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Flashbots(フラッシュボット)

Flashbots(フラッシュボット)

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Flashbots(フラッシュボット)は、採掘可能価値*(MEV)がブロックチェーン、特にEthereumにもたらす悪影響を軽減するために設立された研究開発組織です。*訳注:EthereumがPoSに移行後は「最大抽出可能価値」と改名されてます。フラッシュボットは、MEVのためのパーミッションレスかつ持続可能なエコシステムを促進・実現することを主な目標として掲げています。

フラッシュボットの仕組み

フラッシュボットの仕組みを理解するために、まず「採掘可能価値」(MEV)という用語をよく理解する必要があります。ブロックのマイニング時のトランザクションの追加、除外、および順序決定により得られる利益をMEVと言います。

フラッシュボットは、暗号資産取引、DeFi、そしてより広範なブロックチェーンエコシステムにおいて、MEV活動の透明性をもたらしアクセスの民主化を目指に当たり重要な役割を果たしています。これには、トレーダーやユーザーに悪影響を及ぼすフロントランニングやバックランニング取引の防止含まれます。

フロントランニングとは、他のユーザーのトランザクションよりも先にトランザクションを送信することで不当な利益を得る行為であり、バックランニングとは、他のユーザーのトランザクションの後に意図的にトランザクションを送信することを指します。

これらの問題に対処するため、トランザクションをブロックに含める別チャンネルを作成し、ガス手数料のオークションにオープンで公正なトランザクション発注プロセスをもたらします。プロセスは次のようになります。

  1. サードパーティーのブロックビルダーが、トランザクションのバンドルを作成し、フラッシュボットネットワークを通じてマイナーに送信します。

  2. ブロックビルダーは、潜在的に得られる利益(MEV)によって取引の選択と配置を行います。

  3. その上でマイナーはネットワークと直接やりとりし、ブロックビルダーが提供する利益のシェアに基づいて新しいブロックに含めるバンドルを決定します。

  4. ブロックビルダー宛てにチップ(インセンティブ)とともにトランザクションを提出したユーザーは優先されます。これにより、トランザクション発注において透明かつ効率的、そして公正なマーケットプレイスが実現します。

フラッシュボットが提供する各種製品

フラッシュボットでは、様々な製品、サービスを提供しています:

  1. フラッシュボットオークション:効率的かつ公正なトランザクション発注のためのオープンマーケットプレイスです。バリデーターは、ブロック構築作業をサードパーティー(サードパーティーのブロックビルダーのネットワーク)に委託し、ブロックの収益性を最適化できます。

  2. MEVブースト:Ethereumのバリデーターがビルダーのマーケットプレイスからブロックにアクセスするために使用する外部アプリケーションで、事実上提案者 / 作成者の分離(PBS)の実装となります。
  3. フラッシュボットプロテクト:リモートプロシージャコール(RPC)エンドポイントで、誰でもフロントランニング、バックランニング、トランザクションの失敗から身を守るために利用できます。RPCは、ユーザーがブロックチェーンのデータを読み取り、異なるネットワークへの、または異なるネットワーク間でのトランザクションの実行を可能にする一種のコンピュータサーバーです。

  4. フラッシュボットデータ:Ethereumブロックチェーン上のMEVアクティビティとフラッシュボットオークションの透明性を向上させるダッシュボードとツールです。

フラッシュボットの利点

それでは、フラッシュボットが暗号資産にもたらすメリットをいくつか見てみましょう:

  1. トランザクションの順序付けのためのオークションメカニズムにより、マイナーたちはより高い手数料のトランザクションを優先して含めることで、より多くの利益を引き出すことができます。

  2. フラッシュボットは、フロントランニングやバックランニングを軽減します。これにより、トランザクションが公正かつ安全に実行されます。

  3. フラッシュボットは、取引注文に公開されたオークションを作成し、悪意を持った参加者がMEV抽出を悪用するリスクを低減します。

  4. フラッシュボットによりトレーダーは取引にかかる真のコストを確認できるため、透明性が高まります。

暗号資産取引におけるフラッシュボットの欠点

暗号資産取引におけるフラッシュボットの限界について見てみましょう:

  1. フラッシュボットはオフチェーントランザクションシステムで動作するため、トランザクションの注文を不意に集中管理してしまう可能性があります。意思決定プロセスの管理が外部に委ねられ少数の関係者によって行われる場合、不正行為につながる可能性があります。

  2. 市場操作のリスクが存在します。フラッシュボットにより、マイナーたちは手数料の高いトランザクションを優先できるため、特定のトレーダーが他のトレーダーよりも不当に優位に立つために価格を吊り上げる可能性があります。

  3. 小規模なトレーダーは、高い取引手数料を支払う余裕のある大規模なトレーダーとの競争に苦戦する可能性があり、小規模なトレーダーにとっては不公平な競争の場になります。

  4. フラッシュボットの実装は、技術的な複雑さやエコシステム内の既存インフラとの互換性の問題により、困難な場合があります。

2022年、フラッシュボットはブロックビルダーの役割を分散化し、独占的な注文フローの集中化に対抗することを目的としたSUAVEの概念を提案しました。