チェーン・アブストラクション(抽象化)とは
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チェーン・アブストラクション(抽象化)とは

チェーン・アブストラクション(抽象化)とは

初心者
公開済 Jun 17, 2024更新済 Jul 23, 2024
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要点

  • チェーン・アブストラクション(抽象化)とは、ユーザー体験(UX)から障壁や面倒な技術的手順を取り除き、ブロックチェーンアプリケーションやサービス利用の簡素化を目指すコンセプトです。

  • チェーン・アブストラクションにより、アプリケーションがエンドユーザーにとってより魅力的なものとなり、クロスチェーンでのやり取りが可能になるより効率的なdAppの開発が促進されます。

  • 一方で、チェーン・アブストラクションには、集中化リスク、セキュリティリスク、相互運用性などの課題があります。

はじめに

ブロックチェーン間でのやり取りは、初心者にとって分かりにくく困難なものになりがちです。この記事では、チェーン・アブストラクションとその仕組み、メリットと課題、よくある誤解について説明します。

チェーン・アブストラクション(抽象化)とは

チェーン・アブストラクションとは、ブロックチェーン技術をユーザー体験(UX)から切り離すことでユーザーとブロックチェーン技術の関わり方をシンプルにする、NEAR発のコンセプトです。やり取りしているブロックチェーンそのもの、もしくはブロックチェーンを利用していることすらさえも意識する必要がなくなる使い勝手を目指すものです。

チェーン・アブストラクションの仕組み

効率性

iPhoneからメッセージを送信できるのはiPhoneに対してのみで、Androidには送信できないとしたら、非効率的であり実用的とは言えません。同様に、異なるブロックチェーン間で分散型アプリケーション(DApps)も手軽にやりとりできるべきです。

チェーン・アブストラクションは、ブロックチェーン技術の煩雑さを取り除くまたは覆い隠すことで、ユーザーがdAppの機能やメリットに集中できるようにすることを目的としています。例えば、新たなdApp「XYZ」を利用したい場合、同dAppが構築されているブロックチェーンが何であるかは本質的に関係ありません。ユーザーの観点からすれば、機能性が保証され、目的を果たせればよいだけの話です。

同様に、何百万人もの人々が毎日インターネットを使用している中、その背後にある技術や仕組みは一部の人々にしか理解されていません。意図したとおりに機能し価値が提供される限り、一般的なユーザーがその技術的な詳細を完全に理解する必要はないのです。

トランザクション

複数のネットワーク間で簡単に取引でき、さまざまなサービスを利用できるdAppを想像してみてください。例えば、スマホでXYZアプリを開き、コーヒーを注文し、お気に入りのアパレルショップでセール情報を見つけます。靴を購入し、Ethereum上に保存される非代替性トークン(NFT)でポイントを受け取ります。さらに、ポイント優待オファーで、同じくNFT(ただしBNB Smart Chain、BSC上で発行されたもの)としてのイベントチケットを購入します。

これらすべての取引を1つのアプリで済ませれば、複数のウォレットの管理、ネットワークの切り替え作業、取引手数料の決済処理などの必要がなくなります。チェーン・アブストラクションでは、最終的にこのレベルでのチェーン間のやり取りの実現を目標としています。

チェーン抽象化のメリット

流動性の接合

流動性は特定のブロックチェーン内に隔離されていることが多く、ユーザーや開発者が流動性にアクセスして利用することは困難です。チェーン・アブストラクションは、様々なブロックチェーンにまたがる流動性へのアクセスを実現し、この問題に対処します。

別のケースとして、所有しているトークンを貸し出し、利息を獲得したいとします。流動性が特定のブロックチェーン内に隔離されている場合、同一ブロックチェーン上のプラットフォームしか利用できません。チェーン・アブストラクションを利用すれば、ジョンは複数のブロックチェーンの流動性を統合したプラットフォームでトークンを貸し出せます。その結果、プラットフォームの利用者が増えることになり、より有利な金利で貸し出せることになります。

開発の簡素化

チェーン・アブストラクションによって、特定のブロックチェーンの制約に縛られることなく、柔軟なdApp開発が可能になります。

スマートコントラクト機能にはEthereumを採用する一方で、決済にはコストが安いPolygonを採用したりできます。例えば、DecentralandではPolygonネットワークを用い、トランザクション手数料なしでアバターのウェアラブルを請求、購入、販売、取引したりできます。Decentralandは複数のチェーンを組み合わせることで、手数料ゼロを実現しているのです。ただしPolygonでのトランザクションには少額の手数料がかかり、完全無料ではありません。

チェーン・アブストラクションの課題

中央集権化リスク

チェーン・アブストラクションを取り入れると、1つのユーザーインターフェイスであらゆる種類のブロックチェーンアプリケーションを操作できるようになり、ユーザー体験が向上します。ただし、このインターフェイスが単一障害点になりうる懸念があります。

セキュリティリスク

各ブロックチェーンには、独自のセキュリティプロトコルが実装されています。これを単一のインターフェイスに統合すると、すべてのセキュリティ対策を確実に維持することは困難になります。慎重に実装しなければ、チェーン・アブストラクションによる新しいインターフェイスが個々のブロックチェーンにリスクをもたらす懸念があります。

相互運用性の問題

さまざまなブロックチェーン間での相互運用性の確保も、同じく課題となります。ブロックチェーンごとに独自のコンセンサスアルゴリズムとスマートコントラクト言語が存在しているため、すべてのネットワークで完璧に機能する単一のインターフェイスを作成することは困難です。例えば、プログラミング言語や基盤技術の相違により、Ethereumネットワーク向けのスマートコントラクトはそのままではSolanaと互換性はありません。

チェーン・アブストラクションに関するよくある誤解

チェーン・アブストラクションによりブロックチェーンの相違を解消

チェーン・アブストラクションはチェーン間のやり取りを簡素化できる一方、各ブロックチェーン独自の機能はそのまま維持されます。チェーン・アブストラクションは、技術的プロセスを簡素化および自動化することでユーザー体験を向上させるものの、ブロックチェーンインフラストラクチャ自体を直接変更するものではありません。

チェーン・アブストラクションは、チェーン間のトランザクションのみを対象とするものです。

異なるブロックチェーン間でのトランザクションの実現は、チェーン・アブストラクションのもつ劇的な特徴である中、有用性は他にもあります。チェーン・アブストラクションにより、dAppの利用、スマートコントラクトのデプロイ、ブロックチェーン間でのデータ取得の簡素化も実現します。

まとめ

チェーン・アブストラクションとは、異なったブロックチェーンネットワーク間のやりとりの簡素化を意味します。散り散りになった流動性をまとめ上げたり、開発を簡素化したりするメリットが挙げられます。一方で、中央集権化、セキュリティリスク、相互運用性への懸念といった課題も抱えています。それでも、相互運用可能で使い勝手の良いユーザー志向のブロックチェーンエコシステムへの開発を推し進めることにつながる可能性があると言えます。

参考文献

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