Bitcoinレイヤー2ネットワークの概要
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Bitcoinレイヤー2ネットワークの概要

Bitcoinレイヤー2ネットワークの概要

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公開済 Feb 16, 2024更新済 May 2, 2024
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要点

  • Bitcoinレイヤー2ネットワークでは、スケーラビリティ問題に取り組み、トランザクション速度の向上および手数料の削減を実現しています。Bitcoinレイヤー2プロトコルの例には、Lightning Network、Rootstock、 Stacks、Liquid Networkなどがあります。

  • レイヤー2では、ステートチャネル、サイドチェーン、ブロックチェーンロールアップなどのスケーリングメカニズムがよく用いられています。

  • スケーラビリティ以外にも、レイヤー2のソリューションによりプログラミングの可能性が広がり、Bitcoinブロックチェーン上における分散型金融(DeFi)などのWeb3サービスの増加が見込まれます。

はじめに

ブロックチェーンの開拓者であるBitcoinは、暗号資産業界において取引量が最大かつ最も人気の高い暗号資産となっています。一方その人気とは裏腹に、Bitcoinの人気が高まるにつれスケーラビリティを中心とした問題が生じています。こうした問題に対処するため、暗号資産コミュニティはスケーラビリティの拡大、トランザクションコストの削減、Bitcoinエコシステムの新たな可能性を拓く目的で開発されたBitcoinレイヤー2ネットワークの導入に踏み切りました。

Bitcoinレイヤー2ネットワークの概要

Bitcoinレイヤー2ネットワークとは、Bitcoinブロックチェーンの上に構築されたプロトコルを指します。同ネットワークは通常、メインチェーンのパフォーマンスの問題や他の制約事項への対処を目的に開発されます。レイヤー2プロトコルはトランザクションをメインのブロックチェーンから切り離して処理できるため、スケーラビリティ、プログラミング可能性、幅広い分散型アプリケーション(dApps)に対応した能力の向上などのメリットをもたらします。

Bitcoinレイヤー2ネットワークの存在理由

Bitcoinにおける初期計画内の分散型・セキュアな決済システムは、スケーラビリティの面での制約に直面することとなりました。平均ブロック生成時間は10分、トランザクション毎秒処理量(スループット、TPS)は毎秒7件であるため、トランザクション取引量が多い場合には処理能力が不十分であり、手数料の増加およびトランザクションの遅延が生じました。

また、Bitcoinブロックチェーンのスクリプト言語は限られているため、複雑なスマートコントラクトおよび分散型アプリケーション(dApps)への対応が難しい状況でした。Bitcoinレイヤー2ネットワークの構想は、こうした問題への対処から生まれました。

Bitcoinレイヤー2ネットワークの仕組み

レイヤー2ソリューションはオフチェーン処理の原則に基づいて動作し、トランザクションがメインブロックチェーンの外で処理されるため、レイヤー1の負荷が軽減されます。オフチェーンチャネルの作成により、それぞれのトランザクションを直接ブロックチェーンに追加せずとも複数のトランザクションの実行が可能です。こうしたオフチェーンのアプローチにより、トランザクションスループットの向上のみならず手数料の削減が実現し、マイクロトランザクションおよびPOS(販売時点情報管理)トランザクションの実用性が高まります。

Bitcoinレイヤー2ネットワークの機能を支えるメカニズムには、ステートチャネル、サイドチェーン、ブロックチェーンロールアップなどがあります。

1. ステートチャネル

Lightning Networkなどのレイヤー2ソリューションにおけるステートチャネルの採用により、ユーザーは決済の送信および受信の際にエンドツーエンドの暗号化チャネルを作成できます。同チャネル内のトランザクションはオフチェーンで実行され、開始残高および終了残高のみがメインネットワークに送信されるため、ネットワーク混雑の軽減および効率性の向上につながります。

2. ブロックチェーンロールアップ

ブロックチェーンロールアップ(オプティミスティック・ロールアップおよびZKロールアップの両方)は、オフチェーンの複数のトランザクションを1つのデータに集約し、これをメインブロックチェーンに追加します。このアプローチにより、スケーラビリティおよびトランザクションスループットが大幅に向上します。

3. サイドチェーン

独自のコンセンサスメカニズムを備えた独立したブロックチェーンであるサイドチェーンは、双方向ブリッジ経由によりレイヤー1との接続が可能です。この接続によりチェーン間における資産の送付が可能となり、レイヤー2ソリューションがさらに適応可能なものとなり、Bitcoinネットワークの能力が向上します。

