。

Pectraは、当初は別々に実施される予定だった2つのアップグレード、Prague(プラハ)とElectra(エレクトラ)を統合したものです。この統合により、アップグレードはより円滑に実施されます。

イーサリアムのアップグレードの必要性

イーサリアムは、2022年の「The Merge」(イーサリアムをプルーフ・オブ・ステークに移行)や2024年の「Cancun」アップグレードなど、多くの重要なアップグレードを実装し、その誕生以来、着実に改良を重ねてきました。

しかし、イーサリアムは、とりわけ高いトランザクション手数料、スケーラビリティ、初心者には難解な操作性など、依然として課題が残されています。Pectraアップグレードは、これらの問題への対応として用意されました。

Pectraアップグレードの主な機能

Pectraアップグレードで導入される主な変更点を見てみましょう。

1. アカウントアブストラクション(抽象化)

現在、イーサリアムを利用する際、ガス代決済時にウォレットに少量のEther(イーサ、ETH)残高が必要になります。送信や分散型アプリ(dApp)とやり取りするたびに、トランザクションコストとしてガス代を支払う必要が発生します。例えば、トークンの送信や、NFTの取引には、ネットワーク使用料としてETHでの決済が求められます。

イーサリアムPectraアップグレードでは、アカウントアブストラクションと呼ばれる概念を活用し、ユーザー体験を向上させています。アカウントアブストラクションのメリットの1つに、ETH以外でもガス代の決済ができることが挙げられます。ガス代の決済時、USDCやDAIなどの他のトークンが利用できることで、操作性が大幅に向上します。このアップデートにより、サードパーティのサービスがガス代決済を代行し、手数料の支払いが極小さらには無料になるといったことも考えられます。

2. スマートコントラクトの効率化

EIP-7692などのイーサリアム改善提案(EIP)により、イーサリアム仮想マシン(EVM)はより効率化され、スマートコントラクトの実行が高速化されます。その結果、スマートコントラクトの実装コストと複雑さが軽減され、開発者とユーザーにメリットをもたらします。

3. バリデーターに対する改善

イーサリアムが分散型システムで運用され、「バリデーター」によるトランザクションの承認により、ネットワークのセキュリティが確保されています。バリデーター資格として、32ETHのステーキング(ロックアップ)が義務付けられ、その対価として報酬が提供されます。しかし、32ETHを超える保有量に関しては追加で報酬は発生せず、効率的とは言えません。

Pectraでは、ステーキングを柔軟に引き出すできるようになり(EIP-7002)、バリデーターへのステーキング数量制限は32ETHから2048ETHに緩和されます(EIP-7251)。この変更により、とりわけ大量のETH管理者や企業にとって、柔軟で効率的なシステム運用が実施できるようになります。

さらに、Pectraでは「バリデーターの統合」が実現します。多くのユーザー向けにETHのステーキングサービスを提供するLidoなどの大規模運用事業者は、バリデーターノード数を削減できます。その結果、イーサリアムネットワーク上のリソース負荷が軽減され、より高速化されます。

4. Verkle Trees(バークルツリー)によるデータ管理の改善

PectraではVerkle Treesが導入され、ノードによるブロックチェーンデータの保存量が削減されます。複雑に聞こえるかもしれませんが、データの保存と検証方法を改善し、イーサリアムネットワークをより高速化しスケーラビリティを向上させるものです。

つまり、Verkle Treesは現在のイーサリアムのデータ編成方法をより効率化する改良技術ということになります。必要なストレージ容量を削減し、トランザクション処理を高速化できます。この技術は、長期的にイーサリアムをより高速化し、低コストでの利用に貢献するものです。

5. レイヤー2ソリューションとPeerDAS

ArbitrumやOptimismなどのイーサリアムのレイヤー2(L2)ソリューションは、メインのイーサリアムネットワークを経由せずに多くのトランザクションを処理するように設計されています。これにより、ネットワーク上の混雑を緩和し、トランザクションコスト(ガス代)を削減できます。

Pectraでは、ピア・データ利用可能性サンプリング(PeerDAS)を導入し、L2ネットワークでのデータ処理をより簡素化します。基本的に、PeerDASの機能はレイヤー2での運用をより低コストで高速化するものです。これはイーサリアム上でのアプリ利用者、また大量のトランザクションを行うユーザーにとって朗報といえます。

Pectraアップグレードが2段階に賭けて行われる理由

イーサリアムPectraアップグレードは当初、一度にすべて実施される予定でした。しかし、イーサリアムの開発者はすべての作業を同時に実装すれば、複雑過ぎてリスクが増大するとの判断に至りました。代わりに、アップグレードを2つの段階にかけて実施することになりました。

  • 第1段階(2025年初頭):第1段階では、アカウントのアブストラクションとバリデーターのアップグレードなどに焦点が当てられる。これらの変更により、イーサリアムの操作性と、ステーキングへの報酬が向上する。

  • 第2段階(2026年予定):第2段階では、スマートコントラクトを効率化するEVMオブジェクトフォーマット(EOF)や、レイヤー2のスケーラビリティを改善するPeerDASなど、より技術的な改良に焦点が当てられる。

イーサリアムPectraアップグレードの影響

  • 一般ユーザー:最大級のメリットの1つに、ガス代決済にETHを保有する必要がなくなる点がある。他のトークンでガス代を負担できるようになり、イーサリアムでのDAppsやサービスの利用がより簡単になる。さらに、バリデーターの仕組みを改善し、ネットワークはより高速でセキュアになる。

  • バリデーターとステーカー:ETHのステーキングやバリデーターを運営している場合、アップグレードにより、より多くのETHを一層効率的に管理できる。以前は不可能だった、32ETH以上の保有に対しても報酬が割り当てられるようになる。バリデーターの統合により、ステーキング運用の管理も容易になり、イーサリアムネットワークへの負荷も軽減される。

  • 開発者:Pectraでは、スマートコントラクトの実行環境であるイーサリアム仮想マシンにも改善がもたらされる。これらの変更により、コントラクトの作成とデプロイがより迅速かつ低コストにて実現し、分散型アプリの構築により快適な環境が用意される。

イーサリアムPectraの長期的なメリット

利用時にすぐに感じられる改善点もある一方で、イーサリアムPectraアップグレードは長期的な視点に基づいて準備されたものです。ネットワークを拡張性と効率性を一層向上させ、将来的により多くのユーザーとビジネスでの利用に耐えられるように設計されています。

Verkle Treeの導入とレイヤー2ソリューションの改善により、イーサリアムは低コストでより多くのトランザクションを処理できるようになり、これはネットワークが継続的に成長を続ける上で決定的な要因となります。

まとめ

イーサリアムPectraアップグレードは、イーサリアムをより高速化し、低コストで、操作性を改善する大きな一歩です。アップグレードを2段階に分け、各段階のアップグレード作業時にネットワークに過剰な負荷がかかることを避け、確実に改善計画が遂行できるように準備されています。Pectraアップグレードでは、一般ユーザー、バリデーター、開発者のすべてに、イーサリアム利用体験を向上させる新機能が用意されています。

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