ビットコイントレジャリー戦略とは

ビットコイントレジャリー戦略とは

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更新済 May 27, 2025
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要点

  • ビットコイントレジャリー戦略は、企業が戦略的準備金にビットコインを追加するものです。

  • より保守的な方法で取り組む企業がある傍ら、保有するBTCをもとに、ビットコインの価格に紐付いた転換社債や利回り生成商品などの革新的な金融資産への投資を行う企業もあります。

  • 企業での戦略的ビットコイン準備金の活用により、資本効率の改善、インフレヘッジ、新たな投資機会の誘致が実現します。

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ビットコイントレジャリー戦略とは

企業財務を、貯金箱、つまり請求書の支払い、予期せぬコストの処理、新規プロジェクトの資金調達用に資金を保管するものと想定してみてください。ビットコイントレジャリー戦略とは、企業がその資金の一部を用い、現金、債券マネーマーケット資金などの従来型資産と並行して、またはその代わりとしてビットコイン(BTC)に投資することを指します。

Strategy、Tesla、GameStopなどの企業がビットコインをトレジャリーに追加し始めています。Strategy(旧MicroStrategy)は単体で、2025年5月時点で610億米ドル超に相当する57万6,230 BTCを保有しています。

企業がビットコイントレジャリー戦略を採用する理由

各企業が特定の財務目標および運営目標に取り組むに当たり、そのビットコイントレジャリー戦略を採用する理由は多岐にわたっています。主に挙げられる潜在的なメリットとして、グローバルな流動性の向上、価値の保存、資本成長などが挙げられます。

1. 流動性と柔軟性

世界中で同一の価値を持つ代替可能性、ならびに24時間年中無休で取引できる性質を持つビットコインからは、高い流動性と柔軟性が得られます。国際的に事業を展開する企業は、ビットコインの保有により、越境取引をスムーズに行えます。

2. インフレに対するヘッジ

ビットコインの供給量は2,100万に固定されているため、特に経済的に不安定な地域では、法定通貨の切り下げに対するヘッジとして有用であると広くみなされています。中央銀行が実施する政策によりインフレが生じ得る従来型通貨とは異なり、ビットコインの希少性は、独立した価値の保存手段となります。

3. 保有資産の多様化および投資としての可能性

企業はBTCの保有により、低利回りの債券や現金同等物以外の選択肢を持つこととなり、財務ポートフォリオを多様化できます。ビットコインの歴史的な価格上昇は、将来のパフォーマンスを保証するものではないものの、長期的な資本増価を求める企業にとって魅力的に映ります。例えば、Michael Saylor(マイケル・セイラー)氏がビットコイン中心のトレジャリー戦略に移行したことで、同社の企業価値が再評価されました。同社の時価総額の半分以上は、保有しているビットコインに連動しています。

4. 投資家の新規獲得

ビットコインのトレジャリーにより、直接的には暗号資産投資にアクセスできない企業が機関投資家の資本プールを利用できるようになります。BTCに連動した金融商品(ビットコインの価値に連動した転換社債や株式など)への投資により、企業は間接的に暗号資産に対するエクスポージャーを得ることができ、従来の投資家への訴求度が増します。

ビットコイントレジャリー戦略の仕組み

手順1:計画の立案

企業は、リスク許容度、キャッシュフローに対するニーズ、戦略的目標に基づき、保有するビットコインの数量を決定します。Strategyなどの企業では準備金の大部分をビットコインに割り当てている一方、Teslaなどの企業ではその時価総額と比較してビットコインの保有数量が少なくなっています。

手順2:ビットコインの購入

ビットコインを取得するために、企業は余剰現金を使用、借入したり、株式を売却したりするケースがあります。例えば、GameStopでは2025年3月、ビットコインの購入を目的に株式転換が可能な社債を売却したため、同社に投資家の関心が集まるとともにその株価が上昇しました。

手順3:安全性の確保

ビットコインの分散型の性質を踏まえると、安全性の高い保管方法が極めて重要となります。企業は通常、詐欺、盗難、ハッキングからビットコインを保護するため、定評あるカストディアンと提携しています。また、2025年に15億米ドル規模の損失を計上したBybitのハッキングにより、高度なセキュリティ対策の重要性が浮き彫りとなりました。

手順4:金融商品

ビットコインは、企業に財務上の新たな選択肢を提供します。ビットコインにより、転換社債や利回り担保証券など、ビットコインの価値と連動した新しい金融商品が誕生しました。これにより、主要なビジネスモデルを変更せずとも、企業株式に対する関心が高まる可能性があると言えます。

手順5:コンプライアンスの遵守

暗号資産に関するルールはまだ発展途上であるため、企業は常に規制を把握する必要があります。理想的には、企業は「時価会計」、つまり帳簿上でのビットコインの価値を定期的に更新する必要があると言えます。価格のボラティリティは、未実現損益につながるほか、収益や貸借対照表の安定性に影響を与える可能性があります。

潜在的なリスク

  • ボラティリティ:ビットコインの価格変動により、収益のボラティリティと流動性リスクが生じ得ます。採用戦略によっては、ビットコインの価格が急落した場合、企業の財務状況が逼迫する可能性があります。

  • セキュリティ:ビットコインにより国境を越えた流動性と柔軟性が提供されるものの、企業はハッキングや詐欺を防ぐために警戒を怠らないとともに、盤石な保管措置を講じる必要があります。

  • 本業からの逸脱:一部のケースでは、ビットコインへの過度の注力により、経営陣の関心とリソースが本来の中核事業から逸れ、企業の戦略的整合性に対する懸念が生じる可能性があります。

上場企業におけるビットコイントレジャリー戦略

以下は、ビットコインのトレジャリー戦略を採用してる上場企業の一例です。2025年5月時点で、50以上の上場企業が総額100 BTC以上を保有しています。

  • Strategy(MSTR):もともと分析ソフトウェア企業であったStrategyは、現在ではビットコインを主軸とする財務運用会社へと転換し、保有中のビットコインは576,230 BTC(630億米ドル相当超)に上ります。Strategyでは、投資家に対する暗号資産のエクスポージャーの提供に注力しています。

  • Marathon Digital Holdings(MARA):ビットコインマイニングと持続可能なエネルギーソリューションを専門とするMarathonは、48,100 BTC(50億米ドル相当超)以上を保有しています。

  • Riot Platforms(RIOT):ビットコインマイニングとビットコイン主導のインフラに特化したRiot Platformsは、この記事の執筆時点において19,200 BTC以上(20億米ドル相当超)を保有しています。

  • Tesla(TSLA):その規模と時価総額を踏まえると、Teslaでは保守的なアプローチを採用しており、保有中のビットコインは11,509 BTC(10億米ドル超)となっています。

まとめ

ビットコイントレジャリー戦略により、企業における資金運用のあり方が著しく変動しつつあり、現金準備金が資本創出、キャッシュフロー管理、投資家誘致の手段として活用される動きが広がっています。企業はビットコインに備わる独自の特性を活用することにより、インフレのヘッジ、準備金の多様化、新たな資本の呼び込みを実現できる可能性があります。暗号資産の普及が進む中、ビットコイントレジャリー戦略は、従来型の財務管理に代わる有望な選択肢となり得ます。

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