ワイコフ方式とは?
ワイコフ氏の開発の多くは、他の成功したトレーダー(特にジェシー・リバモア氏)のトレーディング方法に触発されています。現在、ワイコフ氏は、チャールズ・ダウ氏やラルフ・N・エリオット氏など他の重要人物と同様に高く評価されています。
ワイコフ氏は広範な研究を行い、その結果、様々な理論とトレーディング技術を開発しました。この記事では彼の開発に関する概要を説明していきます。議論には以下が含まれます。
3つの基本法則;
コンポジットマンの概念;
チャート分析の方法論(ワイコフ図式);
市場への5段階アプローチ。
また、ワイコフ氏は、特定の売買テストとポイント&フィギュア(P&F)チャートに基づく独自のチャート方法を開発しました。テストは、トレーダーがベターなエントリーを発見するのに役立ちますが、P&F方式はトレーディングターゲットを定義する場合に使用されます。しかし、この記事ではこれら2つのトピック関する詳細な説明は行いません。
ワイコフの3つの法則
需給法則
第1の法則は、需要が供給を上回ると価格が上昇し、逆の場合は下落すると規定しています。これは金融市場の最も基本的な原理の1つであり、ワイコフ氏の開発に限定されるものではありません。第1の法則は以下の3つの簡単な方程式で表すことができます。
需要>供給=価格上昇
需要<供給=価格低下
- 需要=供給=大幅な価格変動なし(低ボラティリティ)
言い換えれば、第1の法則では、需要が供給を上回ると販売より購入の方が多くなり価格が上昇することを示唆しています。しかし、購入より販売の方が多い場合、供給が需要を上回り価格が下落する原因となります。
ワイコフ方式に従う多くの投資家は、需要と供給の関係をより可視化する方法として、価格行動とボリュームバーを比較しています。これにより、次の市場の動きに関する洞察を得ることができます。
原因効果の法則
第2の法則では、需要と供給の差はランダムではないと述べています。代わりに、特定の出来事の結果として、準備期間後に到来します。ワイコフ氏の用語では、累積(原因)の期間は、最終的に上昇トレンド(効果)をもたらします。対照的に、分布(原因)の期間は最終的に下降トレンド(効果)をもたらします。
ワイコフ氏は、原因の潜在的な影響を推定するために独自のチャート法を適用しました。要するに、累積期間と分布期間に基づいてトレーディングターゲットを定義する方法を考案しました。これにより、コンソリデーションゾーンやトレーディングレンジ(TR)を脱した後に、市場トレンドの拡大可能性を推定することを可能にしました。
努力 vs 結果の法則
第3の法則では、資産価格の変化は努力の結果であり、取引量によって表されるとしています。価格の動きが取引量と調和していればトレンドが継続する可能性が高くなります。しかし、取引量と価格が大きく異なる場合、市場のトレンドは停止するか、方向を変える可能性が高くなります。
コンポジットマン
ワイコフ氏は、市場の架空のアイデンティティとしてコンポジットマン(またはコンポジットオペレーター)という概念を開発し、投資家やトレーダーは、単一の企業が株式市場を支配しているかのように研究すべきだと提案しました。これにより、市場トレンドに沿って進行することが容易になります。
要するに、コンポジットマンは、富裕層や機関投資家といった最大のプレイヤー(マーケットメーカー)を代表しています。コンポジットマンは、安値で購入し高値で販売することを目的とし、常に自分の利益のために行動しています。
コンポジットマンの行動は、大多数の個人投資家の行動とは正反対で損失しているのをワイコフ氏は度々観察していました。しかし、ワイコフ氏によると、コンポジットマンはある程度予測可能な戦略を採用しており、投資家はそこから学ぶことができると述べました。
コンポジットマンの概念を使用し、市場サイクルを簡略化して説明していきます。このサイクルは4つの主要なフェーズ(累積、上昇トレンド、分布、下降トレンド)から構成されています。
累積
