スラッシングとは
ブロックチェーン分野におけるスラッシングとは、悪意のある行為または重大な過失に関してバリデーター(
ノード)を制裁するための仕組みを指します。スラッシングは、
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)コンセンサスメカニズムを採用するブロックチェーンネットワークで用いられます。制裁内容は通常、バリデーターが
ステーキングした資産の削減または没収などに関するものとなっています。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)は、バリデーターによるトランザクションの検証およびブロックチェーンへの新規
ブロックの追加に依存する一般的なコンセンサスメカニズムです。バリデーターは、ステーキング済みまたは担保としてロック済みの暗号資産の数量に基づき選出されます。一方、バリデーターがネットワークの最善の利益のために行動することを促すには、悪意のある行為または過失行為を阻止し、これを制裁するための手段が必要となります。ここで、スラッシングが役に立ちます。
スラッシングは幅広い理由により用いられるものの、通常はネットワークの完全性または安全性を乱す行為に関連した理由となっています。一般的な理由を以下に挙げます。
1. 二重署名:バリデーターが2種類の異なるブロックに同じ
ブロック高で
署名した場合、ブロックチェーン上での
フォークの作成を試みたとみなされ、混乱を招くと同時に
二重支払いの問題につながる可能性があります。
2. ダウンタイム:バリデーターはコンセンサスプロセスへの参加のために、オンラインかつ稼働状態であることが求められます。非アクティブ状態が長期間続いた場合、ネットワークの効率性および安全性に影響が生じるため、スラッシングの対象となる可能性があります。
3. サラウンド投票:ネットワーク分割またはコンセンサスプロセスの操作を目的に、バリデーターが2種類の競合するチェーンまたは一連のトランザクションに投票することを指します。
バリデーターがスラッシングとみなされる行為に関与していることが検出されると、ネットワークにより該当のバリデーターが制裁されます。スラッシングのプロセスは通常、以下の通りとなっています。
1. 検出:バリデーターの行動は、ネットワークにより定期的に監視されます。不審な動きが検出された場合、レビューのためにフラグが立てられます。
2. 制裁:不審な動きが悪意のある行為または過失行為であると確認された場合、バリデーターのステーキング済み資産の一部または全部が没収されます。制裁の程度は、悪意のある行為または過失行為の重大性により決定されます。
3. ネットワークからの排除:深刻なケースでは、バリデーターは一時的または永久にネットワークから排除され、コンセンサスプロセスに参加する権利を失う可能性があります。
スラッシングは、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)ネットワークにおいて複数の大切な役割を担っています。
1. 抑止力:金銭的な制裁を加えるスラッシングは、バリデーターの悪意のある行為または過失行為に対する抑止力となります。
2. ネットワークの安全性保護:バリデーターがネットワークの安全性および完全性を維持するためのルールを遵守するようになるため、悪質な行為者によるシステムの侵害が起こりにくくなります。
3. 利益の一致:金銭的な報酬が絡むため、バリデーターは誠実かつ有能に行動するようになり、自身の利益とネットワークの利益が一致します。
採用によりそのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)を基盤としたシステムを保護するスラッシングは、複数の主要ブロックチェーンネットワークで採用されています。以下、一例を紹介します。
Ethereum:
Ethereumはプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行したため、そのセキュリティモデルにおける二重署名およびダウンタイムの防止にとってスラッシングは不可欠な要素となりました。
Cosmos:
Cosmosネットワークは、スラッシングの採用により二重署名を行ったバリデーターおよび非アクティブ期間が長期にわたるバリデーターを制裁しています。
Polkadot:
Polkadotでは、スラッシングの採用によりバリデーターの不正行為を防止するほか、その高いパフォーマンスと信頼性を維持しています。
スラッシングは、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用するブロックチェーンネットワークにおける重要な要素となっています。スラッシングを通して、バリデーターによる悪意のある行為または過失行為を制裁することにより、ネットワークの安全性、信頼性、完全性が維持されます。また、スラッシングによりバリデーターの利益とネットワークの利益が一致するため、バリデーターはコンセンサスプロセスにおいて誠実かつ有能な行動を取るようにもなります。