World Liberty Financial USD(USD1)とは

World Liberty Financial USD(USD1)とは

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更新済 May 23, 2025
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要点

  • 2025年3月、World Liberty Financial Inc.(WLFI)では、米ドルにペッグされた新しいステーブルコインであるUSD1をローンチしました。

  • World Liberty Financial Inc.(WLFI)とは、ドナルド・トランプ米大統領から着想を得たDeFiです。

  • 機関投資家と個人投資家の両方に訴求するように開発されたUSD1では、信頼性の高い準備金により裏付けられた安定性の高いデジタル資産の提供により、従来型金融とDeFiを橋渡しすることを目指しています。

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USD1とは

USD1とは、米ドルとの1対1でのペッグを維持するように設計された、法定通貨担保型のステーブルコインであり、USD1トークンは米ドルと等価でに償還できる仕組みとなっています。World Liberty Financial Inc.により発行されたUSD1は、機関投資家、(その他の)投資家、個人投資家向けにシームレスかつ安全な越境取引を提供できるように設計された、「機関投資家による採用に応える」ステーブルコインとして訴求されています。同プロジェクトは、現時点ではイーサリアムおよびBNBチェーンネットワークのみに対応しているものの、今後は対応ブロックチェーンをさらに増やす予定となっています。

World Liberty Financial Inc.(WLFI)とは

World Liberty Financial Inc.(WLFI)とは、ドナルド・トランプ米大統領から着想を得たDeFiプロトコルおよびガバナンスプラットフォームです。USD1の発行者であるWLFIは、その運用、準備金管理、戦略的提携を担当する一方、従来型金融とDeFiの橋渡しとなることを掲げる同プラットフォームのミッションにおいてUSD1を主要な構成要素として位置付けています。

USD1の仕組み

ステーブルコインの準備金は、米国短期国債、米ドル預金、その他の現金同等物により完全に裏付けられています。これらの資産の管理は、世界中の何千人もの機関投資家に対してサービスを提供していることで知られる、著名デジタル資産セキュリティプロバイダーおよびカストディプロバイダーのBitGoが担当しています。同社におけるプライムブローカーサービスであるBitGo Primeも、規制枠組みに基づく深い流動性と取引機能の提供により、USD1を支援しています。

法定通貨に裏付けられた安全性の仕組み

法定通貨担保型のステーブルコインとして動作するUSD1は、Tether(USDT)やCircle(USDC)などの確立されたステーブルコインと同一のカテゴリに分類されます。その仕組みは、同ステーブルコインの価値を可能な限り1米ドルに近づけるために、現実資産の準備金に依存するものとなっています。

USD1の場合、その準備金の裏付けには米国短期国債、米ドル預金、その他の現金同等物が含まれており、安全性を確保するための保守的な基盤が提供されます。複雑な仕組みを使用してペッグを維持するアルゴリズム型ステーブルコインとは異なり、USD1ではリスクを最小限に抑えるためにシンプルさを優先した設計となっています。

1対1のペッグにより、ユーザーはUSD1トークンと米ドルを発行者から直接償還できます。これにより、価格の安定性を維持するのに役立つアービトラージ(裁定取引)の機会が提供されます。例えば、USD1の市場価値が$1を下回った場合、トレーダーがこれを割引価格で購入して$1で償還すると、その差額から収益を獲得できます。この仕組みは、USDCおよびUSDTの運用モデルを反映したものであり、トークン価値の米ドルとの密接な関連性を確保するものです。

ブロックチェーンの統合とカストディ

USD1は当初、イーサリアムおよびBNBチェーン上でミントされていました。同プラットフォームでは、高速、安全、透明なトランザクションの実行が実現しており、多様なユーザーがUSD1にアクセスできる環境となっています。WLFIは他のブロックチェーンに対応を拡大する計画を立てており、今後トークンの相互運用性とDeFiエコシステム内でのリーチが拡大する可能性があります。

USD1の準備金のカストディアン(保管者)であるBitGoは、セキュリティを確保する上で重要な役割を担っています。デジタル資産の主要なカストディアンであるBitGoでは、ステーブルコインの担保資産に対する保険付き・規制準拠型のストレージを提供しています。

市場パフォーマンス

2025年3月のローンチ以来、USD1の時価総額はわずか1か月余りで21億米ドルを突破しました。大口の機関投資家との取引が主な要因となった急激な拡大により、USD1は史上最も急成長しているステーブルコインとしての地位を確立しました。

2025年4月に開催されたToken2049カンファレンスにおいて、WLFIの共同創設者であるZach Witkoff(ザック・ウィトコフ)は、アブダビのMGXとバイナンス間の20億米ドル規模の投資を推進するためにUSD1が採用されたことを発表しました。この独占契約により、USD1の機関投資家への訴求力が浮き彫りとなるとともに、その時価総額が急増することとなりました。

覚えておくべき点

準備金の透明性欠如

USDCやUSDTなどのステーブルコインでは、その資産および負債が記載された定期的な証明書を発行しています。2025年5月時点では、USD1の準備金構成に関する公開情報はありません。WLFIでは、USD1が100%準備金により裏付けられていることを証明するため第三者による定期的な監査を実施しているものの、現在の準備金構成に関する情報の不在が一部の投資家にとっての懸念材料となっています。

政治的なつながり

USD1のWLFIを通したドナルド・トランプ米大統領およびその家族とのつながりは、政治的な偏向性があるとの印象につながっています。WLFIでは、USD1の成功は、個々の政治家ではなく米国経済全体と結び付いていると強調しているものの、特に政治的バイアスの認識を警戒するユーザーや機関投資家による採用に影響する可能性があると言えます。

ステーブルコインエコシステムにおけるUSD1

USD1は、USDTおよびUSDCがその確立された実績と個人投資家における広範な採用により顕著な市場シェアで支配する、競争の激しいステーブルコイン市場に参入しました。USD1では、強いプレゼンスにつながる提携(バイナンスとMGXの提携など)を通して信頼性を構築することにより機関投資家をターゲットに据えている点で、他のステーブルコインとの差別化を図っています。また、複雑な利回り生成の仕組みを持たないその保守的な準備金戦略は、安定性と安全性に対する機関投資家の需要と一致しています。

バイナンスにおけるUSD1の上場

2025年5月22日、バイナンスではUSD1の上場を発表しました。この発表の後、USD1ステーブルコインがバイナンス現物市場に上場し、USDTペアでの取引が開始しました。

まとめ

2025年3月にWorld Liberty FinancialがローンチしたUSD1は、米ドルとの1対1のペッグを維持できるように設計された法定通貨担保型ステーブルコインです。米国短期国債により裏付けられ、BitGoが保管を担当するUSD1は、イーサリアムおよびBNBチェーン上で動作します。同ステーブルコインでは今後、対応ブロックチェーンの種類を増やす予定となっています。

個人投資家による広範な採用が特徴であるUSDTおよびUSDCとは異なり、USD1では機関投資家向けのユースケースを優先しています。バイナンスとMGX間の提携では、金融業界における主要なプレーヤーの採用推進のための強いプレゼンスとなる提携を確立するWLFIの戦略が見て取れます。

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