仮想マシン(VM)とは

仮想マシン(VM)とは

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更新済 Jul 9, 2025
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要点

  • 仮想マシン(VM)は、ハードウェアを追加せずに、同一のデバイス上で異なるオペレーティングシステムやアプリケーションを実行できる技術である。

  • 仮想マシンは、新しいソフトウェアの安全性のテスト、他のシステムの試用、あるいは潜在的なリスクを伴うプログラムの隔離に適している。

  • イーサリアム仮想マシン(EVM)をはじめとする仮想マシンでは、世界中のコンピューターネットワーク上でスマートコントラクトや分散型アプリケーション(dApp)が確実に処理されるようになる。

  • 仮想マシンは柔軟性と制御性を提供する一方で、パフォーマンスの低下や大量のリソース消費、運用の複雑さとの間での妥協点が求められる場合がある。

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はじめに

MacBookでWindowsを使ってみたい、あるいはOSを切り替えたり別のパソコンを買わずにLinuxアプリを試したいと思ったことはありませんか?仮想マシン(VM)はこれを実現するようなもので、異なるOSやアプリケーションを安全に動作させる独立した環境を構築できます。また、スマートコントラクトや分散型アプリケーション(dApp)を運用するブロックチェーンネットワークでも広く活用されています。

VMとは?

VM(仮想マシン)は、数回のクリックで簡単にセットアップできる仮想コンピューターのようなものです。ハードウェアを追加する必要はありません。VM上では、OSのインストール、ファイルの保存、アプリの実行、インターネットへの接続が可能ですが、これらは実際には既存のコンピューター(ホスト)内で動作しています。

ホストシステムは、VMにメモリや処理能力、ストレージを貸し出し、裏側でこうした負荷の高い処理を行っています。これは、他のOS向けのソフトウェアを使用する際に、とりわけ便利です。

VMの仕組み

裏側では、ハイパーバイザーと呼ばれるソフトウェアがこれらすべてを管理しています。ハイパーバイザーは、中央演算処理装置(CPU)、メモリ(RAM)、ストレージなどのコンピューターの物理リソースを分割し、複数のVMが同時に使用できるようにします。

ハイパーバイザーには、主に2つのタイプがあります。

  • タイプ1(ベアメタル):ハードウェアに直接インストールされ、データセンターやクラウドプラットフォームでよく利用される。パフォーマンスと効率性に優れている。

  • タイプ2(ホスト型):通常のOS上でアプリのように動作し、テストや開発に適している。

VMの設定が完了すると、実際のコンピューターのように起動でき、ソフトウェアのインストール、ウェブ閲覧、アプリケーションの開発などに利用できます。

VMの用途

1. 新しいOSのテスト

VMを使えば、メインのコンピューターに影響を与えずに、さまざまなOSを試運転できます。安全で独立した空間で新しいシステムを試すようなものです。

2. リスクを伴うソフトウェアの隔離

不審なファイルを開いたり、見慣れないアプリをテストする必要がある場合、VM上で実行すればメインのコンピューターを保護できます。もしマルウェアが埋め込まれていたりシステムがクラッシュしたりしても、メインのコンピューターには影響はありません。

3. 古いソフトウェアや利用できないソフトウェアの実行

一部のプログラムは、Windows XPのような古いシステムでしか動作しません。VMはその環境を再現できるため、最新のデバイスで動かないソフトウェアも使い続けられます。

4. 複数プラットフォームでの開発・テスト

VMを使うことで、開発者は異なるOS上で簡単にコードをテストでき、さまざまな環境でアプリケーションの動作をシミュレーションできます。

5. クラウドの基盤として

多くのクラウドサービス(AWS、Azure、Google Cloudなど)は、VMを基盤に構築されています。クラウドインスタンス(クラウド上で起動される仮想サーバー)を起動すると、リモートのデータセンターでVMが立ち上がり、ウェブサイトやアプリ、データベースのホスティングが可能になります。

ブロックチェーンネットワークにおけるVMの活用

従来のVM(仮想マシン)が独立したサンドボックス環境(他のシステムから隔離された安全な実行環境)であるのに対し、ブロックチェーンの仮想マシンはスマートコントラクトを実行するエンジンとして機能します。例えば、イーサリアム仮想マシン(EVM)は、SolidityやVyper、Yulといった言語で開発されたスマートコントラクトをイーサリアムやその他のEVM互換ネットワーク上で実行・デプロイ(展開)できる環境を提供します。EVMにより、スマートコントラクトの作成や操作において、ネットワーク上のすべてのノードが同一のルールに従うかどうか確認できます。

ブロックチェーンネットワークは、それぞれの設計目標に基づいて独自の仮想マシン(VM)を実装しています。速度やスケーラビリティを重視するネットワークもあれば、セキュアで柔軟な環境を目指すネットワークもあります。NEARCosmosなどのネットワークは、WebAssembly(WASM)ベースのVMを採用しており、複数のプログラミング言語で書かれたスマートコントラクトに対応しています。

一方、Suiなどのブロックチェーンネットワークは、Move言語で書かれたスマートコントラクトを実行するMoveVMを採用しています。ソラナブロックチェーンは、ソラナ仮想マシン(SVM)と呼ばれる独自のランタイムを採用し、並列処理により大量のネットワークトランザクションに対応しています。

仮想マシンの実際の役割

実感されることはないかもしれないものの、分散型アプリケーション(dApp)を操作するたびに、仮想マシン(VM)が裏で動作しています。

  • 例えば、Uniswapなどの分散型金融(DeFi)アプリでトークンをスワップ(交換)する場合、トランザクションはEVM内で動作するスマートコントラクトによって処理される。

  • NFTをミント(発行)する場合、誰がどのNFTを所有しているかを管理するコードはVMが実行している。購入や転送に際し、VMは記録を更新し、NFTの所有権が正確に維持されるように管理する。

  • また、レイヤー2のロールアップを利用している場合、トランザクションはzkEVMなどの特化型VMによって処理されることがある。zkEVMは、ゼロ知識証明(ZKP)の利点を活用して、ZKロールアップがスマートコントラクトを実行できるようにするVMである。

仮想マシン(VM)の制約

1. パフォーマンスの低下:VMは、ハードウェアと実行されるコードの間にレイヤーを追加します。そのため、物理マシン上で直接アプリを動かす場合と比べ、処理速度が低下し、より多くの演算リソースが消費されます。

2. 運用の複雑さ:VMの管理(特にクラウドインフラやブロックチェーンネットワーク上での運用)には、セットアップやアップデートに多大な労力を要します。時間がかかる上に、専門的なツールや知識も必要となります。

3. 互換性:スマートコントラクトは多くの場合、特定のVM環境向けに設計されています。例えば、イーサリアム向けに作成されたスマートコントラクトのコードは、互換性のないソラナなどの他のブロックチェーン上で動作させるためには、コードの書き直しや新たな調整が必要となります。複数の異なる環境で同一のアプリを運用するには、さらに時間と労力がかかることになります。

まとめ

仮想マシン(VM)は、従来のコンピューター環境だけでなく、ブロックチェーンの世界においても欠かせない基盤技術です。異なるOSを動かしたり、ソフトウェアの安全性をテストしたり、同一ハードウェア上で異なる作業を同時に実行できます。

また、VM(仮想マシン)は、ブロックチェーンネットワークにおいてスマートコントラクトや分散型アプリケーション(dApp)の実行環境となっています。専門的な知識がなくとも、VMの仕組みを理解すれば、日常的に利用する多くのDeFiツールやプラットフォームの裏側で何が起きているかをより深く把握できるようになります。

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