セルフィッシュマイニングの説明
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セルフィッシュマイニングの説明

セルフィッシュマイニングの説明

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公開済 Mar 27, 2020更新済 Dec 28, 2022
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ビットコインのインセンティブについて

ビットコインはインセンティブが慎重にバランスが取られているゲームです。分散型エコシステムでは、参加者の興味をまとめるのはネットワークの長期的な生存に不可欠です。ノードにネットワークを安全にするためのインセンティブの多くは金銭的なもので、誠実に行動すると報酬が与えられ、不正をしようとしたら、潜在的な利益を失います。
これはマイニングに適用されています。マイナーは電気と特化したハードウェアのために大量の資金を投資し、ブロックチェーンにブロックを追加することで資金を回収し、利益を出そうとします。マイナーはリターンを最大化し、そのための最も簡単な方法はルールに基づいて事業を行うことです。
もしも、マイナーがチェーンにブロックを追加したら、そのブロックの中のトランザクション手数料は全てマイナーに支払われ、さらに新しく発行されたコインの一部が手に入ります。これをブロック報酬と呼び、受け取ることができるコインの量は21万ブロック毎(だいたい4年毎)に半減します。この記事を書いた時点では、報酬は12.5BTCですが、6月25日に半減期が訪れるので、ブロック報酬の半減期が訪れるのは時間の問題です。 
マイニングへの金銭的なインセンティブは、この分野の競争を激しくし、結果的にネットワークのセキュリティと分散性を加速させました。これらのインセンティブはゲーム化できるのではないかと考える人もいます。この記事では、セルフィッシュマイニングのコンセプトについて見ていきます。 
ビットコインの裏にあるインセンティブについて、詳しく知りたい場合はバイナンスアカデミーのクリプトエコノミクス入門をご覧ください。


セルフィッシュマイニングの仕組み

Ittay EyalとEmin Gun Sirerという研究者が2013年に発表したMajority is not Enough: Bitcoin Mining is Vulnerable(過半数は不十分 ビットコインマイニングは脆弱)という論文がセルフィッシュマイニングの最も包括的な説明をしています。この論文は、世間一般の認識と違い、ビットコインマイニングのインセンティブには欠陥があり、それによって最終的にネットワークの集約化が起きるという内容です。

例を使って、セルフィッシュマイニングを説明していきます。合計のハッシュレートがアリス、ボブ、カール、ダンの4人のマイナーで、均等に分割されているとします。アリス、ボブ、そしてカールはルールを守って事業を行っていますが、ダンは彼自信の利益のためにシステムを搾取しようとしています。

普段の状況では、ブロックを発見したマイナーはすぐにチェーンに追加することを期待します。そして、誠実な参加者であるアリス、ボブ、そしてカールはそのようにします。しかし、もしもダンがブロックを発見した場合、彼はそのブロックの追加を保留(有効な解ではあるものの、まだチェーンに追加しない)します。ダンは運よく誰よりも先にブロックを連続で発見するかもしれません。

10万ブロックがこれまで掘られてきたとします。つまり、アリス、ボブ、そしてカールは100,001個目のブロックを掘ろうとしています。ダンはそれを見つけましたが、この情報を隠しています。これによって、パブリックのものとダンの秘密(そして、より長い)チェーンの2つが存在するようになります。他のマイナーが100,001ブロックを探そうとしている中、ダンが100,002を見つけたとします。

この時点で、ダンのチェーンは2ブロック進んでいます。彼の幸運が続いて、ダンのチェーンは常にパブリックチェーンの2ブロックを維持し続けたとします。そして、他のマイナーが追い付いて、差が1ブロックになった時に彼が自分のチェーンを公開します。

その時点で、ダンのチェーンは他のマイナーが取り組んでいたチェーンよりも長いチェーンとなります。最長チェーンルールと呼んでいるルールに基づくと、最もProof of Work(チェーンワークとも呼ばれます。)を獲得しているチェーンが取り組むべきチェーンとなります。そのため、もしもノードがより多くの作業が行われたチェーンを検知したら、チェーンを移行し、より長いチェーンの方にマイニングパワーを捧げます。

アリス、ボブ、カールはダンのチェーンを見て、このチェーンがフォローすべきチェーンと認識します。彼らがもう1つのチェーンで得た一切の収益はもはや存在しません。そして、ダンが現在のチェーンでそれらのブロックを掘っていたので、彼が全ての報酬を手に入れることになりました。


セルフィッシュマイニングはビットコインの脅威ですか?

すべての参加者が期待された通りに行動する方が確かに安上がりです。セルフィッシュマイニングは多くの無駄を生み出しますが、そのような不正を行うマイナーは、ネットワークの他の参加者よりも戦略的な優位性を維持していることに注意することが重要です。その結果、攻撃者のチェーンに他のマイナーが加わる可能性が高く、この問題はどんどん悪化していきます。

EyalとSirerの論文では、彼らは大きなリスクとして、時間が経つに連れて、セルフィッシュマイニングによって利己的な団体同士で利益を最大化するためにチームを組むようになるので、マイニングプールのハッシュレートが増大する結果を引き起こすと強調しています。ハッシュパワーの大半を1つのプールが手に入れてしまったら、51%攻撃を試みるかもしれません。

マイナーのイデオロギー的な考慮と分散化されたままでネットワークを運営し続けるインセンティブがあり、さらにエコシステムが腐敗するとマイナーは電気とマシンへの投資を回収することが困難になり、収益を出すことはさらに困難になるため、セルフィッシュマイニングはビットコインのネットワークの脅威にならないという人たちもいます。


まとめ

マイナーがコンソーシアムを組むとセルフィッシュマイニングが成功するならば、自分の利益を増やしたいマイナーにとっては魅力的な戦略になるかもしれません。最悪の場合、このインセンティブによって誠実なマイナーまでもが自己的なマイナーに加わることになり、ビットコインの分散性が害されます。

しかし、より大きな計画では、当事者がこのような方法で協力することはほとんど意味がありません。結局のところ、ネットワークのセキュリティを弱体化させるような行動は、ビットコイン価格の下落を引き起こす可能性があり、マイニング事業の収益性に直接影響を与えます。