ミンブルウィンブル(Mimblewimble)とは?
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ミンブルウィンブル(Mimblewimble)とは?

ミンブルウィンブル(Mimblewimble)とは?

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公開済 Sep 2, 2019更新済 Dec 11, 2023
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コミュニティからの記事-著者: William M. Peaster


ミンブルウィンブル(MW)はトランザクションを構造化して保存する新しい方法を採用したブロックチェーン設計です。Proof of Work (PoW)の新しい実装であるMWはプライバシーを強化し、ネットワークのスケーラビリティを改善します。
ミンブルウィンブル(Mimblewimble)の設計は2016年の中頃に、仮名のTom Elvis Jedusorによって生まれました。確かに、彼はコアのアイデアをシェアしようとしましたが、最初のミンブルウィンブル(Mimblewimble)のドキュメントにはいくつかの疑問点がありました。これ疑問を解消するために、Blockstreamの研究者のAndrew Poelstraがオリジナルのコンセプトを研究し、改善しました。そのすぐ後に、Poelstraは2016年10月にミンブルウィンブル(Mimblewimble)という題名の論文を発表しました。

それ以後、多くの研究者と開発者がMWプロトコルの可能性を研究してきました。そういった人たちの中には、このプロトコルをビットコイン(Bitcoin)に実装するのは技術的には可能なものの、相当困難になると考えています。Poelstraと他の支持者はミンブルウィンブル(Mimblewimble)は最終的にはビットコイン(Bitcoin)のサイドチェーンソリューションとして、ビットコイン(Bitcoin)ネットワークを改善するかもしれないと信じています。


ミンブルウィンブル(Mimblewimble)の機能

ミンブルウィンブル(Mimblewimble)はこれまでのブロックチェーントランザクションのモデルを変えます。これによって、ブロックチェーンが保有する履歴はよりコンパクトになるので、ダウンロード、同期、そして承認がより簡単、かつ早く行えるようになります。

MWブロックチェーンでは、特定可能、もしくは再利用可能なアドレスはなきので、当事者にしかトランザクションデータは見えず、当事者以外の人から見ると、全てのトランザクションはランダムデータのようにしか見えません。

そのため、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)ブロックはたくさんのブロックの組み合わせというよりは、大きな1つのトランザクションのような構成になっています。つまり、ブロックの検証と承認は可能ですが、そこからそれぞれのトランザクションについての詳細はわからないようになっています。それぞれのインプットとそれに関連するアウトプットをつなげる方法はありません。

例を出して、説明をしていきます。アリスは5MWコインを彼女の母親から受け取り、さらに父親からも5MWコインを受け取りました。それから、彼女はそれらの10コインをボブに送りました。このトランザクションは承認されますが、詳細は公開されません。ボブがわかることはアリスが彼に10コイン送ったことだけで、アリスが誰からそのコインを受け取ったのかはわかりません。

ミンブルウィンブル(Mimblewimble)ブロックチェーン上でコインを転送するためには、送金者と受取人は検証情報を交換しなければいけません。そのため、アリスとボブがコミュニケーションは必要ですが、トランザクションを実行する時に、同時にオンラインである必要はないです。

また、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)はカットスルーと呼ばれる機能も採用しており、この機能は重複するトランザクション情報を取り除くことで、ブロックデータを減らします。そのため、それぞれのインプットとアウトプットを記録する代わりに(アリスの両親からアリスへとアリスからボブへ)、そのブロックは1つのインプットとアウトプットのペアのみを記録します(アリスの両親からボブへ)。

技術的には、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)の設計は、2013年にAdam Backが提唱し、Greg MaxwellとPieter Wuilleによって実装された、コンフィデンシャルトランザクション(CT)のコンセプトをサポートし、拡張します。簡単に説明すると、CTはブロックチェーン上での転送量を隠すためのプライバシーツールです。


ミンブルウィンブル(Mimblewimble)vsビットコイン(Bitcoin)

ビットコイン(Bitcoin)ブロックチェーンはジェネシスブロックからの全てのトランザクションデータを維持しています。つまり、誰でもトランザクションデータをダウンロードし、トランザクション毎に公開されている履歴を確認することができます。
対照的に、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)ブロックチェーンは必要な情報だけを保持しながら、プライバシーを保護します。バリデーターは二重支払いのような不正が行われていないことと循環しているコインの枚数が正確なことを確認します。

