要点
戦略的ビットコイン準備金は、政府、企業、機関投資家が金融戦略の一部としてビットコインを保管するための手段の1つです。
インフレに対するヘッジとしての準備金とみなす人もいます。また、ビットコインの供給量は固定されているため、その購買力が長期的に維持される傾向にあります。
価格変動やセキュリティ上の懸念などのリスクは伴うものの、ビットコインは長期的資産としての可能性を秘めた資産としての認識が浸透し始めています。
はじめに
中央銀行における金や外貨の保管と同様、ビットコインも将来に向けて保有すべき貴重な資産として広くみなされています。デジタル資産の採用普及に伴い、ビットコインなどの暗号資産を用いた戦略準備金は、金融や政策立案における共通のトピックになりつつあります。
戦略的ビットコイン準備金とは
戦略的ビットコイン準備金とは、組織が金融戦略の一環としてのビットコインの保有を指します。戦略的ビットコイン準備金の採用理由は多様ではあるものの、以下の1つ以上の理由に基づくケースが多くなっています。
インフレに対するヘッジ – ビットコインの供給量は固定されているほか、法定通貨同様には印刷できないため、長期的にその購買力が維持される傾向にあります。
分散投資 – 分散投資の一般的な代替手段としてビットコインを金融資産ポートフォリオの資産として保有できます。
価値の保存 – その希少性と永続性から、ビットコインは優れた価値保存の手段としてみなされることが多くなっています。ビットコインは、「デジタルゴールド」とも呼ばれています。
ビットコインの価値を認識する個人や機関投資家が増えるにつれ、一部の企業において、財務状態を改善するための準備金としてのビットコインの保有が進んでいます。
政府や企業が戦略的ビットコイン準備金を採用する理由
1. インフレに対するヘッジ
従来型の通貨は、インフレによりその価値が失われる可能性があります。一方、ビットコインの発行率は予測可能であることに加え、その供給量は固定されています(発行上限が2100万ドル)。この希少性はインフレに対する魅力的なヘッジとなるとともに、優れた価値の保存手段となっています。
2. 資産の分散
政府や機関投資家は、現金、金、債券などの資産を組み合わせて保有しています。ビットコインのポートフォリオへの追加により、リスクの分散と単一資産に対する依存回避を図ることができます。
3. 経済安全保障の強化
経済的に不安定な国や通貨が弱い国では、ビットコインの保有がセーフネットとなり得ます。ビットコインの運用はグローバルな分散型ネットワーク上で行われており、単一の国や銀行による管理下にはありません。
4. コーポレートトレジャリー戦略
一部の企業では、金融戦略の一環としてビットコインを保有しています。Strategy(旧MicroStrategy)やTeslaなどの企業は、ビットコインを現金の優れた代替資産とみなし、同暗号資産に数十億米ドルを投資しています。
トランプ大統領による戦略的ビットコイン準備金に関する大統領令
2025年3月6日、ドナルド・J・トランプ大統領は、戦略的ビットコイン準備金と米国デジタル資産備蓄を設立する大統領令に署名しました。暗号資産およびデジタル資産分野における米国の存在感を強めることを目標としたものです。
同準備金には、刑事事件または民事訴訟を通して政府が押収したビットコインが充てられます。情報筋によると、同政府はビットコインを準備資産・価値の保存手段として扱います(売却予定はないとされています)。
また、米国デジタル資産備蓄は没収により取得したアルトコインなどのデジタル資産で構成される可能性が高くなっており、財務長官にその管理戦略を決定する権限が付与されています。この施策では、米国政府の元でデジタル資産を一元的・効率的に管理することを目指しています。
批判
戦略的ビットコイン準備金の設立は、一部の間では先進的な金融動向として賞賛されているものの、2025年3月6日にトランプ大統領が署名した大統領令には反対派による批判も集まっています。
反対派は、ビットコインを国家準備資産として保有した場合、米国政府が極端な価格変動のあおりを受けることとなり、市場の暴落時に政局が不安定になるおそれがあると主張しています。
加えて、同政府が訴訟などを通してビットコインを押収することの正当性を疑問視する声もあります。中には、こうした資金を準備金に追加するのではなく、元の保有者に返還するか、適切な法的手段に則り販売するべきであると考える人もいます。
さらに、一部の政策立案者は、国家準備金としてビットコインを優先的に扱うことにより、米ドルをはじめとする従来型の金融システムへの信頼性が弱まるおそれがあると主張しています。批評家はまた、同準備金の管理方法と議会による適切な管理の実施に関する明確なガイドラインの欠如を指摘しており、透明性およびアカウンタビリティーに関する懸念が浮上しています。
戦略的ビットコイン準備金の実例
1. Strategy(旧MicroStrategy)
ビジネス分析企業であるStrategy(旧MicroStrategy)は、ビットコイン保有量で最大規模の企業の1つに数えられます。2020年以降、同社ではトレジャリー(準備金)戦略の一環としてビットコインを継続的に購入しており、ビットコインは価値保存の手段として現金よりも優れているとの立場に立っています。
2025年3月時点、Strategyでは499,096 BTC(約429億米ドル相当)を保有しています。
2. エルサルバドルにおけるビットコイン準備金
エルサルバドルは2021年、世界で初めてビットコインを法定通貨として導入しました。以来、同政府はビットコインを国家準備金の一部として蓄積し、これを使用して金融包摂と経済成長の後押しを図っています。
2025年3月時点、エルサルバドルでは6,105 BTC(5億2,500万米ドル超相当)を保有しています。
3. Tether社のビットコイン保有量
USDTステーブルコインを運営するTether社では、準備資産の一部としてビットコインを保有しています。同社では、ビットコインを堅牢かつ信頼性の高い価値の保存手段としてみなしています。
2025年3月時点で、Tether社では83,759 BTC(約72億米ドル相当)を保有しています。
戦略的ビットコイン準備金の未来
ビットコインを戦略的準備金として保有する方針は、拡大の一途を辿っています。数多くの中央銀行や政府では、自国の金融システムにおけるビットコインの適合に関する研究を実施しています。また、ビットコインを長期的資産とみなして投資する企業も増加しています。ビットコインの採用拡大に伴い、今後より多くの機関投資家や政府がビットコインを金融戦略立案における重要な構成要素としてみなす可能性があります。
まとめ
戦略的ビットコイン準備金は、政府、企業、機関投資家が金融戦略の一部としてビットコインを保管するための手段の1つです。インフレのヘッジ、分散投資に対処し、経済安全保障の強化につながる方策です。価格変動やセキュリティ上の懸念などのリスクは伴うものの、ビットコインが秘めた長期的資産としての可能性が浸透し始めています。
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