ERC-1155とその仕組み
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ERC-1155とその仕組み

ERC-1155とその仕組み

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公開済 Jan 30, 2024更新済 Apr 18, 2024
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概要

  • ERC-1155は、暗号資産の作成と管理を最適化するために設計されたEthereumのトークン規格です。

  • 単一のスマートコントラクト内で非代替性トークンと代替性トークンを同時に扱え、トランザクションの効率化とコスト削減を実現します。

  • ERC-1155が実装する安全な送金メカニズムやその他の安全機能は、誤ったアドレスへの送信を防ぎ、使い勝手と信頼性を向上させています。

はじめに

Ethereumは世界に最初にスマートコントラクトと分散型アプリケーション(DApps)を導入したブロックチェーンで、その後も急速に進化し続けています。Ethereum上に構築される資産や商品の互換性を保証するトークン規格は、Ethereumブロックチェーンの優れた特徴となっています。

ERC-20ERC-721と並び、ERC-1155はEthereumで最も重要なトークン規格の1つです。この記事ではERC-1155について、その仕組みやブロックチェーンエコシステムにおける重要性に焦点を当てて詳しく解説します。

ERC-1155トークン規格とは

ERC-1155はEthereum Request for Comments 1155の略称で、Ethereumブロックチェーン上のスマートコントラクトとトークンのより汎用な有用性を実現するために設計された規格です。ブロックチェーンでは、トークンは代替性(同一で交換可能)または非代替性(各トークンが固有)のいずれかのデジタル資産となります。ERC-1155導入以前は、代替性トークンはERC-20規格、また非代替性トークン(NFT)はERC-721規格と、異なる規格で管理されていました。

ERC-1155の仕組み

ここでERC-1155の重要性を理解するために、剣、盾、ゲーム内コインなどの多様なアイテムを取り扱うブロックチェーンゲームを例に見てみましょう。ERC-1155導入以前は、これらのアイテムはそれぞれ、スマートコントラクト内の別々のルールにより管理されていました。ERC-1155では、これらすべての多様なアイテムが単一のスマートコントラクト内で簡単に取り扱えます。その結果、デジタルアイテムごとに個別のコントラクトを管理するのではなく、ERC-1155規格を通してさまざまなトークンをまとめて管理できます。

ERC-1155の主な利点

ERC-1155は、その効率性、適応性、重複作業の削減、セキュリティ機能の強化、そして異なった種類のトークンへ対応している点がメリットとして挙げられます。

1. 効率性の向上

ERC-1155では、種類の異なるトークンを1回のトランザクションでまとめて送信できます。この能力により、トランザクションスピードを大幅に早め、関連するコストが削減されます。ゲームアプリで、剣、盾、コインを送信する場合、これらすべてを1回のトランザクションで実行できます。

2. ゲームを超えた汎用性

ERC-1155の有用性はゲームアプリでは明らかなものである一方、この機能は他の多くの分野でも適用できます。トークン、コレクティブル、特別なチケットなど、あらゆる種類のトークンを簡単に処理できます。この汎用性により幅広い業界で、さまざまなアプリケーションによって、ERC-1155は貴重なツールとして利用されています。

3. 重複作業の削減

ERC-1155以前は、異なる種類のトークンには個別にコントラクトが必要で、同じ作業を何度も繰り返す必要がありました。ERC-1155では、異なる種類のトークンが1つのコントラクトにまとめられ、トークン管理が効率的で簡単になりました。

4. 安全な送信メカニズム

ERC-1155には、誤って間違ったアドレスにトークンを送信してしまった場合でも、トークンを回収できる安全機能が組み込まれています。従来のトークン規格にくらべ大幅な改善となっており、セキュリティの強化と安心感がもたらされています。

5. 多様な種類のトークンへの対応

従来のトークン規格とは異なり、ERC-1155は代替性や非代替性トークンだけでなく、半代替性トークンにも対応しています。半代替性トークンの利用例としては、開演前は交換可能(代替性)であるもののコンサート終演後はそれぞれ固有の(非代替性)コレクティブルのトークンに様変わりするコンサートチケットのトークンなどの例が想定されます。

ERC-20、ERC-1155、ERC-721の比較

ERC-20、ERC-1155、およびERC-721トークン規格の主な違いを以下一覧にまとめました。

表にあるように、ERC-20は暗号資産などの交換可能なトークンに使用され、ERC-721はデジタルアートなどの固有なトークンに使用されます。ERC-1155では単一のコントラクト内で機能を組み合わせ、両方のユースケースに柔軟に対応します。

ERC-1155の利用者

ERC-1155の利点を活用するプロジェクトには、多くのものがあります。以下、注目すべき事例を紹介します。

  • Enjin:ERC-1155を利用したブロックチェーンプラットフォームで、デジタル資産と仮想経済のエコシステムを提供しています。Enjinでは、ブロックチェーンベースのゲームで使用されるNFTとWeb3資産の作成に注力しています。

  • OpenSea:ERC-1155規格を導入した著名NFTマーケットプレイスです。1つのコントラクトごとに複数のクリエイターが関与でき、コラボレーションと創造性が醸成されています。

  • OpenZeppelin:ERC-1155規格を採用した、ブロックチェーンセキュリティ商品のプロバイダーです。ブロックチェーンエコシステムの重要な分野における同規格の採用の顕著な例となっています。

ERC-1155の今後の展望

ERC-1155はその誕生からしばらく時間が経過しているものの、ERC-20やERC-721ほど普及しているとは言えません。その理由として、ERC-1155の機能性があまり周知されていないことが考えられます。しかし、様々なプロジェクトでERC-1155を利用した事例が増えるにつれ、この規格の普及が進む可能性があります。

プレイすることでトークンを獲得できるプレイ・トゥー・アーンゲームの出現は、ERC-1155の採用を加速させる可能性があります。さらに、主にオンチェーンで稼働し多様なトークンのタイプが必要になる分散型自律組織(DAO)でも、ERC-1155に有用性が見出されています。

ERC-1155規格がもつ柔軟性は様々なユースケースへの利用が期待されている一方、普及はまだこれからです。ブロックチェーン技術の進歩に伴い、ERC-1155規格はEthereumネットワーク上のデジタル資産の発展に大きく貢献していくことになるでしょう。

ERC-1155規格の利点

  • ユーザーフレンドリーなトランザクション:複数の種類のトークンのトランザクションを行う場合、ERC-1155規格を利用することでコストを削減できます。

  • DAO向け拡張機能:分散型自律組織(DAO)は、ERC-1155の多様な種類のトークンに対応し、オンチェーンでの操作が簡単になります。

  • プレイ・トゥ・アーン:このスタイルのゲームの興隆により、ゲームプレイ中にシームレスに多様なトークンを獲得できるようになり、ERC-1155規格の富裕が進む可能性があります。

多くのプロジェクトでERC-1155が採用され普及が進むにつれ、ユーザー、開発者、広範なブロックチェーンコミュニティの間でERC-1155のもつ潜在的なメリットがより深く認識されていくと考えられます。

まとめ

まとめると、ERC-1155はトークン管理の合理化、無駄な繰り返し作業の削減、新たな可能性の創出により、Ethereumエコシステムにおける大きな改善をもたらしました。その影響はすでに様々なプロジェクトで明らかになっており、認識が広まるにつれ、ERC-1155はEthereumの重要なトークン規格として一層発展していくと予想されます。

参考文献

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