要点
リップルでは、分散型かつオープンソース型のブロックチェーンであるXRP Ledger(XRPL)上に決済ソリューションを構築しています。
XRPは、XRP Ledgerのネイティブトークンです。同トークンは、通貨間のブリッジ、トランザクションの決済、グローバルな金融ネットワークにおける流動性の実現を目的に用いられます。
リップルでは主に金融機関での利用を想定し、越境決済システムの改善を目指すツールを提供しています。
XRPは、トークン化、DeFiアプリケーション、クロスチェーンでの流動性、オンチェーンのコンプライアンスツールをはじめとするユースケースに対応しています。
リップルとは
リップル(Ripple)とは、越境決済に向けたブロックチェーンベースのインフラの構築を手がけるテック企業です。同企業では、オープンソース型のブロックチェーンであるXRP Ledger(XRPL)の運用と同ネットワークのネイティブトークンであるXRPの使用により、高速かつ低コストでのトランザクションを実現しています。
リップルのプロダクトにより、銀行、フィンテック、暗号資産関連企業における、資金の即時の送受信、XRPを使用したトランザクションの決済、デジタル資産の発行または管理が実現します。リップルが展開するプロダクトの例として、ステーブルコインインフラや企業向けカストディソリューションなどの越境決済手段などが挙げられます。
XRPはすでに上場しており、リップルのプロダクト内での使用以外にも幅広い用途があります。リップルはXRPLに貢献する数多くの参加者の1社であり、XRPの一部をエスクロー目的で保有し、透明性が高く段階的な分配を行っています。
履歴
リップルは、2004年に分散型デジタル通貨システム(RipplePay)として業界初のプロトタイプを開発したRyan Fugger(ライアン・フガー)により考案されました。2005年に稼働開始した同システムは、グローバルなネットワーク内での安全性の高い決済ソリューションの提供を目的としたものでした。
2012年、Fuggerは同プロジェクトをJed McCaleb(ジェド・マッケイレブ)とChris Larsen(クリス・ラーセン)に引き継ぐとともに、米国拠点のテック企業であるOpenCoinを共同で設立しました。この時点より、リップルでは銀行などの金融機関向けの決済ソリューションを重視したプロトコルの構築を開始しました。2013年、OpenCoinがRipple Labsにリブランドされ、その後(2015年)、Ripple(リップル)にリブランドされました。
リップルの仕組み
XRP Ledger(XRPL)
リップルのプロダクトは、高速かつ効率的なトランザクションの達成を目指して構築された公開型かつオープンソース型のブロックチェーンであるXRPL上に構築されています。ビットコインやイーサリアムと異なり、XRPLはミントまたはステーキングに依存しない構造となっています。その代わり、同ネットワークではRipple Protocol Consensus Algorithm(RPCA)と呼ばれる独自のコンセンサスを使用しています。
トランザクションは、独立したノードのネットワークにより検証されます。信頼できるノードの80%が同意すると、わずかなトランザクション手数料によりトランザクションが確定されます(所要時間:通常は約3〜5秒)。バリデーターの運用には誰もが参加できる一方、リップルでは機関投資家向けに信頼できるバリデーターが記載されたUnique Node List(ユニークノードリスト、UNL)を管理しています。
リップルの決済プロダクト
リップルが提供する越境決済向けプロダクトには、RippleNetとOn-Demand Liquidity(ODL)の主に2種類があります。これらのプロダクトでは、決済時間の短縮、コストの削減、透明性の向上の実現により、SWIFTなどの従来型の決済システムの改善を目指しています。
RippleNet
RippleNetは、リップルが展開するグローバル決済ネットワークの1つです。同ネットワークは、ノストロ・アカウント / ボストロ・アカウントから成る従来型の銀行モデルに対する最新の代替手段として機能し、これにより、金融機関において越境支払いのリアルタイムでの追跡および決済が可能となります。
RippleNetは、シンプルなAPI経由でパートナーと接続し、クラウドでホストされるため、技術的な複雑性が軽減されます。また、リップルの方でシステムメンテナンス、アップグレード、セキュリティを処理するため、機関投資家によるオンボーディングと運用が容易になります。
