概要
2023年6月に登場したFirst Digital(FDUSD)は、香港に本社を置く金融会社First Digital Limitedの子会社が発行する、準備金の裏付けを持つステーブルコインです。
FDUSDはEthereumとBNB Chainネットワーク上でローンチされ、将来的には他のブロックチェーン上でも発行される予定です。
FDUSDは、独立監査人による監査を受けた「準備金の証明」報告書を提出し、FDUSDが現金または現金相当資産での同等の価値によって完全に担保されていることを証明しています。
First Digital USD(FDUSD)とは
First Digital(ファーストデジタル、FDUSD)は、香港に本社を置く金融会社First Digital Limitedの子会社であるFD121 Limitedが発行するステーブルコインです。2023年6月に登場したFDUSDは、指定カストディアンであるFirst Digital Trust Limitedが準備金として保有する1米ドルまたは相当価値の資産によって裏付けされるものとしています。
すべてのFDUSD準備金は、香港の法律に基づいて登録された信託会社であるFirst Digital Trust Limitedが分別管理された口座に保管することが義務付けられています。つまり、FDUSD準備金は同社の他の資産と一緒にされることがないことを意味しています。また、準備金は現金または流動性の高い資産で保有することが義務付けられており、FDUSDの1対1の裏付けを確かなものとすると同社は説明しています。
FDUSDの発行者は、独立監査人による監査を受け、流通するFDUSDの供給がカストディ(保管)下にある現金または現金相当資産の同等価値によって完全に担保されていることを示す「準備の証明」報告書を公表しています。
FDUSDはローンチ時にEthereumとBNB Chainネットワーク上で発行されている一方、将来的には他のブロックチェーン上でも発行される予定です。すでに多くのステーブルコインが市場に出回っている中、FDUSDはステーブルコインの利用に関心を持つユーザーにとって分散投資としての新たな選択肢となることを目指しています。
FDUSDの利便性について
暗号資産は、法定通貨と比べより安全でプライバシーが保護されています。その上、より迅速なトランザクションおよび低い手数料を提供することで、支払い決済やその他のユースケースで多くの利点を提供できます。
FDUSDなどのステーブルコインは、安定した価値を維持するように設計されたデジタル固有の商品であり、従来の金融エコシステムと暗号資産市場の橋渡しとなります。より自由で効率的な資金の移動を可能にしながら、暗号資産の世界で法定通貨を使用を可能にするものです。
FDUSDの使用例
FDUSDには、以下のような様々な使用例があります。
1. 送金手段
FDUSDは迅速かつコスト効率の高いクロスボーダー取引に利用でき、安価な送金サービスの選択肢となります。従来の銀行送金や送金と比べ、FDUSDなどのステーブルコインでは手数料がはるかに低く、取引はより迅速に完了します。
2. 決済ソリューション
同様に、FDUSDは企業や個人により、より低い手数料で迅速な決済処理に使用され得ます。従来の決済方法では、通貨為替手数料に加え国際送金手数料が追加請求されることが多いため、特に国際取引においてこれは貴重なサービスとなります。
3. 価格変動に対するヘッジ
暗号市場のボラティリティを考慮すると、FDUSDは価格変動の激しい時期にヘッジや安定を保つための軸として使用され得ます。他の暗号通貨をFDUSDなどのステーブルコインに交換することで利益を確定し、極端な市場の変動から投資を保護することができます。
4. DeFi(分散型金融)での用途
他のステーブルコインと同様に、FDUSDは様々なDeFiアプリケーションを通じ、イールドファーミング、貸出、借入、ステーキングに使用できます。
FDUSDのリスクについて
FDUSDには、注意すべきリスク要因がいくつかあります。以下、いくつか例を挙げます。
1. ペッグ解除のリスク
FDUSDのペッグ(担保)メカニズムは、その準備資産があらゆる償還需要に対しいつでもFDUSDを額面での償還を維持できることを前提としています。したがって、準備資産の安全性と流動性が、FDUSDの安定性の鍵となります。FDUSDの準備金はサードパーティのカストディ(保管)下にあり、流動性の高い資産から流動性の低い資産までさまざまなものがあります。名目価値や額面でのタイムリーな償還など、発行者が主張するステーブルコインの機能を果たせない可能性がリスクとして存在します。
2. 運用上のリスク
FDUSDは、取引所やカストディサービス等のサードパーティのサービスに依存しており、また詐欺やサイバーリスクなども含め様々な運用リスクにさらされています。さらに、暗号資産の紛失や盗難に対する実質的な救済策が存在せず、利用者がさらなるリスクにさらされる可能性があります。
3. 規制上のリスク
現在、ステーブルコインの規制環境は不透明な部分が多いと言えます。法域によって規則は大きく異なり、かつ急激に展開するため、特定のFDUSDの運用に影響が発生する可能性があります。
4. カウンターパーティリスク
ステーブルコインの運用にはサードパーティの金融仲介機関が介在するため、カウンターパーティリスクにさらされています。ステーブルコインの発行者は、償還を容易にするために、取引所、マーケットメイカー、銀行、その他の送金業者に依存しているため、償還の遅れや、コストの増加につながる可能性があります。
まとめ
ステーブルコイン市場は、2023年半ばの時点では1000億ドル強であるものの、今後5年間で数兆ドル規模に成長すると予測されています。FDUSDは、興隆するステーブルコインの分野で数多い新規参入企業の中のひとつとなっています。
暗号資産の普及が進むにつれ、従来の金融機関も暗号資産界隈出身の企業も、ニッチ市場やターゲット利用者にあわせ、独自のステーブルコイン発行を検討するようになっています。このことは、利用者のニーズに合致する最適なステーブルコインの選択肢の幅が広がっていることを示唆しています。
しかし、ステーブルコインには多くの利点がある一方、リスクがないわけではありません。どのようなステーブルコインに投資する前にも、注意深く詳細な調査を行う必要があります。ステーブルコインのホワイトペーパー、準備金に関する報告書、監査結果、および関連する法的免責事項は、通常ステーブルコインの公式ウェブサイトで入手できます。
参考文献
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