アトミックスワップの説明
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アトミックスワップの説明

アトミックスワップの説明

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公開済 Jul 1, 2019更新済 Dec 11, 2023
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アトミックスワップとは?

アトミックスワップは、違うブロックチェーンネットワーク上の違う2つの仮想通貨間での素早い交換を実現する技術で構成されています。アトミッククロスチェーントレーディングとも呼ばれている、このようなプロセスは に基づいており、これによってユーザーは個人の仮想通貨ウォレットから直接コインを取引することができるようになっています。そのため、アトミックスワップは実質的に、違うブロックチェーン間でのP2P取引です。
革新的な技術ですが、クロスチェーントレーディングのアイデアに対する議論は長年続いています。Tier Nolanは2013年に初めて完全なアトミックスワッププロトコルを説明したと考えられています。しかしながら、2012年にDaniel Larimerによって発表された、P2PTradeXというトラストレスな取引プロトコルをアトミックスワップのプロトタイプと考える人もいます。

その後、多くの開発者がアトミックスワッププロトコルの実験を始めました。様々なエビデンスによるとこのプロセスにおいて、ビットコイン(Bitcoin)、ライトコイン(Litecoin)、コモド(Komodo)、そしてディクレッド(Decred)のコミュニティが大事な役割を果たしました。

2014年に世界初のP2Pアトミックスワップが登場したといわれています。しかし、多くの人にこの技術が知られるようになったのは、LTC/BTCDCR/LTCでのスワップが成功した、2017年です。


アトミックスワップの機能

アトミックスワッププロトコルでは、関わっている誰もが不正を行えないように設計されています。これがどのように機能するかを理解するために、アリスが保有しているライトコイン(Litecoin)を使って、ボブとビットコイン(Bitcoin)で取引する時を例に説明します。

まず、アリスは金庫のような役割を果たす、コントラクトアドレスに保有しているLTCをデポジットします。このコントラクトアドレスが作成されたら、アリスはこれにアクセスするための鍵も発行します。そうしたら、この鍵の暗号化されたハッシュをボブに共有します。ここで注意が必要なのは、ボブは鍵のハッシュしか知らず、鍵そのものは知らないので、まだLTCにアクセスすることはできないことです。

次に、ボブはアリスから提供されたハッシュを使ってもう1つ保管用のコントラクトアドレスを作成し、そこに彼のBTCをデポジットします。BTCを手に入れるために、アリスは同じ鍵を使い、これによってハッシュロックという特別な機能を使うことで、ボブに鍵を公開します。つまり、アリスがBTCを手に入れようとすると、ボブはLTCを手に入れることができ、そしてスワップが完了します。

アトミックという単語は、これらのトランザクションが完全に発生するか、まったく発生しないかのどちらかしかないという事実に関連しています。もしも、関係者のうちの誰かが、期待されている役割を果たせなかった場合、このコントラクトはキャンセルとなり、資産は自動でオーナーに返還されます。

アトミックスワップはオンチェーン、オフチェーンそれぞれで行うことができます。オンチェーンでのアトミックスワップはスワップに使われる通貨のどちらかのネットワーク上(今回の例の場合だとビットコイン、もしくはライトコインのブロックチェーン)で行われます。一方、オフチェーンアトミックスワップはセカンドレイヤーで行われます。この種のアトミックスワップは、通常、双方向のペイメントチャネルに基づいており、この技術は ライトニングネットワークで使用されているものに似ています。
技術的に言うと、こういったトラストレスでの取引システムはマルチシグハッシュタイムロックコントラクト(HTLC)に使った、スマートコントラクトに基づいています。


ハッシュタイムロックコントラクト(HTLC)

ハッシュタイムロックコントラクト(HTLC)はビットコイン(Bitcoin)、特にライトニングネットワークにおいて、重要な部分ですが、アトミックスワップを実現するための鍵となるコンポーネントの1つでもあります。名前が示す通り、HTLCはハッシュロックとタイムロックの2つのキーファンクションに基づいています。

