要点
CoW DAOは、ユーザーエクスペリエンスと安全性の向上を目的とするDeFiプロジェクトです。CoW Protocol、MEV Blocker、CoW AMMの3つの主要ツールが備わっています。
CoW Protocol:効率的な価格設定メカニズムと不利な取引設定を防止する取引ツール。
MEV Blocker:フロントランニング攻撃やサンドイッチ攻撃を回避するトランザクション保護ツール。
CoW AMM:価格操作から流動性プロバイダーを保護する新しいモデルを採用した自動マーケットメイカー。
CoW DAOとは
CoW DAOは、イーサリアム上でweb3ユーザーの安全性と取引体験を向上させるプロダクト開発に取り組むプロジェクトです。このプロジェクトには、CoW Protocol、MEV Blocker、CoW AMMという3つの主要ツールが用意されています。また、これらのプロジェクトに対して、開発サポート、助成金、その他の支援も行っています。
CoW Protocol:グループベースの取引で最良価格を見つけ、流動性を向上させる取引ツール。
MEV Blocker:ユーザーに還元を提供して、取引への攻撃を防ぐ取引保護ツール。
CoW AMM:流動性プロバイダーを価格操作から保護する自動マーケットメーカー(AMM)。
CoW DAOは、コミュニティメンバーがプロトコルの開発に対して、自ら管理できる分散型ガバナンスモデルを採用しています。
CoW Protocol
取引のインテント(意図)
CoW Protocolで取引する場合、直接取引するのではなく、「取引のインテント」(意図)に署名します。このインテントには、何をどれだけ取引したいかを記載し、ソルバーがこれを解決する最善の方法を探し出します。
経済的なメリット
ソルバーは、(Coincidence of Wantsと呼ばれる)ピア・ツー・ピア取引をマッチさせたり、オフチェーン取引を検索して最良価格を提示します。この方法の採用により、手数料が削減され、価格操作を回避できると同時に、MEV(Maximal Extractable Value)攻撃からも保護します。
技術的なメリット
このプロトコルはバッチオークションに対応しており、複数の取引を一括送信でき、ETHトークン以外でもガス代を支払えます。また、トランザクションが失敗した場合、手数料はかかりません。
ソルバーとバッチオークション
ソルバーは、取引の意図をバッチ処理して競わせ、最良の取引を探し出します。バッチオークションの採用により、不正取引操作を回避し、取引全体で均一な価格設定が可能となります。このシステムがボットによる取引注文の悪用の防止、ピア・ツー・ピアでの取引マッチングへの対応、コスト削減と取引効率の向上を実現しています。
注文処理
CoW Protocolは、注文を4つの段階で処理します。
インテントの送信:ユーザーは直接注文するのではなく、資産と金額の詳細が記載された署名入りの「取引インテント」を送信します。
バッチ処理:CoW Protocolが、複数の取引インテントを1つのバッチにまとめます。
ソルバー間のコンペティション:ソルバーには、ユーザーに最良価格を提示するための短い時間が与えられます。最も有益な提案をしたソルバーが選択されます。
執行:選択されたソルバーは取引を執行し、ユーザーはトークンを受け取ります。
この方法により、手数料の削減、価格の改善、MEVからの保護が実現されます。
注文種別
2024年11月現在、CoWには成行注文、指値注文、TWAP注文、プログラム注文、ミルクマン注文、CoWフックの6つの注文種別が用意されています。
1. 成行注文
現在の価格で即時売買。
ソルバーは、注文全体を執行するか、流動性が利用可能となるまで待機する。
ユーザーは、執行中の価格変動を考慮した上で、スリッページ許容度を設定する。
2. 指値注文
有効期限内に特定の価格で売買。
価格が指値に達した場合、注文は執行される。それ以外の場合は、注文は失効する。
CoW Protocolは、ガス代をかけずにこれらを処理し、可能な限り価格を最適化する。
3. TWAP注文
大口注文を時間をかけて小さな取引に分割し、価格への影響を最小限に抑える。
