Yearn.finance(YFI)とは?
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Yearn.finance(YFI)とは?

Yearn.finance(YFI)とは?

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公開済 Nov 9, 2020更新済 Aug 17, 2022
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著者 Nick Chong


概要

YFIはYearn.financeプロトコルのネイティブ仮想通貨で、このプロトコルの今後の方向性を決める時に、ユーザーが保有量に基づいて投票ができるガバナンストークンです。

7月のローンチ以来、YFIはプロトコルが自動化されたイールドファーミング戦略にフォーカスしていることで、最も時価総額の大きいイーサリウムベーストークンの1つとなっています。Yearn.financeは常にイーサリウムDeFiにおける最高利率を探そうとするロボットと表現することもできます。


イントロダクション

分散型金融、またはDeFiは、プロトコルによって提供される利回りが爆発的に増えているため、驚異的に成長しています。プロトコルがどのような方向で開発したいかをホルダーに決定できるようにする、ガバナンストークンの導入がこの急成長の大きな理由の1つです。ガバナンストークンはDeFiプロトコルの分散化において、重要なステップです。

ガバナンストークンブームに乗って、Yearn.financeは2020年7月にYFIをローンチしました。YFIはすぐに仮想通貨業界から多くの注目を集め、1か月で3ドルから3万ドルまで価格が上昇しました。


Yearn.financeとは?

YFIについて見ていく前に、前提知識としてYearn.finance、もしくはyEarnについて学びましょう。

2020年前半にAndre CronjeによってローンチされたYearn.financeはユーザーがETH、ステーブルコイン、そしてアルトコインを入金することで、最高利率にアクセスできるようにすることにフォーカスした、イーサリウムベースプロトコルです。Andre Cronjeは、様々なDeFiアプリケーションが提供する利率がバラバラなことに気付き、Yearn.financeを構築しようと考えた南アフリカ出身の金融テクノロジー開発者です。

ローンチ後すぐに大成功したため、Cronjeはユーザーに新しいプロダクト群を提供するためにプロトコルを徹底的に見直しました。


主な機能

このプロトコルの主要な機能はValuts(金庫)と呼ばれています。ここに、ユーザーは仮想通貨を入金し、利息を稼ぐことができます。入金された資金は利息を最大化し、リスクを最小化しようとする戦略によって運用されます。ローンチ時は、Vaultsはステーブルコインを中心にフォーカスしていましたが、その後ETH、トークン化されたビットコインプロダクト、Chainlinkなどのコインにも対象が拡大していきました。 
Vaultsはイーサリウム上の高いトランザクションコストを低下させるので重要です。資本をプールすることで、アカウントのうちたった1つ(それぞれのVaultsのコントローラー)だけがトランザクション手数料(Gas)を払うことで、イールドファームができます。
Yearn.financeは他にもEarnという、ステーブルコインとトークン化されたビットコインのみをサポートする、Vaultsの機能限定版も提供しています。Zapを使うと、ユーザーは従来のステーブルコインを、それらを表す流動性プロバイダー(LP)トークンとスワップすることができます。
Yearn.financeは、現在DeFiユーザー向けの分散型保険プロトコルyInsureや分散型レンディングと借入を容易にするStableCreditなどに取り組んでいます。


YFIの歴史

7月までは、Yearn.financeはかなりニッチでした。2020年初頭に悪用され、3月に仮想通貨市場が暴落したので、多くのユーザーはそれ以降新しいプロトコルを使うのに躊躇するようになっていました。

この雰囲気は、CronjeがYFIをMediumのブログ記事で、Yearn.financeプロトコルのガバナンスにユーザーが使うことができるERC-20トークンであるYFIをローンチを発表したことで変わりました。
Balancerへの流動性の提供、分散型取引所、そしてYearn.financeのプロダクトに資金を入金することなどの方法でYFIを獲得することができます。

Mediumの記事では、YFIには本質的な価値がないと書かれているにも関わらず、このコインは市場で大人気となりました。Balancerプールで3ドルでトレードが開始された後、この仮想通貨はYearn.financeのガバナンスに参加できることに価値を感じる投資家によって急騰し、何百万ドルもの資金が入金されるようになりました。