オンデマンド型の流動性(ODL)
ODLはリップルの流動性ソリューションであり、XRPを用いることで各通貨での事前入金を済ませた口座の準備が不要となります。機関投資家は、資金送金先の国で外貨を保有する代わりに、XRPを使用してオンデマンドで決済を実行できます。
例えば、日本からインドへの資金の送金の場合、日本円をXRPに変換してXRPL上で送信し、受け取り側でインドルピーに交換できます。この手続きは通常数秒で完了し、送信者または受信者が直接XRPを保有する必要はありません。これにより、資本コストの削減、効率性の向上、24時間対応の決済が実現します。
XRPトークン
XRPは、XRP Ledgerのネイティブトークンです。同トークンは、リップルのインフラとXRPLエコシステム全体において、以下などの各目的に用いられます。
ブリッジ通貨:XRPを各法定通貨間のブリッジに用いることにより、事前入金口座を準備せずとも高速かつコスト効率の高い越境取引が実現します。
トランザクション手数料:各トランザクションの処理には、少額のXRPが必要となります。これにより、スパムを防止し、ネットワークパフォーマンスの維持を行っています。
流動性提供:XRPは、XRPLの組み込み型分散型取引所(DEX)、自動マーケットメイカー(AMM)、クロスチェーンの取引システムなどにおいて用いられています。
担保とエスクロー:発行体は、XRPLのネイティブエスクロー機能を用いて資産をロックし、オンチェーン金融のユースケース向けに安全性の高い時間ベースまたは条件付きの送信を作成できます。
ローンチと配布
XRPトークンは2012年の立ち上げ時に1,000億トークンの総供給量すべてがリリースされる形でローンチされました。同トークンのマイニングまたはステーキングは行われず、総供給量は固定されています。
ローンチ時には、同ネットワークの開発と普及推進目的で800億XRPがRipple Labsに割り当てられ、残りの200億XRPは、プロジェクトの創設者や初期の貢献者に割り当てられました。
2017年、リップルでは予測可能かつ透明性の高い供給管理の実現を目指し、550億XRPをオンチェーンエスクローにロックしました。エスクローでは毎月最大で10億XRPをリリースし、未使用分はスケジュールの最後に繰り延べされます。
2025年8月時点で、356億XRPがエスクローに残っています。また、リリースはすべて、XRP Ledgerに組み込まれたプロトコルルールにより実行されます。このプロセスは完全に自動化されており、透明性が高いものとなっています。
規制上の試練
リップルは2020年以降、米国証券取引委員会(SEC)との間で法廷闘争が続いてきました。SECは、リップルが未登録証券としてXRPを販売したと主張しています。この訴訟により、XRPの不透明性が顕著となり、当時、同トークンを上場廃止にする取引所も現れました。2023年、米国連邦地裁の判事は、XRPが公開取引所で取引される場合は証券には該当しないものの、リップルが機関投資家に対しXRPを販売したことは証券法に違反するとの判決を下しました。
その後、SECの控訴が棄却され、リップルの経営陣に対する訴追は取り下げられました。リップルは1億2500万米ドルの罰金を支払うように命じられたものの、これはSECが当初主張していた20億米ドルを大幅に下回る金額です。双方は控訴を取り下げることで合意し、法廷闘争が終結することとなりました。暗号資産規制におけるこの画期的な判決により、XRPなどのデジタル資産の取り扱われ方が米国法の下で形作られることとなりました。
まとめ
リップルとXRPは、越境決済と流動性管理における効率性を高めるためのブロックチェーン技術の実用例と言えます。XRP Ledger上に構築されたリップルのプロダクトでは、従来型のシステムと比較した際の決済時間の短縮、コストの削減、効率性向上の実現を目指しています。
XRP LedgerのネイティブトークンであるXRPは、ブリッジ通貨、手数料トークン、オンチェーンの流動性供給源となることにより、決済取引の実現を後押しする大切な役割を担っています。同プロジェクトは規制上の問題(主にSECとの訴訟)に直面したものの、引き続きグローバルな展開を進めており、XRPLエコシステムの継続的な発展を支えています。
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