ハッシュロックは資産がデータの一部が公開されない限り使われることを防ぐものです。(さっきの例で言うと、アリスの鍵です。)タイムロックは事前に定義されたタイムフレーム内でのみ、コントラクトが実行されないようにするための機能です。結果的に、HTLCを使用すると、アトミックスワップが部分的に実行されるのを防ぐ特定のルールセットが作成されるため、信頼の必要がなくなります。


アドバンテージ

アトミックスワップの最大のアドバンテージはその分散化された性質に関連します。中央集権型の取引所や他の一切の仲介者の必要性を排除することで、2、もしくはそれ以上の数の当事者間でのクロスチェーンスワップがそれぞれの間での信用なしで実行することができます。さらに、ユーザーは中央集権型の取引所や第三者に資産を預ける必要がないので、セキュリティを強化します。その代わり、取引は直接ユーザー個人のウォレット間で行われます。
また、この形式でのP2P取引では取引手数料が極めて少額、もしくは不要となるので、運用コストははるかに低くなります。最後にアトミックスワップによって、相互運用性がより高く、非常に迅速に取引を行うことができます。言い換えると、アルトコイン の取引をビットコイン(Bitcoin)もしくはイーサリウム(Ethereum)を中間コインとして使うことなく、直接スワップすることができます。


制限

アトミックスワップを行うにはいくつかの条件を満たす必要があり、これらはこの技術が広く採用されるための障害となるかもしれません。例えば、アトミックスワップを実行するには、2つの仮想通貨の基となるブロックチェーンは同じハッシュアルゴリズム(例 ビットコインの場合はSHA-256)でなければなりません。また、HTLCやその他のプログラミング可能な機能に対応している必要があります。

これ以外にも、アトミックスワップはユーザーのプライバシーに懸念を抱えています。なぜなら、オンチェーンスワップとトランザクションはブロックチェーンエクスプローラーを使えば、すぐに追跡することができ、アドレスと紐づけるのが簡単になります。短期的なこの問題に対する答えは、露出を減らすために、プライバシー機能のある仮想通貨を使うことです。それでも、多くの開発者は、より信頼性の高いソリューションとして、アトミックスワップでのデジタル署名の使用を実験しています。


なぜ重要か?

アトミックスワップには仮想通貨業界を発展させる素晴らしいポテンシャルがありますが、広い規模での利用に関してはまだテスト段階です。クロスチェーン取引は中央集権型取引所の抱える問題の大変を解決することができます。確かに、これらの取引所は仮想通貨システムを今日まで維持してきましたが、取引所に関するいくつかの問題点があります。 これらの問題の一部を以下に例として挙げました。

  • 大きくなる脆弱性 1つの場所に多くの貴重なリソースを保持することにより、脆弱性が高まり、ハッキングに対してより脆弱になります。そのため、中央集権型取引所はハッキングなどの主要な標的になっています。

  • 資産の不正管理と人為的なミス 中央集権型取引所は人間によって運営されています。重要な役割の人がミスを犯したり、取引所の運営に関してリーダーが残念な決断をしたりした場合は、ユーザーの資産が危険に晒されます。

  • より高くなる運営コスト 中央集権型取引所はより高い引出と取引手数料がかかります。

  • ボリューム需要に関する非効率性 市場の動きが激しくなりすぎると、中央集権型取引所は増加する取引需要に対処できず、システムの速度が低下したりオフラインになったりすることがよくあります。

  • 規制 大半の国では、仮想通貨の規制は理想からかけ離れています。政府の承認と管理に関する多くの問題点がいまだにあります。


まとめ

確かに、アトミックスワップはまだ新しく、制限もありますが、この技術はブロックチェーンの相互運用性とクロスチェーン取引の実現に関して、大きな変化を生み出そうとしています。そのため、この技術は、仮想通貨業界の成長に影響を与える可能性が高く、分散化とP2Pでの資金移転の観点において、新しい道を切り開きます。 特に分散型取引所で、アトミックスワップが近い将来ますます使用される可能性があります。