イントロダクション
安全資産について考える時、金や銀のような貴重な金属が思い浮かぶでしょう。これらは、伝統的な市場の混乱に対するヘッジとして個人が集める投資対象です。
価値の保存とは?
価値の保存ができる資産とは時間が経っても価値を維持できるもののことです。今日、良い価値の保存手段となる資産を買ったら、時間が経っても価値が減らないことを合理的に確信することができます。将来、その資産が同じぐらい(もしくはより高値で)の価値を持つことを期待できるでしょう。
そのような安全資産について考えたら、金や銀が思い浮かぶと思います。これらが伝統的に価値を持ってきたのにはいくつもの理由があり、ここではそれらを簡潔に見ていきます。
良い価値の保存手段の条件
食料品を例に考えてみましょう。リンゴとバナナには、人間が生きていくのに必要な栄養があるため、価値があります。食料品が希少な時、これらの商品の価値が高騰するのは疑いようもないです。でも、だからといって食料品が良い価値の保存と言うことはできません。倉庫に何年も食料品を置いていたら、その価値は間違いなく失われるでしょう。
以下の図で説明すると、1000億ドルの合計救急の25%、つまり250億ドルを持っていたとします。その後、政府が景気を刺激するために、追加で8000億ドル分の紙幣を印刷することを決めたとします。あなたの保有している割合は突然約3%にまで下落します。流通するお金が増えるため、あなたの保有分が以前よりも購買力が下がるのは当然です。
時間の経過による購買力の減少
前述のパスタのように、ドルの発行コストは高くないです。上記のようなことがいつ発生してもおかしくないです。良い価値の保存手段はマーケットへの流通が簡単には増えないようになっていないといけません。言い換えるならば、保有分の希釈がゆっくりと進むものでないと良い価値の保存手段にはなりません。
金を例にすると、その供給は有限です。また、掘るのもとても難しいです。そのため、たとえ金への需要が突然上昇しても、印刷機をフル稼働させるという話にはなりません。いつも通り、地面の中から掘ってこなければいけません。つまり、たとえ需要が増えたとしても、それに合わせて供給を増やすことはできません。
価値の保存手段としてのビットコイン
ビットコインを価値の保存手段と信じている人たちは、ビットコインが人間が知っている最も健全な資産の1つであると主張しています。この考えの支持者は、ビットコインは、時間の経過によって希釈されないので、価値を保存するための最良の方法であると信じています。
それでは、なぜビットコインは価値の保存として評価されているのでしょうか。
希少性
分散性
あなたがここで行ったのは、モナリザの写真を撮って、モナリザが2つあると主張するのと同じようなことです。このようなことをしたところで、自分以外の誰かを説得することはできないでしょう。
ビットコインにはある種の政府があると言いました。その政府はソフトウェアを実行している全ユーザーによって構成されています。ユーザーの大半が変更に合意しないとこのプロトコルを変更することはできません。
結局、自分の保有分を希釈するように求めるため、発行上限を引き上げるように大半のメンバーを説得することは非常に難しいでしょう。これまで、たとえ重要に見えなさそうな機能でさえもネットワーク全体での合意に達するまで何年もかかっています。
サイズが大きくなるにつれて、変更を実現するのはより難しくなります。そのため、ホルダーが発行上限が引き上げられないと期待するのは合理的です。このソフトウェアは人工的なものですが、ネットワークの分散性によって、ビットコインは恣意的に変更できるコードというよりも、天然資源のようになっています。
良いお金の特徴
価値の保存の支持者はビットコインは良いお金としての特徴を備えていると主張します。ビットコインは、ただの希少なデジタルリソースなだけでなく、伝統的に何世紀にもわたって通貨で採用されてきた特徴を持っています。
代替可能性
ビットコインの代替可能性は難しいテーマです。どのコインを持っているかは重要ではないべきです。多くの場合、1BTCは1BTCの価値しかないです。複雑になるのは、それぞれのユニットが過去のトランザクションと紐づけることができることを考慮する場合です。ホルダーが受け取ったビットコインが、犯罪行為に関与していると信じられているブラックリストに入っている企業の資金だった場合があります。