ユーザーは資産、価格制限、分割回数、期間を設定し、注文の執行を調整する。
4. プログラム注文
特定の条件(価格トリガーなど)に基づく自動売買。
複雑な戦略、DAO、プロトコルレベルの取引に有効。
5. Milkman注文
Milkman注文はYearn FinanceとCoW Protocolによって共同開発された注文メカニズムで、固定価格ではなくリアルタイムの価格フィードに基づいて発注される。
Milkman注文は、注文はかなり先の将来であっても公正な市場価格で執行できる。
そのため、DAOやガバナンスに影響する取引に最適である。
6. CoWフック
CoWフックは、資金のブリッジ、ステーキング、報酬の請求など、トレードの前後に独自の操作を実行できるようにするものである。
CoWフックでは複数の操作を組み合わせ、1つのトランザクションとして実行する。ユーザーはイーサリアム関連にする操作をCoW注文に組み合わせられる。
開発者とトレーダーは自分のインテントを表明できる。
MEVブロッカー
CoW DAO、Beaver Builder、Gnosis DAOによって開発されたMEV Blockerは、フロントランニングやサンドイッチ攻撃からユーザーを保護するツールです。MEVブロッカーは、ボットが使われやすいパブリックプールを回避し、安全なネットワークにトランザクションを送信します。
フロントランニングは、ボットがキューの中に大口取引を見つけ、予想される価格変動を利用して、その大口取引注文の前に注文を発注するものです。しばしば、もともとあった大口注文の価格に悪影響がでることが多くなります。
バックランニングは、ボットが大口取引の直後に取引を行い、その大口取引による価格変動を利用して利益を上げるものです。この場合では、もともとの大口注文への価格には影響がないため、被害は軽微なものといえます。
サンドイッチ攻撃はこの両方を組み合わせたもので、ボットがユーザーのトランザクションの前後に取引を行い、価格をつり上げ、ユーザーに損害を与えて利益を獲得するものです。
これらの手口はブロックチェーンネットワークの透明性を悪用したものである中、CoW MEV Blockerなどのツールで対抗できます。
MEV Blockerを使用すると、ユーザーは自分の取引によって作成されたバックランニング取引から最大90%の還元を獲得できます。このツールは標準的なトランザクション処理よりも高速で、リアルタイムでのトラッキングと透明性を実現しています。UniswapやTrust Walletなどの多くのWeb3ウォレットでは、より安全で効率的な取引に向けてMEV Blockerを内蔵しています。
CoW AMM
LVR問題
AMMのほとんどは、主要取引所の最新価格に瞬時に価格を一致させることはありません。そのため、価格の鮮度が落ち、アービトラージ取引で流動性プロバイダー(LP)が被害を受けることになります。これは「損失対リバランス」(loss-versus-rebalancing、LVR)問題として知られており、LPが本来得られる利益を減少させるものです。
CoW AMMではLVR問題への対応として、Function-Maximizing AMM(FM-AMM)と呼ばれる新しいメカニズムを採用しています。このメカニズムは、取引をバッチ化し、各バッチに単一の決済価格を設定することで、取引が公正な最新価格で執行されることを保証するものです。
COWトークン
COWトークンはCoWプロトコルの中心的存在であり、関係者がプロトコルの成長と発展に向けた意思決定に参加できるガバナンストークンとして機能します。このガバナンスシステムは、ユーザー、開発者、支援者の利害を調整し、コミュニティ主導による取り組みを促進するものです。
まとめ
CoW DAOは、イーサリアムユーザーを不正操作から守り、より優れた取引、流動性保護、分散型ガバナンスを保証する革新的なソリューションです。CoW Protocol、MEV Blocker、CoW AMMを通じて、手数料を抑え、リスクを軽減し、トランザクションを確実に制御できるようにしています。
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