Bitcoinレイヤー2ソリューションの例

Bitcoinエコシステム内では複数のレイヤー2ソリューションが開発され、スケーラビリティの向上および新機能の導入につながっています。

1. Lightning Network

2018年に立ち上げられたLightning Network(ライトニングネットワーク)は、ステートチャネルの導入によりBitcoinレイヤー1上でのマイクロトランザクションが可能となりました。複数のトランザクションをオフチェーンで実行しており、メインブロックチェーンには開始および終了残高のみを送信する仕組みをとっているため、トランザクションの高速化および低コスト化が実現されます。

2. Rootstock(RSK)

サイドチェーンとして動作するRootstock(ルートストック)は、Bitcoinブロックチェーン上でのスマートコントラクトを切り開く存在です。これによりBitcoinのRootstockネットワークへの送付が可能となり、送付されたBitcoinはユーザーのRSKウォレット内でlocked-up smart Bitcoin (RBTC)に変換され、トランザクションの高速化および低コスト化が実現します。

3. Stacksプロトコル

レイヤー2ブロックチェーンであるStacks(スタックス、旧Blockstack)では、Bitcoinブロックチェーンにおけるスマートコントラクトおよび分散型アプリケーション(dApps)の実装が可能となります。Stacksではマイクロブロックを用いてトランザクションスピードの向上を図り、Proof-of-Transfer(PoX)メカニズムの採用によりトランザクションをBitcoinネットワークと連携しています。

4. Liquid Network

Liquid NetworkはBitcoinレイヤー2サイドチェーンであり、双方向ペグメカニズムの採用によりBitcoinのシームレスな移動が可能となります。BTCがLiquid Networkに送付されると、1:1の割合でLiquid BTC(L-BTC)に変換されます。Liquid Networkでは、同トークンなどのデジタル資産の発行にも対応しています。

Bitcoinレイヤー2のスケーラビリティ以外のユースケース

Bitcoinレイヤー2ソリューションは、スケーラビリティ問題解決の糸口になるだけではなく、Bitcoinエコシステム内に新しいユースケースおよび機能を誕生させました。

1. プログラミング可能性の向上:レイヤー2ソリューションにより、複雑なスマートコントラクト機能がBitcoinネットワークに導入され、分散型金融(DeFi)サービス、非代替性トークン(NFT)、その他のWeb3アプリケーションの開発が可能となりました。

2. Bitcoin DeFi:Lightning NetworkやStacksなどのレイヤー2ソリューションにより、Bitcoinブロックチェーンにおける分散型金融(DeFi)の成長が進み、暗号資産の管理、アトミックスワップ、借入・貸出、取引などを行えます。

3. ブロックチェーンにおけるトリレンマの解決:Bitcoinレイヤー2ソリューションにより分散化、セキュリティ、スケーラビリティのバランスが向上し、ブロックチェーンにおけるトリレンマの解決につながります。Bitcoinネットワークでは分散化およびセキュリティを優先しながら、レイヤー2ソリューションによりスケーラビリティ問題に対処する構造となっています。

Bitcoinレイヤー2ネットワークの重要性の高まり

近頃、Bitcoinレイヤー2ネットワークの重要性が叫ばれており、同ネットワークの普及拡大および統合を目的とした大規模な開発が行われています。例えば、バイナンスは2023年にLightning Networkの統合完了を発表し、ユーザーはBitcoinの入出庫にレイヤー2スケーリングソリューションを活用できるようになりました。こうした動きにより、暗号資産エコシステム全体におけるレイヤー2ソリューションの重要性の高まりが浮き彫りとなっています。

将来を見据えると、暗号資産業界の拡大に伴いBitcoinレイヤー2ソリューションに大きな可能性が生まれることは確実と言えるでしょう。暗号資産コミュニティは、Bitcoinエコシステム内におけるかつてない規模の成長およびイノベーションを目の当たりにしてきました。また、レイヤー2ネットワークはこうした成長およびイノベーションを牽引する大切な役割を担っています。

まとめ

Bitcoinレイヤー2ネットワークの開発により、Bitcoinが直面するスケーラビリティ問題への効率的な対処が可能となり、トランザクション速度の向上、手数料の削減、新機能の導入などのソリューションが実現しました。スケーラビリティの向上以外にも、Bitcoinレイヤー2ソリューションによるプログラミング可能性の広がりから、分散型金融(DeFi)、資産管理などのBitcoinブロックチェーン上のサービス拡大のための手筈が整ったと言えます。

参考文献


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