コンポジットマンは、大半の投資家より先に資産を累積します。この段階では通常、横方向の動作によって特徴づけられます。累積は、価格が大きく変動しないよう徐々に積算していきます。
上昇トレンド
コンポジットマンが十分な株を保有していて、販売の力が枯渇してくると、市場を押し上げ始めます。当然、新興のトレンドは投資家を引き付け需要を増加させます。
注目すべきは、上昇トレンドの間に複数の累積フェーズが存在する可能性があることです。大きなトレンドが上昇を持続する以前に、一時的に停止し固まっていくようなフェーズを再累積フェーズと呼ぶこともあります。
市場が上昇すれば、他の投資家も購入を推奨します。最終的には、一般の人々も熱意を込めて参加するようになります。この時点では、需要が供給を上回っています。
分布
次に、コンポジットマンは保持している株の分布を開始します。利益を計上しているポジションを、後期に参入する人々に販売します。通常、分布段階では、需要が枯渇するまで需要を吸収する横方向の動作によって特徴付けられます。
下降トレンド
分布段階後、市場は下降トレンドに戻り始めます。つまり、コンポジットマンは大量の株式を販売後、市場を押し下げ始めます。最終的には、供給が需要をはるかに上回り、下降トレンドが確立されます。
ワイコフ方式の図式
累積と分布の図式は、ワイコフ氏の開発の中で最も人気のある部分と思われます。これらのモデルは、累積(Accumulation)フェーズと分布(Distribution)フェーズをより小さなセクションに分割します。セクションは5つのフェーズ(A~E)に分割されており、複数のワイコフイベントとともに、以下で簡単に説明していきます。
累積図式
フェーズA
販売力が低下し、下降トレンドが減速し始めます。この段階では通常、取引量が増加します。事前サポート(PS)は、一部の購入者が現れていることを示していますが、下降トレンドを停止するにはまだ不十分であることを示しています。
セカンダリーテスト(ST)は、その名の通りSC付近でマーケットが下落した場合に、下降トレンドが確実に終了したのかをテストします。この時点では、取引量と市場のボラティリティは低い傾向にあります。STは度々、SCに関連して高い低値を形成しますが、必ずしもそうとは限りません。
フェーズB
ワイコフ氏の原因効果の法則に基づいて、フェーズBは効果につながる原因と推測することできます。
また、フェーズBでは多数のセカンダリーテスト(ST)が実施される場合があります。いくつかのケースで、フェーズAのSCとARに関連してより強気の罠(ブルトラップ)と弱気の罠(ベアトラップ)を示す場合があります。
フェーズC
典型的な累積フェーズCは、スプリングと呼ばれるものが含まれています。それは、市場がより高い低値の作成前に最後のベアトラップとして機能します。フェーズCの間、コンポジットマンは市場に残存している供給が少量なこと、つまり、販売されるはずだったものはすでに供給されていました。
しかし、場合によっては支持線が維持され、スプリングが発生しないことがあります。要するに、他のすべての要素を提示しながら、スプリングが発生しない累積図式が存在する可能性があります。それでも、全体的なスキームは引き続き有効です。
フェーズD
フェーズDは、原因と結果の間の推移を表します。累積ゾーン(フェーズC)とトレーディングレンジのブレイクアウト(フェーズE)の間に位置します。
少々紛らわしい用語にもかかわらず、フェーズDの間には複数のLPSが存在する可能性があります。場合によっては、価格が小さなコンソリデーションゾーンを形成してから、大きな取引レンジを効果的に破り、フェーズEに移行することもあります。
フェーズE
フェーズEは、累積図式の最終段階です。それは、市場需要の増加に起因するトレーディングレンジの明らかなブレイクアウトを特徴とします。これはトレーディングレンジが事実上崩壊し、上昇トレンドが開始する時です。
分布図式
基本的に分布図式は累積とは反対の方法で動作しますが、用語は少し異なります。
フェーズA