これ以外だと、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)では、ビットコイン(Bitcoin)にあるトランザクションの構造化方法を定義する指示のリストであるスクリプトシステムがないです。スクリプトをなくすことでMWブロックチェーンのプライバシーとスケーラビリティを強化することができます。アドレスをまったく追跡できないため、よりプライベートであり、ブロックチェーンデータが小さいため、よりスケーラブルです。

つまり、もう1つのビットコイン(Bitcoin)とミンブルウィンブル(Mimblewimble)の主要な違いは、先ほど述べたカットスルー機能と関連する、ブロックチェーンに関係するデータのサイズです。不必要なトランザクションデータを除くことで、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)で必要とされる計算リソースはより少なくなります。


アドバンテージ

ブロックチェーンサイズ

前述のとおり、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)はデータの圧縮を可能にすることで、ブロックチェーン全体のサイズを削減します。ノードはトランザクション履歴をはるかに早く検証でき、必要となるリソースも相当少なくなります。また、新しいノードがMWブロックチェーンをダウンロードして同期するのが簡単です。

ネットワークに参加し、ノードを稼働させるためのコストが削減されることによって、より多様化され、分散化されたコミュニティとなり、それによって多くのPoWブロックチェーンで発生しているマイニングが寡占化する恐れが減ります。

スケーラビリティ

最終的に、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)は、ビットコイン(Bitcoin)または別の親チェーンに接続できるサイドチェーンソリューションとして使用される可能性があります。また、MWの設計はライトニングネットワークで使われているようなペイメントチャネルのパフォーマンスを向上させる可能性があります。

プライバシー

ビットコイン(Bitcoin)のスクリプティングシステムを取り除き、コンフィデンシャルトランザクションを活用することでより高いレベルのプライバシーを実現することができます。これによって、トランザクションの詳細が他人には見えないようにできます。
さらに、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)ブロックチェーンに基づくコインは代替可能と考えられています。代替可能性の特徴として、発行されたコインは他の同じコインと区別がなく、交換可能となっていることです。


限界

トランザクションスループット

コンフィデンシャルトランザクションは大幅にトランザクションのスループットを減らします。プライバシー機能がないシステムと比べた時、CTを使っているブロックチェーンはよりプライバシーが保護されますが、TPS(1秒あたりに処理できるトランザクション数)のレートは下がります。それでも、MWのコンパクトなサイズは、コンフィデンシャルトランザクションによるTPSの限界に対応できると言えるかもしれません。

量子耐性がない

ミンブルウィンブル(Mimblewimble)システムは現在のコンピュータに比べて計算能力が飛躍的に計算能力が増える量子コンピュータに対する耐性がありません。MWはデジタル署名の比較的単純な機能を使っています。量子コンピュータが実現するのは何十年もかかると言われており、さらにミンブルウィンブル(Mimblewimble)を使った仮想通貨における、量子コンピュータによる攻撃に対する対策は今後研究されていくと思われます。


まとめ

ミンブルウィンブル(Mimblewimble)の誕生は、 ブロックチェーンの歴史における顕著なマイルストーンを示しています。カットスルー機能によってMWネットワークはより安価、かつ簡単にスケールするようになります。一方で、MWプロトコルはサイドチェーンやペイメントチャネルとして実装されるかもしれません。MWをそのように実装することによって親チェーンのプライバシーを強化し、さらにスケーラブルにすることができます。

これまで、ライトコイン(Litecoin)チームを含む、いくつかのブロックチェーンプロジェクトがミンブルウィンブル(Mimblewimble)のデザインに取り組んでいます。グリン(Grin)とビーム(Beam)は他の有名なミンブルウィンブル(Mimblewimble)に取り組んでいるプロジェクトです。グリン(Grin)はMWプロトコルの軽量な概念実証に取り組んでいるコミュニティ主導のプロジェクトですが、ビーム(Beam)はスタートアップのようなアプローチを採用しています。確かに、両方のプロジェクトともミンブルウィンブル(Mimblewimble)に基づいていますが、技術的には全く別のもので、それぞれが独自の方法でMWデザインを実装しています。

今のところ、未解決の問題は、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)がかなりのレベルの信頼性と普及を実現できるかどうかです。ミンブルウィンブル(Mimblewimble)は刺激的で有望なアイデアですが、非常に若いものでもあります。そのため、潜在的なユースケースはまだ研究中であり、ミンブルウィンブル(Mimblewimble)の将来は依然として不透明です。