ダークプール入門
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ダークプール入門

ダークプール入門

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公開済 Jan 13, 2020更新済 Oct 13, 2023
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ダークプールとは

ダークプールは、金融商品の交換を行う非公開取引所です。公開取引所とは異なり、目に見えるオーダーブックは存在せず、取引は一般に公開されません(あるいは、執行されてから初めて見ることができます)。

ダークプール市場の流動性は、ダークプール流動性と呼ばれます。ダークプール取引の大半はブロック取引で行われます。ブロック取引とは、事前に決められた価格で資産の大口取引を行うものです。

ダークプールは1980年代に初めて登場し、主に大量の有価証券を取引する機関投資家によって利用されてきました。

ダークプールを利用することで、機関投資家は最初にその取引意図を公にすることなく注文を出し、取引を行えます。ある特定の資産を大量売買する意図が公になると、執行前に大きく価格変動が生じ、取引に悪影響を及ぼす可能性があるため、機関投資家にとって有利な特徴と言えます。

ダークプールは世界の株式市場で大きな割合を占めるようになっており、この記事では暗号資産分野への潜在的な影響を検証します。


ダークプールを利用する際のメリット

  • 市場センチメントへの影響の低減-大口取引を希望するトレーダーは、その意図を一般の多くの投資家から隠すことができます。

  • 価格の改善-取引のマッチングは、利用可能な最良のビッド価格アスク価格の平均に基づいて行われるのが通例です。ここでは、買い手と売り手の双方にとって公開市場よりも有利な取引ができます(買い手はより安く購入でき、売り手はより高く売却できます)。

  • スリッページなし-ほとんどのダークプール取引は事前に決められた価格でブロック取引を行うため、トレーダーは意図した価格で取引全体を執行できます。

 

ダークプールをめぐる論争

  • 利益相反-オーダーブックが目に見えないため、取引が実際に最良の価格で執行されたという保証はありません。取引を仲介する機関に利益相反がある場合、実際の市場成行価格が曖昧にされる可能性があります。

  • 市場価格への悪影響-取引の大半がダークプールで行われる場合、公開取引所の価格に実際の市場価格が反映されていない可能性があります。投資や取引の大部分は情報の自由な流れに依存しているものの、ダークプールはこの自由な流れを妨げます。

  • 高頻度取引(HFT)に対する脆弱性-ダークプールは、高頻度取引トレーダーによる格好の略奪場所となり得ます。オーダーブックのデータに特権的にアクセスできる場合、大量の注文をフロントランニング(先回りして発注)でき、情報を持たない無防備なトレーダーを搾取できます。
    また、ダークプールでは、ピングと呼ばれる別の手法も利用されます。この手法は大量の小口注文を送信しオーダーブック内の流動性を測り、隠れた大口注文を割り出すものです。高頻度トレーダーに優位性を与えることになり、市場にとって有害ともいえます。

  • 平均取引サイズの縮小-1980年代の出現以来、ダークプールでの平均取引サイズは大幅に縮小しています。これは、大規模取引を行う金融機関だけがダークプールを利用しているわけではないことを示しています。このことにより、ダークプールの存在価値は著しく低下し、より広範な市場にとって有害となっている可能性もあります。より小口の注文が、オーダーブックが一般公開された取引所で執行されれば、より市場の健全化につながると言えます。


分散型ダークプール

従来の株式市場におけるダークプールと同様に、一部の取引プラットフォームでは暗号資産取引でのダークプールを利用できます。

通常のダークプールに比べ、分散型ダークプールはより安全なデジタル認証方法を採用しているという利点があります。また、分散型ダークプールのプロトコルにより価格操作の可能性が消え、すべての市場参加者に対して公正な市場価格を維持できます。

複数のブロックチェーンが関わる取引では、クロスチェーンのアトミックスワップを用いることで、仲介者を通さずに円滑に取引を進められます。

分散型ダークプールは、ダークプールトランザクションの完全性を認証するためにゼロ知識証明などの新しい暗号技術を採用することできます。

ダークプールは流動性の低い暗号資産市場でも有用であり、トレーダーはスリッページのない大口取引を実行できます。大口注文は流動性の低い市場に大きな影響を与える可能性がありますが、ダークプールでは同じ取引をスリッページなしで執行できます。

暗号資産分野には機関投資家のトレーダーが少ないため、ダークプールの暗号資産市場への影響はわずかなものとなっています。一方で、今後状況が変わる可能性があります。


まとめ

ダークプール登場以来、透明性の完全な欠如が議論の的となってきました。取引量の大部分を隠すことは、どの市場においても望ましいこととは言えません。

最近の暗号化認証手法の発展により、ダークプールの利用がより安全になる可能性があります。オープンソースのプロトコルでは、すべての参加者が同じルールを認証でき、ダークプール使用時のリスク軽減につながる可能性があります。