完全希薄化後時価総額(FDV)

初心者

暗号資産における完全希薄化後時価総額(FDV)とは

FDVは、完全希薄化後時価総額(Fully Diluted Valuation)を略したものです。暗号資産プロジェクトのすべてのトークンが現時点で市場に出回っていると仮定した場合の時価総額を示す指標です。FDVを求めるには、現在のトークン価格とプロジェクトの最大供給量(将来的に発行可能な総数量)を掛け合わせます。

たとえば、トークン1単位の価格が5ドル、プロジェクトの最大供給量が1億トークンであれば、FDVは5億ドルとなります。FDVはプロジェクトの最大潜在価値の全体像を見る指標です。

FDVが注目される理由

FDVは、将来的にトークンが市場へ流入した際にプロジェクトの価値がどのように変動するかを予測する上で有用な指標です。トークンはしばしばロックされており、ステーキング報酬やチームメンバーのベスティング(権利確定)スケジュールを通じて時間をかけてゆっくりとリリースされます。

投資家にとってFDVは、将来起こり得る状況を垣間見るような指標といえます。もしFDVがプロジェクトの実態に見合わないほど高い場合、将来のトークンの希薄化によって価格が下落するリスクが考えられます。

FDVと時価総額の違い

FDVと時価総額は、トークンの価格を評価する際に異なる意味を表します。
  • 時価総額:現在市場で取引可能なトークンのみをもとに、現時点のトークン価格でプロジェクトの総価値を計算する。
  • FDV:すべてのトークンがリリースされたと仮定したうえでプロジェクトの価値を示す指標。

たとえば、1,000万トークンが市場に流通しており、1トークンあたり5ドルであれば、時価総額は5,000万ドルになります。一方、最大供給量が1億トークンの場合、FDVは5億ドルとなります。時価総額とFDVの間に大きな差がある場合、まだ多くのトークンがロックされていることを示しており、将来的に市場へ大量のトークンが流入する可能性があると捉えられます。

FDVを活用する際の留意点

FDVは万能ではなく、時にプロジェクトの価値についてゆがんだ評価をもたらします。以下、FDVを活用する際の注意すべき点を挙げます。

  • トークンのリリーススケジュール:ロックされているトークンがどのタイミングで、どのような形で市場へ流入するか。短期間で大量のトークンが市場へ流入する場合、トークンの価格が下落する可能性が高まる。
  • 需要の拡大:理想的には、暗号資産プロジェクトはユーザーの関心を維持しつつ、トークンの実用性と需要を高める方法を見つけ、新規供給の影響を緩和する必要がある。
  • プロジェクトの基本:確固たる計画、革新性、長期的な成長の可能性を持つプロジェクトであれば、FDVが高いことは必ずしも悪いことではない。

FDVの数値だけでなく、プロジェクト全体の計画を評価することで、そのFDVが妥当かどうかを判断するのも有用です。

注意事項

FDVは新規トークンがリリースされても価格が変動しない前提で成り立っていますが、必ずしもそうとは限りません。実際、暗号資産市場は非常に変動が激しく、ほとんどのトークンは価格が大きく変動します。ただし、長期的には、需要がトークンの供給増加に追いつかない場合、価格が下落する可能性が高いといえます。

また、トークンの供給量が非常に多い小型プロジェクトやミームコインを評価する際には、時価総額やFDVといった指標が必ずしも有効とは限らない点に留意する必要があります。

したがって、FDVや単一の指標だけに頼るべきではありません。プロジェクトの可能性をより正確に把握する上で、プロジェクトのチーム、トークノミクス、技術的な価値、トークンの普及状況など、さまざまな要素を総合的に評価することが欠かせません。

まとめ

FDVはプロジェクトの将来的な可能性を理解するのに役立つものの、数あるツールの一つにすぎません。有益な視点を得てリスクを抑えるには、FDVや時価総額、その他の指標を組み合わせて暗号資産プロジェクトを評価するのが効果的です。