M2の概要と市場との関係について

M2の概要と市場との関係について

中級者
公開済 Apr 8, 2025更新済 Apr 10, 2025
7m

要点

  • M2(マネーサプライ)は、経済の中でどれだけの金額が流通しているかを測定する方法である。これには、現金や当座預金口座の預金など、人々が日常的に使用するお金が含まれる。

  • また、頻繁には利用されないが比較的すぐに利用できる普通預金口座やマネーマーケットファンドなども含まれる。

  • M2は、経済学者や政策立案者が消費や投資に利用され得る資金の量を把握する重要な経済指標である。

M2とは?

M2(マネーサプライ)は、経済に流通しているお金の総量を測定する方法です。これには、現金や当座預金(M1)などの流動性の高い資金だけでなく、普通預金、定期預金、マネーマーケットファンドなどの流動性の低い資産も含まれます。

経済学者、政府関係者、投資家は、経済の健全性を把握するためにM2に着目します。市場に資金が大量に流通していれば、人々や企業による消費は増える傾向があります。利用できる資金が少なければ、消費は当然減速します。

M2の構成要素

米国連邦準備制度は、現金、当座預金、普通預金など、複数の要素を用いてM2を算出しています。また、譲渡性預金(CD)や現金に簡単に交換できるその他の資産も含まれます。

1. 現金および当座預金(M1とも呼ばれる)

これは最も基本的で流動性の高いお金の形態です。以下のものが含まれます。

  • 物理的な貨幣(硬貨と紙幣)

  • デビットカードや小切手により使用される当座預金口座のお金

  • トラベラーズチェック(今日では一般的ではなくなったものの、M1に含まれる)

  • その他の小切手対応預金(OCD)小切手やデビットカードでの支払いに利用できる流動性の高い口座。

2. 普通預金口座

すぐに必要とされないお金を預ける銀行口座が該当します。通常、普通預金口座には利息がつきますが、引き出しの頻度に制限が設定されていることもあります。

3. 定期預金

CD(譲渡性預金)とも呼ばれます。一定期間銀行に資金を預けることに同意し、その対価として銀行から利息が支払われます。これらの預金は通常、10万ドル未満となっています。

4. マネー・マーケット・ファンド

安全な短期投資向け投資信託の一種です。通常、普通預金口座よりも高い利息が付きますが、資金使途に制限があります。

M2の仕組み

M2は、簡単に現金に交換できる資金を含めた、経済で利用可能な総資金量を反映しています。M2が増加している場合、利用可能な資金が増加していることを意味します。預金を増やしたり、借金を増やしたり、収入が増えていると捉えられます。結果、消費、投資、ビジネス活動の拡大につながること多くなります。

M2が縮小または拡大が鈍化すれば、消費の減少や預金の増加につながる可能性があります。流通するお金が減ると、景気は減速する傾向にあります。企業の収益は減少し、失業率が上昇する可能性があります。

M2に影響を与える要因

1. 中央銀行の決定

中央銀行は金融政策を通じて金利を管理し、銀行に義務付けられた銀行の準備金保有額を設定します。FRBが金利を下げると、借入が安くなり、人々や企業がローンを利用しやすくなり、M2が増加します。

2. 政府支出

政府が景気刺激策として給付金の支給や公共支出を増加させると、マネーサプライは増加します。政府が支出の削減や増税を実施すると、その逆が当てはまります。

3. 銀行融資

銀行が融資を増やすと、お金が生み出され、経済に上乗せされ、M2が増加します。銀行が融資を減らすと、M2の伸びが鈍化、また縮小します。

4. 消費者と企業の動向

人々や企業が預金を増やし、消費を減らせれば、資金は流通せずに普通預金口座に滞留します。その結果、M2の伸びが鈍化する可能性があります。

M2とインフレーション

利用可能な資金が増えると、人々や企業はより消費を増加させる傾向があります。この消費が経済の財やサービスの生産能力を超えて増加すると、価格が上昇し、インフレが発生します。