それは重要なことなのかと思うかもしれません。ドル紙幣で何かの支払いをしているとき、あなたも受取人も、3回前の取引でその紙幣がどこで使われたのか知りません。取引履歴という概念がないので、新品のお札は中古のお札よりも価値があるということもありません。
しかしながら、最悪のケースでは古い(より多くの取引履歴のある)ビットコインは新しいビットコインよりも安く売られる可能性があります。このシナリオをビットコインにとっての最大の脅威という人もいますが、一方でまったく問題ないと言う人もいます。とはいえ、これまでのところビットコインは代替可能なものとして機能しています。疑わしい履歴のせいで凍結されたコインはほとんど存在しません。
ポータビリティ
ポータビリティは持ち運びの容易さを意味します。10,000$分の100$紙幣や原油を移動させるのは非常に困難です。
優れた通貨は、小型である必要があります。なぜなら、個人が商品やサービスの対価をお互いに支払うことができるように、持ち運びが簡単である必要があるからです。
この観点でも金はこれまで素晴らしかったです。この記事を書いている時点で、標準的な金の価値はだいたい1,500$です。フルオンスの価値がある金を購入できることはないでしょうから、より小さい単位にすることで必要となるスペースも小さくなります。
10億ドル分の価値がある金(現在だと20トン以上)を移動させるには莫大な労力とコストがかかります。たとえ現金でも、大量の100$紙幣を運ばないといけません。ビットコインならば、同じ価値を1$以下のコストで世界のどこへでも送ることができます。
可分性
通貨に重要なもう一つの要素としては、小さな単位へ分割できることです。金の場合、1オンスコインを二等分することで半オンスの価値があるコインを2枚作ることができます。コインに描かれている、素晴らしい鷲やバッファローの絵を破壊することによってプレミアムを失うかもしれませんが、金の価値は変わりません。さらに、半オンスのコインをさらに分割して、さらに価値を細分化することもできます。
可分性はビットコインが優れているもう1つの分野です。発行上限は2100万枚ですが、それぞれをさらに1億分の1(satoshi)に分けることができます。これによって、ユーザーは小数点以下8桁までを送金額として指定できるため、よりトランザクションをコントロールすることができます。また、ビットコインの可分性によって、小口投資家にとってもBTCを購入しやすくなります。
価値の保存、取引手段と勘定科目の単位
ビットコインの現在の役割に関する意見は分かれています。ビットコインはA地点からB地点へ資金を移動させるためのツールであると多くの人は考えています。これについては次のセクションで詳しく説明をしますが、これは価値の保存の考え方を支持する人たちとは真逆の意見です。
SoV支持者はビットコインが究極の通貨となる前にこのステージに達しなければならないと主張します。ビットコインは集める価値のある物として始まり、ちゃんと機能し、安全であることは証明されてきましたが、小さなニッチ市場でのみ採用されてきました。その中心的なサポーターは主にオタクと投機家で構成されています。
もしも、これらのお金としての3つのマイルストーンが達成されたら、支持者はビットコインが現在使われている通貨を置き換えて、新しい標準になった未来が実現すると思っています。
ビットコインが価値の保存手段となるのに反対の意見
先のセクションで説明した主張は完全にロジカルに思う人もいますが、狂った意見だと思っている人もいます。ビットコインがデジタルゴールドというアイデアに対してはビットコイナー、暗号資産にそもそも疑問を持っている人たちの双方からたくさんの批判があります。
デジタルキャッシュとしてのビットコイン
この主張では、ビットコインはユーザーがコインとして使わない限りは価値を持たないとなっています。彼らは、ただビットコインを所有するだけでは、その普及に貢献しているのではなく、普及の妨げになっていると言います。もしも、ビットコインがデジタルキャッシュとして幅広く使われないならば、その核となる価値はユーティリティではなく、投機によるものと考える人達も多いです。
