要点
Internet Computer(ICP)は、分散型の手法を取り入れてクラウドコンピューティングの能力をパブリックインターネットに導入するブロックチェーンネットワークです。
従来のソフトウェアのように利用しながら、スマートコントラクトベースのアプリケーションを開発・運用できます。
ICPトークンは、意思決定の投票、手数料の支払い、ネットワーク維持への報酬に使用されます。
このプロジェクトは、トラストレスかつスケーラブルな代替手段を提供することで、中央集権型クラウドサービスプロバイダーと競合することを目指しています。
はじめに
Internet Computer(ICP)は、インターネットサービスやソフトウェアの構築・ホスティング方法の変革を目指したブロックチェーンです。アプリケーションは従来の中央集権型サーバーではなく、よりオープンで分散化された形でインターネット上で稼働させることが可能です。ICPは2016年にDFINITY財団によって開発が開始され、2021年にローンチされました。現在、世界中のデータセンターをつなぎ、分散型クラウドを構築しています。
Internet Computer(ICP)とは
ICPは、インターネット上でクラウドコンピューティング機能を提供するパブリックブロックチェーンです。分散型管理、スケーラブルなスマートコントラクト、そして独立した運営者が所有するハードウェアを統合して構築されています。ICPはソフトウェアをスマートコントラクトのように実行でき、Amazon Web ServicesやGoogle Cloudといった従来のクラウドサービスに代わる選択肢を提供します。
スマートコントラクトを従来のソフトウェアと同じくらい強力で柔軟なものにし、複雑なタスクの処理、ウェブサイトの提供、通常のウェブブラウザを使ってユーザーとやり取りできるようにすることを最終的に目指しています。この仕組みを活用することで、中央集権的なインフラに依存しない完全なオンチェーンアプリケーションの構築が可能となり、その結果、透明性とセキュリティの向上に繋がります。
Internet Computerの仕組み
分散型ハードウェア
Internet Computerは、多くの独立したグループが所有・運営するハードウェアノード上で稼働しています。これにより、大手ハイテク企業や中央集権型サーバーに依存せず、検閲やサービス停止といったリスクを軽減しています。各ノードがコンピューティングリソースを提供し、それらが連携して分散型クラウドネットワークを形成しています。
強力なスマートコントラクト
Internet Computer上のスマートコントラクトは「canisters(キャニスター)」と呼ばれ、クラウドソフトウェアのように大量のデータを保存し拡張可能です。複数のタスクを同時に実行できるため、効率を損なうことなくネットワークが大量のトランザクションを処理できます。
独自の手数料システム
ユーザーがアプリを利用するたびに手数料を支払うのではなく、開発者はプロジェクトに事前に「サイクル(cycles)」を充当し、計算コストをカバーします。その結果、ユーザーは特定のウォレットやトークンを必要とせず、通常のウェブブラウザから簡単にアプリケーションにアクセスできます。
接続
ICPはHTTPなどの一般的なウェブプロトコルを使用して、他のブロックチェーンや従来のインターネットサイトと接続・通信できます。例えば、ビットコインに裏付けられたチェーンキー・ビットコイン(ckBTC)トークンがICPシステム内で利用できます。また、イーサリアムやその他のブロックチェーンとの統合の開発も進められています。
コミュニティ
ICPは、Network Nervous System(NNS)と呼ばれる分散型ガバナンスシステムによって運営されています。このシステムは、中央機関なしでネットワークが自律的にアップデートや改善を行えます。ネットワークは小規模なサブネットを追加することで成長し、それにより負荷を分散できます。
ICPの用途
ICP上では、ビジネスソフトウェア、分散型チャットアプリケーション、Web3ソーシャルメディアプラットフォーム、DeFi(分散型金融)商品など、さまざまな種類のアプリやサービスを開発・提供できます。
このプラットフォームは、RustやPythonなど複数のプログラミング言語に対応しているほか、DFINITYが開発したプログラミング言語「Motoko」も利用可能です。そのため、既存のソフトウェア開発環境からの移行時のハードルが低くなっています。
課題
Internet Computer上でのノード運用には高性能なハードウェアが必要で、参加者が限定されるため、ネットワークの分散性に影響を与える可能性があります。また、中央集権的な管理は存在せず、悪意のある有害コンテンツへの対応策の策定が難しいという課題もあります。
さらに、普及・採用の面でも課題があります。ICPは強力なツールを提供していますが、開発者や企業がAWSやGoogle Cloudなどの使い慣れた中央集権型サービスから移行するには時間がかかる可能性があります。
インターネットの仕組みを変えようとする試みに取り組むのは、ICPだけではありません。IPFS / Filecoinやウェブ発明者、Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)氏によるSolidといった他のプロジェクトも、代替インターネット技術の開発を進めています。
まとめ
Internet Computerは、よりオープンでセキュアかつ分散化されたインターネットを目指しています。高度なスマートコントラクト、分散型ハードウェア、コミュニティガバナンスを統合し、ICPはオンライン上でアプリやサービスをホスティングする新たな方法を提供します。
オープン性やモデレーション(不適切なコンテンツの監視・管理)に関する課題は残されていますが、ICPはウェブサービスの利用方法ややり取りを変革する可能性を秘めています。もし成功すれば、テック大手への依存軽減、開発者への新たな機会創出、そしてユーザー自身によるデジタルデータ管理権の強化が期待できます。
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