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指数平滑移動平均線(EMA)

指数平滑移動平均線(EMA)

初心者

EMAとは

指数平滑移動平均(EMA)は、テクニカル分析において一定期間の資産の値動きを追跡するツールです。単純移動平均(SMA)とは異なり、EMAは直近の価格データに比重をかけることで、短期的な市場変動に対してより敏感に反応するようになっています。
EMAでは、加重移動平均(WMA)と同様に、より直近のデータに比重がかけられています。EMAでは指数関数的に、WMAでは直線的に比重がかけられている違いがあります。

EMAの計算方法

前述のとおり、EMAは指数関数的に直近の価格データに比重がかけられています。EMAはさまざまな時間軸に適用できる中、ここでは日足を各時間軸として設定して説明します。EMAは、以下の数式で計算されます:

EMA=(終値-前回のEMA)×乗数+前回のEMA 加えて、以下の条件が考慮されます。
  • 終値はその期間(ここでは1日)の最後の取引価格とする。つまり、日足チャートであれば、ローソク足の日足の終値が該当。当日の時間がまだ終了せず終値が確定していない場合、代わりに前日の終値を使用します。
  • 前回のEMAとは、前の期間、この場合は前日のEMAの値とします。それまでのEMAが存在しない場合、単純移動平均(SMA)を使用します(以下の例を参照)。
  • 乗数=2÷(n+1)とし、これは平滑化定数になります。値は、使用する期間の数値(n)によって決まります。

EMAの実例

10日間のEMAの計算例を取り上げます。前日のEMAが存在しない場合、最初にSMAを計算します。

1. まずSMAを計算。

1日目から10日目までのそれぞれの終値が50、57、58、53、55、49、56、54、63、64であると仮定します。

計算式は次のとおり:

SMA=(50+57+58+53+55+49+56+54+63+64)÷10=55.9

2. 乗数を決定。

乗数=2÷(10+1)​=2÷11=0.1818

3. EMAを計算。

11日目の終値を60とします。EMAの計算式にまとめると、以下のようになります。

EMA=(60-55.9)×0.1818+55.9=56.64

この例では、10日間のEMAは$56.64になります。このEMAは、翌日のEMA計算で前日のEMA値として使用できます。

暗号資産取引におけるEMA

暗号資産取引では、EMAは市場トレンド、反転の特定、またクロスオーバーシグナルとして利用されます。

1. トレンドの特定。EMAを利用して、市場トレンドの方向を特定します。EMAの上昇は上昇トレンド、EMAの下降は下落トレンドを示唆しています。
2. EMAクロスオーバー戦略:短期EMA(例:10日)と長期EMA(例:50日)の2つのEMAを利用します。短期EMAが長期EMAを下から上にクロスすると買いシグナル、短期EMAが長期EMAを上から下にクロスすると売りシグナルとみなします。
3. EMAとSMA:EMAとSMAを組み合わせることで、市場のトレンドと反転の可能性をより的確に把握できます。EMAは短期的な変動により敏感であるため、誤ったシグナルを発生させる場合があります。EMAとともにSMAを利用することで、発生したシグナルをより確実に確定できます。EMAの数期間後にSMAで同じシグナルが発生すると、そのシグナルの信憑性が高まります。
4. 価格とEMAのクロスオーバー:市場価格がEMAを上向きまたは下向きにクロスするタイミングに注目します。価格がEMAを下から上にクロスした場合は買い、価格がEMAを上から下にクロスした場合は売りのタイミングとして活用できます。

まとめ

EMAは、直近の価格データに比重をかけるテクニカル分析ツールで、市場トレンドをより敏感かつ正確に捉えます。暗号資産取引では、EMAはトレンド、反転タイミングの発見、およびクロスオーバーシグナルとして活用できます。ただし、他のテクニカル分析インジケーターと同様、正確性が保証されるものではありません。リスクを軽減するために、複数のテクニカル分析インジケーターと組み合わせて利用されることが多くなっています。