これらのイデオロギー的な相違によって、2017年に重要なフォークが発生しました。トランザクション手数料を下げるために、より大きなブロックサイズによるシステムを望んだ少数のビットコイナーがこのフォークを主導しました。オリジナルネットワークの利用が増えたため、トランザクションのコストが大幅に上昇し、少額の送金に使用する多くのユーザーにとって使えないシステムとなってしまいます。もしも、平均手数料が10$だった場合、3$の商品を購入するためにビットコインを使うのは合理的ではなくなります。
しかしながら、実際のところライトニングネットワークは完璧には程遠いです。一般的なビットコインのトランザクションの方がはるかに簡単に理解できるのに対して、ライトニングネットワークのチャネルとキャパシティの管理を理解するのは非常に大変です。ライトニングネットワークが合理的なのか、ソリューションの設計が抽象的なため、そもそも複雑すぎるのかはこれから判断されるでしょう。
ブロックスペースへの需要が高まっているため、混雑時にはオンチェーントランザクションはもはや安価なものとは言えなくなっています。そのため、ブロックサイズを拡大しないのはビットコインの通貨としての有用性を阻害していると主張する人達もいます。
本質的な価値がない
多くの人にとってはビットコインと金の比較はばかげています。金の歴史は、実質的に文明の歴史です。この貴金属は何千年も社会の重要な部分であり続けています。確かに、金本位制が終わったことでその優越性は少し失われましたが、それにも関わらず代表的な安全資産であり続けています。
たしかに、資産の王のネットワーク効果とまだ誕生して11年しか経っていないプロトコルのネットワーク効果を比較するのは背伸びをしているように見えるかもしれません。金は権力の象徴と工業用金属として数千年間ずっと崇拝されています。
その逆で、ビットコインにはネットワーク外では使用できません。ビットコインは電子機器のコンダクターやアクセサリーに使うことはできません。確かにマイニングや発行上限があるところなどは金と似ていますが、だからといってビットコインがデジタル資産である事実は変わりません。
ある程度では、お金とは共有された信仰です。ドルが価値があるのは、政府がそのように言っていて、社会がそれを受け入れているからです。金が価値があるのも全ての人がそれに同意しているからです。ビットコインもこれらと同様ですが、壮大なスキームにおいて小さなグループのみが価値を与えています。あなたのこれまでの人生で、多くの人が気づいていないものについて、説明しないといけない場面がたくさんあったと思います。
ボラティリティと相関関係
また、ビットコインと伝統的な市場との関係も考慮する必要があります。ビットコインの誕生からこれまで安定して価格は上昇してきました。他の全ての資産が下落している時に、暗号資産が安全資産となることができるかはまだ試されていません。ビットコイン支持者の人たちは他の資産との相関はないと主張するかもしれませんが、それは他の資産が下落する中、ビットコインの価格だけが安定するまでは確かめる方法はありません。
チューリップマニアとビーニーベイビー
両方の場合でも、投資家は希少だと思った商品を、誰かに転売して利益を出すことを望んで、購入しようと押しかけました。それらの商品自体は相対的に簡単に清算することができるので、そこまでの価値はありませんでした。バブルは、投資家が自分たちの投資における大幅な過大評価に気づいたときに崩壊し、チューリップやビーニーベビーの市場はその後崩壊しました。
繰り返しになりますが、ビットコインとこれらの事例の間には類似性はあまりありません。ビットコインの価値はユーザーの信頼に基づいていますが、チューリップとは異なり、需要を満たすためにそれ以上の数を増やすことはできません。しかし、投資家が将来的にビットコインが過大評価されているとは思えないことを保証するものは何もなく、投資家がそのように感じたら、ビットコインのバブルが崩壊する原因となります。
まとめ
ビットコインは確かに金のように価値の保存に必要な特徴の多くを持っています。発行数には上限が設定されており、ホルダーにセキュリティを提供するのに十分なほどネットワークは分散化されており、ビットコインを使って価値を保存したり、移転したりすることができます。
確かに、ビットコインは安全資産としての価値がまだ証明されていないので、確実に価値の保存に使えると言うには早すぎます。経済が混乱した時に世界がビットコインに逃げ込む世界、もしくはマイノリティなグループ内でのみ使い続けられる世界のどちらの可能性もあります。
時が経てば、どちらが正しいかはわかるでしょう。