フェーズAは、確立された上昇トレンドが需要の減少により減速し始めるときに発生します。予備供給(PSY)は、販売圧力が発生していることを示唆していますが、上昇トレンドを停止させるにはまだ不十分です。バイイングクライマックス(BC)は集中的な購入活動によって形成されます。これは通常、経験の浅いトレーダーが感情から購入してしまうことによって引き起こされます。
次に、強い上昇の動きは自動応答(AR)を引き起こし、過剰な需要は市場メーカーに吸収されます。つまり、コンポジットマンは自身の保有株を後期の購入者に分布し始めます。セカンダリーテスト(ST)は、市場がBC地域を再訪した場合に発生し度々、低い高値を形成します。
フェーズB
フェーズBは、下降トレンド(効果)に先行するコンソリデーションゾーン(原因)として機能します。このフェーズの間、コンポジットマンは徐々に資産を販売し、市場の需要を吸収して弱体化させます。
通常、トレーディングレンジの上限と下限が複数回テストされ、短期的なベアトラップやブルトラップが行われる場合もあります。状況により、市場はBCによって作成された抵抗線を超えて移動し、その結果、アップスラスト(UT)とも呼ばれるSTが発生します。
フェーズC
様々なケースでは、市場はコンソリデーション期間後に最後のブルトラップを提示します。これはUTADまたはスラストアップ後の分布と呼ばれています。基本的には累積スプリングの反対です。
フェーズD
分布のフェーズDは、累積フェーズとほぼ同様です。通常は、レンジの中央に最後の供給ポイント(LPSY)があり、低い高値を作成します。この時点から、サポートゾーンの周囲または下に新しいLPSYが作成されます。市場が支持線を下回ると、明らかな弱さの兆候(SOW)が現れます。
フェーズE
分布の最終フェーズは下降トレンドの開始を示し、需要に対する供給の強い優位性により、トレーディングレンジを明らかに下回ります。
ワイコフ方式は有用なのか?
当然、市場は常にこれらのモデルに正確に従うとは限りません。実際には、累積図式と分布図式は、様々な方法で発生する可能性があります。状況によっては、フェイズBが予想よりも長く継続する場合もあります。また、スプリングテストとUTADテストが全く存在しない場合もあります。
ワイコフ方式の5段階アプローチ
また、ワイコフ方式は、彼の多くの原則とテクニックに基づいて、市場に対する5段階のアプローチを開発しました。要するに、このアプローチは、彼の教えを実践に移す方法と推測できます。
現在のトレンドはどのようなもので、どこに進行する可能性が高く、需要と供給の関係はどうなっていますか?
その資産は市場と比べてどのくらい強く、同様な動作をしていますか?それとも反対ですか?
ポジションを入力するのに充分な理由がありますか?潜在的な報酬(効果)がリスクに見合う価値があるほど原因は強力ですか?
資産を移動する準備はできていますか?より大きなトレンドの中でのポジションはどうですか?価格と数量はどれくらいですか?このステップでは、多くの場合、ワイコフ氏の売買テストを使用します。
最後のステップは、タイミングに関するすべてになります。通常、一般市場と比較して株式を分析する必要があります。
例えば、トレーダーはS&P500指数との関連で株価の動きを比較することができます。個々のワイコフ図式内のポジションに応じての分析は、資産の次の動作への洞察を提供する場合があります。最終的には、良いエントリーの確立を容易にします。
まとめ
ワイコフ方式は、開発からほぼ1世紀が経過しましたが、現在も広範囲に使用されています。これは、多くの原則、理論、取引手法を包含しており、TAインジケーターよりもはるかに数多いものです。
要するに、ワイコフ方式は、投資家が感情に任せて行動するのではなく、より論理的な意思決定をすることを可能にします。ワイコフ氏の広範な開発は、トレーダーや投資家のリスクを軽減し、成功の可能性を高めるための一連のツールを提供しています。しかし、投資に確実なテクニックは存在しません。特にボラティリティの高い仮想通貨市場では、常にリスクに注意する必要があります。