暗号資産におけるDePINの概要
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暗号資産におけるDePINの概要

暗号資産におけるDePINの概要

初心者
公開済 Apr 5, 2024更新済 May 29, 2024
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要点

  • DePINは、エネルギー供給網やサプライチェーンなどの物理インフラに、ブロックチェーンの分散化の原則を適用するものです。同ネットワークでは、ブロックチェーンおよびIoT技術の活用により、自律的かつ透明性の高いシステムが作成されます。

  • DePINにより、物理インフラのセキュリティ、効率性、透明性が強化され、エネルギーや輸送などのリソースへのアクセスが民主化されます。また、ピア・ツー・ピア(P2P)トランザクションおよびトークン報酬を通して、同ネットワーク参加に対する経済的なバックアップも提供されます。

はじめに

ブロックチェーンはこれまで、経済から芸術に至るまで、私たちの生活の幅広い側面に変化をもたらしてきました。一方、こうした変化はデジタル世界だけには留まりません。ブロックチェーンは、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)の概念と関連する現実世界の幅広い分野においても用いられつつあります。

分散型物理インフラネットワークの概要

DePIN(分散型物理インフラネットワーク)とは、ブロックチェーン技術を物理インフラおよびシステムに適用させることを指します。同ネットワークでは、ブロックチェーンをはじめとする技術の活用により、エネルギー供給網、サプライチェーン、電気通信、輸送システムなどの物理インフラ用の実用可能な分散型ネットワークが作成されます。

DePINの仕組み

DePINでは、ブロックチェーン技術を用いたネットワークの管理の分散化も行われます。これは通常、ブロックチェーン技術とIoTを組み合わせることにより実現します。

ブロックチェーンは、同ネットワーク内におけるトランザクションおよびデータ交換を記録する、安全性・透明性の高い台帳として機能します。ブロックチェーンでは、全てのトランザクションに関する不変的な記録の提供により、その信頼性および透明性が確実となります。一方、IoTは、相互接続された端末がリアルタイムでデータを収集・交換することにより機能します。DePINシステムでは、こうした端末間の相互通信、端末とブロックチェーンとの通信により、物理インフラ内における自律的かつ応答性に優れた連携が可能となります。

DePINでは、ブロックチェーンの活用によりネットワーク全体に権限を分散でき、この仕組みは、エネルギー、サプライチェーン、電気通信、データストレージ、輸送、不動産をはじめとする幅広い分野に適用できます。

エネルギー分野を例に挙げると、エネルギー供給網の分散化により、ピア・ツー・ピア(P2P)エネルギー取引が可能となり、取引に関するすべてのやり取りは透明性の高い状態でブロックチェーンに記録されます。スマートコントラクトによりトランザクションが自動化し、効率性が向上するほか、再生可能エネルギーの使用が推進されます。中にはユーザーがインセンティブとして暗号資産による報酬を受け取れるケースもあり、同ネットワークへの参加が活発化するとともに、エネルギー分野の成長につながります。

DePINの存在意義

高い安全性と効率性

DePINでは、単一障害点を排除し、改ざんまたは操作リスクを軽減することにより、物理インフラの安全性および効率性が向上します。ブロックチェーン技術の導入により、トランザクションおよびデータ交換の安全性が暗号技術により確保されるほか、分散型データベースにより、攻撃または不正アクセスのリスクが軽減されます。

透明性とトレーサビリティ

DePINは、サプライチェーン管理などの分野に対し、優れた透明性およびトレーサビリティを提供します。生産および流通プロセスにおけるすべての工程をブロックチェーンに記録することで、企業は自社製品の真正性および完全性を確かなものにできます。これにより、詐欺、偽造などの違法行為を防止できます。

リソースの民主化

DePINは、エネルギーおよび輸送などの不可欠なリソースへのアクセスを民主化する可能性を秘めています。DePINにより、中央集権型プロバイダーに依存せずとも、個人およびコミュニティがこうしたリソースの生産、流通、活用に直接携わることができるようになります。例えば、分散型のエネルギー供給網により、住宅所有者が自家発電した余剰電力を近隣の居住者に売却できるようになることで、公平性が高くサステナブルなエネルギーエコシステムが実現します。

経済的なバックアップ

DePINは、物理インフラの管理の分散化により、個人およびコミュニティを経済的にバックアップします。同ネットワークではピア・ツー・ピア(P2P)トランザクションが可能であり、トークン報酬により同ネットワークへの参加が後押しされます。これにより、特にサービスの行き届いていない地域や周縁化した地域において、起業・イノベーションのための新しい機会が創出されます。

DePINプロジェクトの一例

Filecoin

Filecoinでは、ブロックチェーン技術の活用により分散型ストレージソリューションのニーズに対処しています。同プロジェクトでは、ユーザーは未使用分のストレージの貸出を行い、その見返りとして暗号資産を獲得できます。同分散型ストレージネットワークでは、ストレージプロバイダーの分散型ネットワークを通じ、データの安全性、冗長性、可用性が確保されます。

Render

Renderは、分散型GPUベースのレンダリングソリューションの提供に注力するDePINプロジェクトです。同プロジェクトは、未使用GPUの計算能力の収益化を希望するノード運用者と、集中的な3Dレンダリング作業およびアプリケーションの規模を拡大する必要性を持つアーティストをつなぐ役割を担っています。Renderでは、分散型GPU計算ネットワークに加え、アーティスト・開発者がサービスおよびアプリケーションを構築する際に利用できるプラットフォームが提供されます。

The Graph

The Graphは、ブロックチェーンデータのインデックス化および検索に特化した分散型プロトコルです。同プロトコルでは、データに誰もがアクセスできる環境を重視してデータの整理を行っています。開発者は、Graph Explorerを用い、dAppの構築に必要となるすべての公開データを検索・公開できます。

課題と今後の見通し

DePINには大いに将来性がある一方、課題も複数存在します。DePINの普及を阻む大きな障壁となっているのは、規制、技術的なスケーラビリティ、相互運用性に関する課題です。また、物理システムへのブロックチェーンの統合には、強固なセキュリティ対策およびユーザーフレンドリーなインターフェースが必要となります。

一方、こうした課題があるにもかかわらず、DePINの今後の見通しは明るいものとなっています。技術が進化および革新し続けるにつれ、DePINプロジェクトは先述の障壁を乗り越え、分散型物理インフラに関する新しい機会が生み出される可能性が高いと言えます。DePINは、個人・コミュニティにおける独自のインフラおよびリソースの形成を後押しすることで、物理的世界との関わり方に変革をもたらす可能性を秘めています。

まとめ

DePIN(分散型物理インフラネットワーク)は、ブロックチェーンおよびIoT技術の活用により、自律性かつ透明性の高いシステムを作成し、物理インフラに革新をもたらします。同ネットワークにより、物理インフラのセキュリティ、効率性、透明性が向上し、エネルギーや輸送などのリソースへのアクセスが民主化されます。

参考文献


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