一方、M2の成長が止まり、縮小に転じると、インフレは減速する可能性があります。しかし、過度に縮小すると、経済の減速や景気後退につながる可能性もあります。

そのため、中央銀行や政策立案者はM2を慎重に監視します。M2が急速に増加している場合、経済を冷やすために金利を引き上げる可能性があります。逆に、過度に縮小が進んでいる場合、消費と借入を促進するために金利を引き下げる可能性があります。

M2が金融市場に与える影響

M2は、暗号資産、株式、債券、金利など、金融市場に大きな影響を与えます。

暗号資産

M2が上昇し、金利が低い場合、一部の投資家はより高い収益を求め、暗号資産に資金を移動させる可能性があります。金融緩和局面では、暗号資産価格はしばしば上昇します。しかし、M2が縮小し、借入コストが上昇すると、暗号資産などのリスク資産から資金が引き上げられ、価格が下落する可能性があります。

株式

M2の株式への影響も暗号資産市場と同様です。M2の増加は、取引や投資に使える資金が増え、株価が上昇する傾向があります。M2が鈍化するか縮小すると、市場は下落する可能性が高まります。

債券市場

債券は一般に安全な投資と見なされています。M2が増加し、金利が低い場合、投資家はより確実な収益を求めるため、債券は通常より魅力的な投資先となります。M2が縮小し、金利が上昇すれば、債券価格の下落が予想されます。

金利

金利は、M2と逆の動きをすることが多いと言えます。M2が急速に増加すると、中央銀行はインフレを抑制するために金利を引き上げます。M2が過剰に縮小すると、消費と借入を支援するために金利を引き下げます。

実例:COVID-19とM2

COVID-19の感染が拡大する中、米国政府は景気刺激策として給付金を支給し失業手当を増額させ、連邦準備制度は金利を引き下げました。これらによりM2の大幅な増加につながりました。

2021年初頭までにM2は前年比で約27%増加し、過去最高の増加率を記録しました。しかし、2022年、FRBがインフレ対策として金利を引き上げたため、M2の伸びは鈍化し、2022年後半にはマイナスに転じました。この縮小は、経済の冷え込みとインフレ率の低下を示唆するものとなりました。

M2の重要性

M2は、経済を理解する上でシンプルかつ強力なツールです。M2が急速に増加する場合、インフレの到来を意味します。M2が縮小していれば、成長が鈍化したり景気後退に入る可能性があります。

金利、税金、支出に関する決定を下す際、M2が指針として参考にされます。投資家もM2を監視し、市場の方向性を予測します。

まとめ

M2は単なる数字ではありません。経済システム内ですぐに利用可能な資金量を示したものです。日常的に使用される現金や当座預金に加え、預金やCDなどの準通貨が含まれます。

M2を監視することで、経済の方向性を理解できます。M2の急速な増加は雇用や消費の増加をもたらしますが、価格の上昇も引き起こす可能性があります。M2の鈍化はインフレ抑制になる可能性がありますが、事業活動の減速にもつながります。

関連記事

免責事項:このコンテンツは、一般的な情報および学習機会の提供目的でのみ「現状有姿」で提供するもので、いかなる種類の表明または保証もありません。投資、法律、またはその他の専門的なアドバイスとして解釈されるべきではなく、特定のプロダクトやサービスの購入を推奨するものでもありません。適切な専門アドバイザーから独自のアドバイスを求める必要があります。こちらで紹介しているプロダクトは、お住まいの地域ではご利用いただけない場合があります。記事が第三者の貢献者によって寄稿されたものである場合、表明された見解は第三者の貢献者に属し、必ずしもバイナンスアカデミーの見解を反映するものではありません。詳細は、免責事項全文をお読みください。デジタル資産価格は、大幅に変動する可能性があります。投資価値が上下する可能性があり、投資した金額を取り戻すことができない場合があります。投資決定についてはお客様が単独で責任を負い、バイナンスアカデミーはお客様が被る可能性のある損失について責任を負いません。この資料は、投資、法律、またはその他の専門的なアドバイスとして解釈されるべきではありません。詳細は、利用規約およびリスクに関する警告をご参照ください。