ローンチ後すぐに、インフレをさせる代わりに、コミュニティはYFIの発行上限を3万枚にすることで、その希少性を維持することを選択しました。この決定に不満だったユーザーは、このプロジェクトをフォークさせ、現在DFI、もしくはYFIIとして知られるプロジェクトを始めました。



Yearn.financeの分散化

YFIはYearn.financeへの入金を増やし、関心を集めるために重要でしたが、別の目的もありました。それは、ユーザーにプロトコルの開発とコントロールを分散化することです。

ファーミングメカニズムによって、100ドルを持っていても、100万ドルを持っていても、同じ時間とコストでYFIを獲得できます。つまり、誰でもYearn.financeに影響を与えるために、YFIを獲得できるということです。

YFIのローンチ後、総合ガバナンスポータルがローンチされ、トークン保有者はコミュニティのメンバーが提案する様々な決定に投票することができるようになりました。 

これまでに行われた決定には、マーケッターや開発者の採用、Valutsへの特定の戦略の追加などがあります。

また、ホルダーはプロトコルの利益の一部へのアクセスをYFIホルダーに提供するために、重大な決断を行いました。Yearn.financeプロダクト内の手数料はTresuryに保管され、その大部分はYFIホルダーとチームに配分されます。つまり、ビットコインやイーサリウムと違って、YFIは配当利回り資産ということです。


YFIが重要な理由

多くの人はこれまでのYFIが経験してきた値動きに注目しますが、最も重要なのはYFIがプロトコルがどのように普及にインセンティブを与えることができるかの新しい可能性を示したことです。YFIのローンチは、同じ金額を支払えば、誰でもコインの発行に参加できたので、ビットコインのローンチ以来、最も公平なものだったと言う人もいます。

ユーザーが新しいコインを得るために、事前に設定された価格を支払う、イニシャルコインオファリング(ICO)モデルを使う代わりに、YFIのユーザーはプロトコルに参加しなければいけませんでした。このメカニズムにより、すべてのユーザーがガバナンストークンを通じてYearn.financeに影響を与えることができるようになり、プロジェクトの周りにコミュニティを迅速に構築することができました。
最初の価格の後の変動があっても、Yearn.financeのコミュニティはDeFiと仮想通貨の分野全体における、最もアクティブなコミュニティの1つです。 


課題

もちろん、YFIに課題がないというわけではないです。Andre Cronjeは長い間Yearn.financeとYFIで中心的な役割を果たしてきたので、投資家は彼の一挙手一投足に注目しています。つまり、もしもAndreが休んだり、いなくなったりしたら、多くの人はこれをYFIにとっての大きな打撃と考えるかもしれません。そのため、(少なくともある程度は)このキーパーソンを中心にプロジェクトがまだ中央集権的だと主張する人もいます。

このリスクは今年の初め、AndreがDeFi分野から離れたいと発言したと報じられたことで、さらに強調されました。YFIの価格は、プロジェクトが止まるという恐れによって、大きく値下がりしました。

Yearn.financeに新しいチームメンバーが参加しているので、このAndreプレミアムのトレンドは徐々に関連性を失いつつあります。Andreの影響力なしで、分散型ガバナンスが発展していけば、もはやこのリスクを心配する必要はなくなるかもしれません。


まとめ

YFI のローンチは、仮想通貨プロジェクトがコインを配布する方法として、業界全体に新しいシフトをもたらしました。早期のユーザーにインセンティブを与えることで、プロジェクトは迅速な普及とコミュニティの成長を実現できます。これは、投資に金銭的または感情的な利害関係を持っている人は、そのプロジェクトが成功するために、自分ができることをするという、自己資本投資のコンセプトと関連しています。

Yearn.financeは、ユニークな分散型金融プロダクトを構築している、興味深いプロトコルです。Yearn.financeは開発者やマーケティングのチームの採用しているので、未来は明るいように見えますが、このプロジェクトがイーサリウムDeFi分野で長期的な成功を得られるかは時間が経たないとわかりません。